【10DANCE(テンダンス)】1話をあらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー

記念すべき第1話では、日本の社交ダンス(ソシアルダンス)界で頂点に立つ二人の「シンヤ」が出会うところから、物語が鮮烈に始まります。この出会いが、互いの運命を大きく揺さぶっていくことになります。

【10DANCE】第1話をネタバレありでわかりやすく解説する

全日本選手権、二人の「シンヤ」

物語の幕開けは、まばゆい光に包まれた「第33回 全日本プロフェッショナルダンス選手権」の表彰式です。 会場は熱気に満ち、大勢の観客が見守る中、数え切れないほどのカメラのフラッシュがたかれています。 この華やかな舞台で、二組のチャンピオンがアナウンスされます。

スタンダード部門、第1位は「杉木信也(すぎき しんや)・矢上房子(やがみ ふさこ)組」。 そして、アメリカン部門、第1位は「鈴木信也(すずき しんや)・田嶋アキ(たじま あき)組」と、高らかに呼び上げられます。

奇しくも同じ「シンヤ」という名前を持つ、二人の若き男性チャンピオン。 トロフィーを受け取る杉木信也は、その端正な顔立ちを一切崩さず、冷静沈着な表情を浮かべています。 一方、同じくチャンピオンとして輝かしいスポットライトを浴びる鈴木信也。彼は内心で(俺はもともとソシアルに興味があったわけじゃない) (ダンスで食えるならそれでいいと思ってる)と、どこかこの場の熱狂から一歩引いたような、冷めた心境でいました。 表彰式が終わるやいなや、鈴木信也は「ダンス・ライフ誌」や「まこころダンス」誌といった、多くのメディア関係者に瞬く間に囲まれてしまいます。チャンピオンとして、彼は慣れた様子で取材対応に追われていました。

2種類のダンスと「不動のチャンピオン」

ここで、読者のためにソシアルダンスの世界についての簡単な説明が入ります。 ソシアルダンスには、全く異なる2種類の主要なダンスカテゴリーが存在します。

一つは、杉木信也が専門とする『スタンダード』です。 日本語では「モダン」とも呼ばれ、ワルツ、タンゴ、ヴェニーズワルツ、スローフォックストロット、クイックステップという、流麗で優雅な5種目でその技術と表現力が競われます。

表彰式に続いて、優勝者によるデモンストレーション(模範演技)の時間が設けられます。 まずはスタンダード部門チャンピオン、杉木・矢上組によるワルツ「メリー・ウィドウ」が披露されます。 まるで重力を感じさせないかのように滑らかにフロアを舞う二人の姿は、まさに芸術品です。 しかし、その完璧な演技を、鈴木信也は(イラッ)としながら、明らかに不機嫌そうな表情で見つめていました。

杉木からの突然の「10ダンス」の誘い

鈴木信也の専門は、もう一方のカテゴリーである『ラテンアメリカン』です。 こちらはスタンダードとは対照的に、情熱的でリズミカルな動きが特徴です。チャチャチャ、サンバ、ルンバ、パソ・ドブレ、ジャイブという、エネルギッシュな5種目で競われます。 続いてのデモンストレーションでは、鈴木・田嶋組がラテンアメリカン部門のチャンピオンとして、官能的で情熱的なルンバを披露します。

原則として、この『スタンダード』のダンサーと『ラテン』のダンサーが、同じ競技会で技術を競い合うことはありません。 ただし、たった一つの『例外』的な競技種目を除いては、です。

すべてのデモンストレーションを終え、鈴木が控室に戻ると、パートナーの田嶋アキに衝撃的な事実を打ち明けます。 「さっきの優勝者デモのあと」 「杉木信也から 10ダンス 誘われた」 もちろん、鈴木は「断っといた」と、まるで興味がないかのようにそっけなく答えます。 それを聞いた田嶋アキは、目を輝かせて「ちょっ・・・・!!!」 「あの杉木信也が直々に教えてくれんでしょ!?」と、信じられないといった様子で大興奮。 しかし鈴木は、「お前 10ダンスなめてないか?」と、彼女の興奮を冷ややかにいなしました。

過酷な競技『10ダンス』

鈴木が「なめている」と指摘した『10ダンス』とは、その名の通り、スタンダードの5種目とラテンの5曲、合計10種類すべての種目を、たった1日で踊りきらなければならないという、非常に過酷な競技です。

普段、国内チャンピオンとしてシード権を持っている鈴木たちは、試合といっても「せいぜい1日15曲」程度の体力消費で済みます。 しかし、10ダンスの大会となると話は別です。予選から決勝まで進むためには、「1日に40曲踊る」とも言われる圧倒的な体力と、長時間にわたり高い集中力を維持し「何にも惑わされない精神力」が求められます。

まさに、スタンダードとラテンの両方を極めた真のダンサーたちだけが競い合う、ダンス界のワールドカップ。 これが、先ほど触れられた「ある例外」の正体でした。

10ダンスの過酷さを理解してなお、田嶋アキの興奮は収まりません。 彼女は杉木のパートナーである矢上房子に強い憧れを抱いており、「矢上房子になりた――い!!!」と叫び出します。 鈴木は「お前自分で「あんな姫キャラ無理」っつってたじゃん」と呆れたように返しますが、田嶋アキは「練習でいいから杉木信也に優しくリードされてみたいいいい」と、夢見心地な様子で聞きません。

二人の「シンヤ」の因縁とプライド

ここで、杉木信也という人物について改めて紹介されます。 彼は「至高のダンサー」、「不動のチャンピオン」など数々の異名を持ち、3年前にダンスの本場である英国から鳴り物入りで帰国した、日本のダンス界における「大物」です。

そんな輝かしい経歴を持つ杉木に対し、鈴木は「俺はコイツが大嫌いだ」と、露骨なまでに強烈な嫌悪感を抱いていました。 それは(視界に入るたび わけもわからず 腹が立つ)というほど、理屈抜きの生理的な拒否感に近い感情です。

会場の外で、二人の「シンヤ」が再び顔を合わせます。 鈴木は杉木に対し、唐突に「毎年 アンタが2位な理由知ってるよ」 「世界選手権は 八百長」と口にします。 これは単なる挑発ではなく、世界選手権の1位の選手には八百長疑惑があり、実力で言えば杉木こそが真の世界チャンピオンにふさわしい、と鈴木が考えていることを遠回しに伝えた言葉でした。鈴木なりに、杉木の実力を認めているが故の発言だったのです。

しかし杉木は、その言葉に動じることなく「僕は一度も世界チャンピオンだったことはありませんよ」と冷静にかわします。 そして、「今その話は結構です」と鈴木の言葉を遮り、すぐに本題に入りました。 「それより 先ほどの 10ダンスのお返事 考え直してもらえませんか?」

「1年であなたを10ダンサーに」

杉木は、世界大会への出場権を手にしながらも、それを何度も放棄してきた鈴木の国内に留まる姿勢を「小物のあなたはサル山を死守ですか?」と痛烈に批判します。 国内チャンピオンという地位に安住している、と指摘された鈴木は激しく反論します。 「世界に出たからってファイナルまで残んなきゃ稼げねーし意味ねぇだろ!!!!」

その言葉を聞いた杉木は、まったく予想外の提案を口にしました。 「僕なら1年で あなたを 10ダンサーに してみせますけど」 そして、そのための驚くべき条件を提示します。 それは、「(杉木が)スタンダード5種を教えるかわり 鈴木先生が 僕にラテン5種を教える」という、チャンピオン同士による技術の交換レッスンでした。

この常識外れの提案に対し、今度は鈴木が挑発的に返します。 「あなたに 1年でラテンは 無理でしょうね」 ラテンのスペシャリストである鈴木から見れば、スタンダードが専門の杉木が1年でラテンを習得するなど不可能だ、というわけです。

すると杉木は、その挑発を真正面から受け止め、すかさず切り返しました。 「最初から そんな及び腰 ですか」 「どうやら僕の 見込み違いだった ようですね」 そして、決定的な一言を放ちます。 「センスと体格だけは ほぼパーフェクト だったのに」 この言葉が、鈴木のプライドに火をつけました。

売り言葉に買い言葉、レッスンの開始

「『だけ』って何だよ」 「ケンカ売ってんのか」 杉木の挑発に、鈴木は完全に激昂します。 しかし、その怒りとともに、鈴木の頭の中では(もしコイツを 負かせるとしたら?) (もし同じ土俵で戦えるとしたら)という、杉木という絶対的な存在を打ち負かす唯一のシナリオが浮かび上がっていました。 杉木の提案は、無謀であると同時に、唯一の可能性を秘めていたのです。

鈴木は、感情を爆発させるように叫びました。 「そんなに言うならやってやる!!!!」 「本気出されて後悔すんな・・」 その言葉を待っていたかのように、杉木は「望むところです」と、不敵な笑みを浮かべて応じます。 「僕があなたをファイナルまで引っぱりますよ」

3年前の出会いと強烈な感情

ここで、鈴木の回想シーンが挿入されます。 鈴木が初めて杉木信也というダンサーを認識したのは、今から3年前、モニター越しに見た海外の試合映像でした。 当時、鈴木の父親が杉木のパートナーである矢上房子を「可愛いだろ?」 「お人形ちゃんみたいで」と評する横で、鈴木自身も(ほんと・・・・人形みたい・・・・) と感じていました。 しかし、それ以上に彼の目を釘付けにしたのは、その「お人形」を完璧に支配し、踊らせているリーダー、杉木信也の姿でした。 (すべてを支配しているような杉木に目が引き寄せられ)たのです。

その時から、鈴木は杉木に対して強烈な感情を抱いていました。 (気に入らねぇ) (コイツが取り乱してぐちゃぐちゃに泣いてるとこを見てみたい) それは、憧れでも嫉妬でもない、もっと複雑で歪んだ執着に近い感情でした。 奇しくも、杉木は鈴木の父親が(仕事上の付き合いか何かで)嫌っている「杉木」という人物の一人息子であるという因縁も、この時に明らかになっていました。

似て非なる二人

二人の「シンヤ」は、実に対照的な経歴を持っています。 杉木は、5歳の頃からダンスのエリート教育を受けるためにイギリスへ留学していました。 一方の鈴木は、「生まれがキューバ」であり、「ラティーノ」(ラテン民族)の血を引いていることが、杉木が入手した身上調査報告書によって示唆されます。

育ちも専門も、まさに正反対。 しかし杉木は、その調査報告書を見て(体格と 名前だけ似た 逆の人間が いるみたいだ)と、自分とは対極の存在である鈴木信也に対し、むしろ喜びのような感情をあらわにしていました。 杉木もまた鈴木の存在を強く意識していたのです。

深夜の秘密レッスン

こうして、二人のチャンピオンによる秘密のレッスンが始まることになりますが、そこには大きな障害がありました。 杉木が運営する教室の生徒と、鈴木が所属する教室の生徒は、それぞれの「大先生」の代から続く、非常に根深い「犬猿の仲」だったのです。

ダンス界での知名度や影響力では杉木側が上のようで、鈴木の教室には時折「杉木ダンススクールですか?」という、嫌がらせのような間違い電話がかかってくるほどでした。 スタッフが「『鈴木ダンススクールです』って言ったらガチャ切りですよ!!!」と憤慨するほど、両者の関係は険悪だったのです。

このような状況で、二人が昼間に堂々とレッスンをできるはずもありません。 そこで杉木が提案したレッスンの時間は、彼の教室が完全に無人になる「23時(夜11時)からスタート」というものでした。

レッスン初日。 鈴木と田嶋アキは、スタジオへ向かう道中で先ほどの「ガチャ切り」の件や、これからのレッスンに対する不安などで口論になり、結果として「30分の遅刻」という大失態を犯してしまいます。 スタジオに駆け込むと、そこには杉木と、彼のパートナーである矢上房子が静かに待っていました。

いがみ合いながら入ってきた二人の「シンヤ」を見て、「アレうまくいくんだろうか・・・・・・」と田嶋アキは不安そうな表情を隠せません。 その様子を察した矢上房子は、田嶋アキを安心させるように、そっと耳打ちをしました。 「ラテンを習うなら鈴木先生じゃないとって 杉木先生 ずっとダダをこねてたんですから」 このレッスンは、杉木側も強く望んでいたことなのだと、彼女は伝えたかったのです。

緊迫のホールドチェックと予期せぬ密着

遅刻のいざこざも束の間、杉木は「今の内にホールドのチェックをしましょうか?」と、早速レッスンを開始します。 お互いに、専門外のスタンダードとラテンについても、プロの資格は一応持っていることを確認し合います。 まずは鈴木の専門であるラテンのホールドからチェックすることになりました。

二人が向き合い、手を組み、体を寄せた、その瞬間。 「近……っ」 鈴木は、スタンダードではあり得ないラテンのホールドの距離の近さに、思わず激しく動揺します。 (男の生徒とも普通に組むけど同じ身長の奴とかいねーし・・・・こりゃないわ) (でお前は何でそんなに何ともないんだよ) 鈴木の内心はパニック状態でしたが、ラテンの専門家としてのプライドもあり、ホールド自体は(思ったよりマトモ)にこなすことができました。

問題は、次でした。 「やっぱ スタンダードから!!!!」 と鈴木が慌てて仕切り直そうとすると、杉木は「いいですよ じゃあ 今度は 僕が女役」 と、あっさりと申し出ます。 今度は、杉木が女性役となり、鈴木が男性役(リーダー)としてスタンダードのホールドを組むことになったのです。

「・・杉木センセ 身長いくつ?」 「186~187」 「接触位置は 右バスト?」 「その通りだけど あの・・・・」 ぎこちないやり取りの後、杉木が冷静に指示を出します。 「腹から膝!!! コンタクトの意識を下げて!」 スタンダードでは、男女のボディ(腹部から膝)を密着させることが基本です。 鈴木が言われた通りに体勢を整えると、「ビタッ」という生々しい音と共に、二人の下半身が隙間なくぴったりと密着しました。

(これで本当に合ってんのか?) (いやここで2人で固まってる場合か?) 鈴木が激しく混乱する中、杉木は「接触位置は 腹から膝」と、淡々と事実を確認します。 混乱のあまり、鈴木は「チ◯コも コンタクト しちゃいましたねぇ」 と、とんでもないことを口走ってしまいます。 咄嗟に倒れ込むと、杉木は「何と返せば?」 と本気で困惑。 その「ビタッ」という衝撃的な音は「何かすごい音」として、離れて見ていたパートナー二人(田嶋アキと矢上房子)にまで聞こえていました。 「大丈夫?」と心配するパートナーたちをよそに、二人の「シンヤ」は完全に固まってしまいます。

【10DANCE】1話を読んだ感想(ネタバレあり)

第1話から、まさに「圧巻」の一言に尽きます。 まず、息をのむような絵の美しさが、社交ダンスという華やかな世界の魅力を余すところなく伝えてくれます。 そして何より、二人の主人公、杉木信也と鈴木信也の対比が鮮烈で、物語に一気に引き込まれました。 「不動のチャンピオン」と呼ばれる冷静沈着、まさに「静」の杉木。対して、才能に溢れながらもどこか野性的で荒削りな「動」の鈴木。 この正反対の二人が、「10ダンス」という一つの過酷な目標に向かって(最初は非常に不本意ながらも)手を組むことになる導入は、王道のライバルものとして期待が最高潮に高まります。

特に印象に残ったのは、鈴木が杉木に対して抱いている、一言では言い表せない強烈な感情です。 「気に入らねぇ」 「ぐちゃぐちゃに泣いてるとこを見てみたい」 という言葉からは、単なるライバル心や嫌悪感を超えた、非常に倒錯した「執着」のようなものが感じられます。 この強烈な感情が、二人の関係性をどう変えていくのか、非常に興味深いです。

そして、物語の最後を締めくくった緊迫のホールドシーン。 それまでのピリピリとした緊張感あふれるやり取りが一転、予期せぬ「密着」と、鈴木の口から飛び出した「チ◯コも コンタクト」という衝撃的なセリフによって、シリアスな空気が一変しました。 この場面は、この物語が単なるストイックなスポーツ・ライバルものではなく、二人の人間の複雑な感情や関係性を深く描いていくことを、強く予感させる素晴らしい締めくくりだったと感じます。 これからこの二人が、レッスンを通じてどのような化学反応を起こしていくのか、目が離せないスタートです。

【10DANCE】1話のネタバレまとめ

  • 全日本選手権で、スタンダード部門の杉木信也とアメリカン(ラテン)部門の鈴木信也が、それぞれ優勝を果たしました。
  • ソシアルダンスには「スタンダード」と「ラテン」の2種類があり、通常ダンサーが両方を競うことはありません。
  • 杉木は鈴木に、両方の種目を競う『10ダンス』のパートナーとして組むことを持ちかけます。
  • 杉木は「1年であなたを10ダンサーにする」代わりに、「僕にラテン5種を教えてほしい」と、お互いの専門技術を教え合う交換条件を提示しました。
  • 杉木の挑発に乗る形で、鈴木は「10ダンス」への挑戦を受け入れ、二人の秘密の深夜レッスンが始まります。
  • レッスン初日、スタンダードのホールド練習で二人は予期せぬほど(下半身まで)密着してしまい、鈴木が激しく動揺するところで第1話は終わります。
ABOUT ME
コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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