【問題な王子様】36話ネタバレ完全版

【問題な王子様】36話をネタバレありで解説する
ビョルン王子の馬車に乗せられたエルナ。彼女の意識は朦朧とし、心身ともに限界の状態でした。第36話では、そんなエルナをビョルンが自身の隠れ家へと運び、そこで彼女の過酷な状況を目の当たりにすることで、彼の心にかすかな変化が訪れる様子が描かれます。
馬車の中のエルナとビョルンの葛藤
ビョルン王子の馬車は、嵐の夜のシュベリンを静かに走り抜けます。エルナは、疲労と絶望感からか、ほとんど言葉を発することもできず、ただぐったりと座席に身を任せていました。「誰を待っているかは分からないけれど、その人は来ない。あなたを捨てたのだ」というビョルンの冷たい言葉が、彼女の心に重くのしかかっていたのかもしれません。
ビョルンは、そんなエルナの様子を横目で見ていましたが、特に言葉をかけることはありませんでした。しかし、彼女が頑なに身に着けている、水が滴る帽子とマントを今すぐにでも取り払いたいという衝動に駆られます。しかし、「そんなことをすれば、むしろあの女性をさらに苦しめることになりそうだ」と考え直し、ひとまずはそのままにしておくことにします。彼の心の中には、エルナに対する苛立ちと、それとは異なる何か名状しがたい感情が芽生え始めていました。
予期せぬ避難場所、ビョルンのタウンハウス
馬車が到着したのは、ハルディ子爵家ではありませんでした。ビョルンはエルナを、金融街に近い住宅街にある、彼が個人的に所有するタウンハウスへと連れて行ったのです。このタウンハウスは、以前、投資詐欺に遭った実業家からビョルンが安値で買い取ったもので、彼の私的な空間の一つでした。なぜ彼がエルナをここに連れてきたのか、その真意はまだ明らかではありません。彼自身も、衝動的な行動の理由を完全には理解できていなかったのかもしれません。
タウンハウスに運び込まれたエルナは、緊張の糸が切れたのか、あるいは高熱のためか、意識を失ってしまいます。ビョルンは、そんな彼女をベッドに寝かせ、その痛々しい姿を目の当たりにします。エルナの顔には、新しいものから古いものまで、父親から受けたであろう暴力の痕跡である痣や傷がはっきりと残っていたのです。
エルナの傷跡とビョルンの気づき
エルナの顔に残る痛々しい傷跡を見た瞬間、ビョルンは彼女が置かれていた過酷な状況を悟ります。「自分の命綱が付いているような商品に傷をつけるなんて、ウォルター・ハルディは父親としても商売人としてもひどい男だった」――ビョルンの胸には、ウォルターに対する静かな怒りが込み上げてきました。そして同時に、これまでエルナを単なる「面白い観察対象」あるいは「利用価値のある駒」としか見ていなかった自分自身に対する、何とも言えない複雑な感情も芽生え始めていたのです。
「完璧な取引をした仲だと思っていたのに、思わぬ借金を背負うことになってしまった」とビョルンは心の中で呟きます。この「借金」とは、単に金銭的なものではなく、エルナという存在に対して、彼が予期せず抱え込むことになった感情的な負債、あるいは責任感のようなものだったのかもしれません。彼女の純粋さ、健気さ、そして何よりも彼女が受けてきた理不尽な虐待を知ったことで、ビョルンの中でエルナへの認識が、そして彼自身の何かが、確実に変わり始めていました。
ビョルンは、熱にうなされるエルナのそばを離れず、甲斐甲斐しく看病を続けます。濡れた服を新しいものに着替えさせ(その際、エルナが身に着けていた粗末な下着に一瞬眉をひそめつつも)、冷たいタオルで額の汗を拭い、彼女が落ち着いて眠れるように静かに見守るのでした。エルナの寝顔を見つめる彼の瞳には、これまでの冷ややかな光とは異なる、戸惑いや同情、そしてほんのわずかな温かさが宿り始めていたのかもしれません。
第36話は、ビョルンがエルナを自身のタウンハウスに保護し、彼女の悲惨な状況を目の当たりにすることで、彼の心に大きな変化が訪れるきざしを見せて終わります。この「差し伸べられた傘」は、エルナにとって真の救いとなるのでしょうか。そして、この出来事が、二人の関係、さらにはエルナの行方を捜すパーベルやバーデン男爵夫人の行動に、どのような影響を与えていくのか。物語は、新たな局面へと大きく動き出します。
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