【枯れた花に涙を】31話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー

【枯れた花に涙を】第31話をネタバレありで解説する

第30話のラスト、雪の降る夜道で樹里が蓮の唇を奪うという衝撃的な展開で幕を閉じました。第31話は、その直後から始まり、二人の関係が後戻りできない領域へと踏み込んでいく様子を、息を呑むほど美しく、そして切なく描きます。衝動的な行動から始まった一夜が、蓮の中に隠されていた本当の気持ちを炙り出していく、見逃せない回です。

雪の夜、火花を散らす唇

樹里からの一瞬のキス。それは、この夜の出来事の序章に過ぎませんでした。アルコールと感情に突き動かされた彼女の行動は、蓮の心の奥にしまい込まれていた激情の引き金となります。

「なめないでよ」―樹里の逆襲

一度は離れた唇。しかし、樹里は挑むような瞳で蓮を見つめます。「

ほら…できるって言ったでしょ…」と、まるで自分の力を誇示するかのように囁きました 。これは、年下だからと余裕を見せていた蓮に対する、彼女なりの反撃です。さらに「私のこと…なめないでよ…」という言葉は、これまで受け身だった彼女が、初めて見せた強い自己主張でした 。

「それは俺のほうだ」―蓮の崩れた仮面

樹里の大胆な行動に対し、蓮は一瞬驚きを見せますが、すぐに主導権を奪い返します。今度は彼の方から、より深く、激しいキスを仕掛けました 。それは、もはや酔った勢いの戯れではありません。息もできなくなるほどの口づけに、樹里は「あなたのせいで…頭の中が…ぐちゃぐちゃよ」と訴えます 。

その言葉を受け、蓮は静かに、しかし確かな熱量をもってこう返すのです。

「それは俺のほうだ」

彼の整然とした計画も、計算も、樹里の前ではかき乱されてしまう。この一言は、彼女の存在が彼にとっていかに特別で、心を揺さぶるものであるかを何よりも雄弁に物語っていました。

超えた一線、そして紳士的な抑制

衝動と感情がぶつかり合った後、樹里は糸が切れたように意識を失ってしまいます。蓮はそんな彼女を抱きかかえ、高級ホテルの一室へと向かいました

眠る樹里と、見つめる蓮

ホテルの従業員たちは、 蓮が女性を抱きかかえて入ってくる姿を見て、彼の悪名高い兄・一ノ瀬家の長男と重ね合わせ、噂話をします 。彼らには、蓮もまた遊び人のろくでなしに見えたことでしょう 。しかし、部屋の中での彼の行動は、そんな下世話な憶測とは全く異なるものでした。

「我慢しなくちゃ」―蓮の心の声

蓮は、眠る樹里を乱暴に扱うことなく、そっとベッドへと運びます 。そして、ただ静かに彼女の寝顔を見つめるのでした。その胸の内では、激しい葛藤が渦巻いていました。

我慢しなくちゃ

じっと待つんだ あなたがもっと安心できるまで

彼の心の声は、樹里を傷つけたくない、彼女が心から安心できるその時まで手を出してはいけない、という強い意志の表れです。この抑制的な態度は、彼が樹里に対して抱いている感情が、単なる興味や復讐の道具としての価値以上のものであることを示唆しています。

偽りのない優しさ

彼は、自分の気持ちが溢れ出してしまわないように、必死に自らを律していました 。そして、眠る樹里の髪を優しく撫で、小さな声でこう囁きます。

大丈夫だよ」 「おやすみ

復讐に燃える冷徹な青年ではなく、ただひたすらに愛しい人を見守る一人の男として、彼はそこにいました。この夜、彼は樹里の一線を越えさせましたが、自分自身の欲望には固く一線を引いたのです。

まとめ【枯れた花に涙を】31話を読んだ感想

第31話は、全編を通して息をすることさえ忘れてしまうほど、濃密で官能的な回でした。樹里の「なめないでよ」というセリフから始まった逆襲のキス、そしてそれに応える蓮の激情。二人の感情が火花を散らす様は、美しくも痛々しくて、目が離せませんでした。

しかし、この回の真骨頂は、ホテルに入ってからの蓮の行動にあります。従業員からは兄と同じ遊び人だと思われている彼が 、眠ってしまった樹里に対して見せたのは、驚くほどの抑制と優しさでした。「我慢しなくちゃ」「あなたがもっと安心できるまで待つ」という彼のモノローグには、胸を鷲掴みにされました。彼の樹里への想いが、一時の情欲や復讐の道具といった次元を遥かに超えた、本物なのだと確信させられた瞬間です。

これまで彼の行動には、どこか本心が見えない危うさが付きまとっていましたが、この回で初めて、彼の純粋な部分に触れられた気がします。もちろん、彼が抱える闇や復讐心が消えたわけではありません。だからこそ、この純粋な想いが、今後の物語で彼自身を苦しめることになるのではないかと、新たな不安も生まれました。

衝動的に始まった一夜は、二人の関係を全く新しいステージへと引き上げました。この夜が明けた時、彼らはどんな顔をして向き合うのでしょうか。予測不能な展開に、期待は最高潮に達しています。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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