【関係の終末】44話(最終回)あらすじから結末まで全てネタバレ解説

【関係の終末】最終回(44話)をネタバレありで解説する
前話、マサルは死ぬことすら許されず、「悪魔」たちに連れ去られるという、絶望的な結末を迎えました。物語の最後を飾る本話では、その後の「悪魔」たちと、マサルがたどった、あまりにも悲惨な運命の終着点が描かれます。
証拠隠滅、そして新たな「狩り」の始まり
惨劇から5日後、大家たちはガソリンを撒き、すべての証拠を葬り去るために民宿を焼き払います 。彼らは、マルが用意した下宿を新たな拠点とし、そこへ訪れた何も知らない新しい家族を、次の獲物として迎え入れるのでした 。
数ヶ月後、テレビのニュースでは、焼失した民宿の付近で遺体が発見されたこと、そして行方不明の民宿のオーナーが容疑者として捜査されていることが報じられます 。彼らの犯罪は完全に迷宮入りし、悪夢は場所を変えて、何も変わらずに続いていたのです。
飼い慣らされた「鬼」、マサルの処遇
季節は流れ、翌年の冬 。「悪魔」たちは、新たな下宿で相変わらずの「狩り」を楽しんでいました。そして、彼らのそばには、生かされていたマサルの姿がありました。大家は、いつかマサルが正気に戻って反撃してくることを心配しますが 、マルは「人さえ殺させといたらおとなしくしてますよ」と、マサルがもはや完全に飼い慣らされた存在であることを報告します 。
しかし、そんなマサルも、彼らにとっては飽きた玩具に過ぎませんでした。ハシラは、マサルを「もういらない」と判断し、その日の夜にマルが「片付ける」ことを決定します 。
「完全に克服した」、あまりにも皮肉な独白
場面は、一人の青年が、古びた下宿の一室に荷物を運び込むシーンへと移ります 。彼は、ここの住人たちを「変わり者が多い」と感じながらも 、狭い部屋で新生活を始めようとしていました 。
その青年こそ、マサルでした。しかし、彼の表情からは、かつての苦悩も、憎しみも、悲しみも、全てが抜け落ちています。彼は、もうあの悪夢を見なくなり、何の感情も湧かないと言います 。そして、物語は彼の、あまりにも皮肉な独白で締めくくられます。
「あの時の俺は地獄の中で生きていた でももう過ぎたことだ」
「俺は完全に克服した」
まとめ【関係の終末】最終回(44話)を読んだ感想
これほどまでに、心が空っぽになるような、虚無感に満ちた最終回があったでしょうか。物語は、最後の最後で、読者に最大級の絶望を突きつけました。
「悪魔」たちが誰一人として罰せられることなく、のうのうと次の殺戮を楽しんでいる様は、この世界の理不尽さを象徴しています。しかし、本当の恐怖は、マサルの迎えた結末です。彼は殺されるよりも残酷な、「飼育」という罰を受け、生きる意味も、人間としての感情も、全てを奪われてしまいました。
そして、最も恐ろしいのが、彼がそれを「克服した」と認識していることです。彼は、トラウマを乗り越えたのではありません。トラウマによって人格の全てを破壊され、感情を失くすことでしか、その地獄から逃れることができなかったのです。彼が失くした「関係」とは、いじめっ子たちとの関係だけでなく、愛するユイとの関係、そして、人間であった過去の自分自身との関係、その全てだったのかもしれません。
魂の救済ではなく、魂の完全な消滅。これこそが、作者が描いた「関係の終末」の、あまりにも悲しく、そして美しいまでに絶望的な答えでした。読後、物語は終わったはずなのに、自分の心の中に、マサルという名の空虚な地獄が生まれ、永遠に残り続けるような、そんな感覚に襲われる、まさしく傑作です。
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