【みんな、ボドになった。】9話をあらすじから結末まで簡単にネタバレ解説!

【みんな、ボドになった。】第9話をネタバレありでわかりやすく解説する
絶望の淵で包丁を握りしめた沙織。そんな彼女の元に現れたのは、息を切らした同級生・百一(もいち)でした。彼の来訪は、固く閉ざされた沙織の心に、わずかな光を差し込むことになります。
百一が駆け付けた理由
気が紛れるかなって
百一が息を切らして沙織の家まで走ってきたのは、彼女の家の惨状を知り、その身を案じていたからでした 。学校で気まずい別れ方をしたことも気にかかっており、「あのまま家に閉じこもってるよりマシかと思って」と、彼は沙織を外へと連れ出そうとします 。祭りが始まる前に、話しておきたいことがあったのです 。
「行っておいで」母の想い
沙織の母親は、百一が村の有力な寺の息子であることから彼を信頼し、「百一君がついててくれれば安心だもの」と、二人の外出を笑顔で送り出します 。その笑顔は、娘の身を案じる母親の顔でした。
村の格差を見せつける「下東家イリュージョン」
手のひらを返す村人
百一は、落ち込む沙織に「面白いモノ見せるから」と言って、彼女の手を強く引きます 。そして彼が披露したのは、この村の歪んだ構造を逆手に取った「下東家イリュージョン」でした 。
二人が向かった先で出会ったのは、かつて沙織を見下し、「外れの子供がいい身分だね」と嫌味を言っていた元商店主の老婆でした 。老婆は沙織の姿を認め、また何か言おうとしますが、その隣にいるのが村の有力な家系である「下東家の…お寺の…」息子、百一だと気づいた瞬間、その表情を一変させます 。
「んまぁすっかり綺麗になって!」
さっきまでの侮蔑的な態度は消え去り、老婆は手のひらを返したように沙織を褒めそやします 。百一は「マジック大成功♪」と笑い、嫌な相手に一泡吹かせられたことを喜ぶのでした 。
「生まれ次第」の残酷な現実
しかし、この一件は、沙織に村の残酷な真実を改めて突きつけることにもなりました。「この村では すべては生まれ次第だ」 。雲の上の存在か、底辺か。そのどちらに属するかで、人々の態度はこうも変わるのです。
「変えればいい」―百一の決意と優しさ
諦観する沙織、抗おうとする百一
村の「一番下」という自分たちの立場を「仕方ないよ」と諦める沙織に対し、百一は力強く、そして静かに言い放ちます 。
「変えればいい」
彼の言葉には、この不条理な村の構造に屈しない、強い意志が込められていました。
懐かしのクレープと唯一の良心
そんな百一が「大事な用」だと沙織を連れてきたのは、子供の頃によく通ったクレープ屋「CHICHIYA」でした 。店の主人は無愛想ですが、村の最下層である沙織や妹の実里に対しても、分け隔てなく普通に接してくれた、数少ない温かい思い出の場所だったのです 。
まとめ【みんな、ボドになった。】第9話を読んだ感想(ネタバレあり)
これまでの息苦しい展開の中で、百一というキャラクターの存在が大きな救いとなった回でした。絶望の淵にいた沙織を力強く連れ出す彼の姿は、まるで暗闇に差し込んだ一筋の光のよう。彼がただのお調子者ではなく、村の歪んだ構造を理解し、それに抗おうとする強い意志を持った人物であることが分かり、非常に頼もしく感じました。
特に印象的だったのが「下東家イリュージョン」です。村の醜い身分制度を逆手に取ったこの「マジック」は、コミカルでありながら、その根底にある問題を痛烈に皮肉っており、秀逸なシナリオだと感じました。手のひらを返す老婆の姿は、人間の滑稽さと恐ろしさを見事に表現しています。
そして、そんな百一が発した「変えればいい」という短いセリフ。これは、この物語の核心を突く、非常に重い言葉だと思います。生まれや家柄という、自分ではどうにもならない不条理に「仕方ない」と諦めていた沙織に対し、彼は「変えられる」と希望を示しました。これは、絶望的な状況に立ち向かう若者たちの、反撃の狼煙(のろし)なのかもしれません。
最後に訪れたクレープ屋の存在も、心を温かくしてくれました。村の全てが敵というわけではなく、沙織たちを色眼鏡で見ない良心も確かに存在したのです。百一が沙織に見せたかった「面白いモノ」とは、意地悪な老婆への仕返しだけでなく、こうした温かい思い出の場所でもあったのかもしれません。百一が具体的に何を「変えよう」としているのか、彼の行動から目が離せません。
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