【人間関係アディクション】63話をあらすじから結末まで簡単にネタバレ解説!

【人間関係アディクション】第63話をネタバレありで簡単に解説する
前回の第62話では、ホヨンとドンフンの関係を象徴する狼の寓話が語られ、二人の間に生まれた深い亀裂が示唆されました。第63話では、物語の視点が再び過去へと移り、ホヨンがいかにして現在の「完璧な学級委員」という仮面を被るに至ったのか、その恐るべき変貌の過程が描かれます。そして、偽りの正義の裏で犠牲になる、弱者の悲痛な叫びが響き渡る回です。
教師たちの視点:「問題児クラス」と学級委員ホヨン
物語は、教師たちの会話を通して、ホヨンたちが属するクラスの異常な実態を浮き彫りにすることから始まります。
隔離クラスの現実と教師の期待
舞台は職員室、あるいは教材準備室。ホヨンたちのクラスの担任であるキム先生が、同僚のチョン先生と話をしています 。チョン先生は「生徒のことで大変でしょう・・・」と、キム先生の苦労を労いました 。
キム先生は、このクラスが意図的に問題児ばかりを集めた、いわば「隔離クラス」であることを認めます 。そして、「たぶんキム先生が数少ない男の先生だからああいう子たちをうまく抑えてくれということなんでしょう…」と、学校側が自分に腕力による生徒の制圧を期待しているのだと、半ば諦めたように語るのでした 。
ピアプレッシャーという切り札
チョン先生が、それでも最近はクラスの雰囲気が良く、表向きは静かになったと感心すると、キム先生は「彼らは大人たちをハナからバカにしていますからね」と、生徒たちが大人の言うことを聞くフリをしているだけだと断言します 。
しかし、彼は続けて、この状況を打開するための、ある一つの真理を口にしました。
「子供たちは大人の言うことは聞きませんが、同年代の生徒が言うことならよく聞くんです」
大人による指導ではなく、生徒同士の力関係、つまりピアプレッシャーを利用することこそが、このクラスを統制する唯一の方法だと彼は考えていたのです。
「不良」から「学級委員」への抜擢
そのキム先生の戦略の切り札こそが、他ならぬホヨンでした。彼は「うちのクラスの学級委員です」と、ホヨンを紹介します 。「でも彼は確か…不良グループにやんわり属していた生徒です」と、その人選に驚きを隠せません 。
キム先生は、その事実を認めつつも、「何があったのかは私にもわかりませんが、きっと精神的に少し大人になったんでしょう」と、ホヨンの変化を肯定的に捉えています 。そして、彼を学級委員に任命して以来、クラスの雰囲気が劇的に変わったと、その効果を満足げに語るのでした 。
寓話の始まり:狼の選択
しかし、教師たちのこの会話は、物語の残酷な真実を際立たせるための、巧みな前振りに過ぎませんでした。教師たちが「精神的に大人になった」と解釈したホヨンの変化。その直後、物語は彼の内面を象徴する寓話へと移り、その変貌が、成長などではなく、冷徹な計算に基づいた「選択」であったことを明らかにするのです。
「狼は選んだ」
この一節から、彼の恐るべき自己改造の物語が始まります
仮面の創造:ホヨンが「正義の王」になるまで
ホヨンという一匹の孤高の「狼」が、いかにして群れを支配するようになったのかを、寓話の形で語ります。それは、彼の計算された変貌の記録でもありました。
嫌悪感を殺す「実験」の始まり
物語の冒頭で語られたように、ホヨンは自分の基準に満たない他者を「虫けら」と見下し、強い嫌悪感を抱いていました。しかし、彼はある時から一つの「実験」を始めます。それは、「最初には嫌悪感を顔に出さないことから始めた」という、意識的な選択でした 。
彼は、これまでなら避けていたであろう、他の生徒との接触を我慢するようになります。「虫けらども」に触られてもぐっと耐え、話しかけられても、心の中では「話したいとは思わなかったがそれもガマンして会話をした」のです 。廊下で生徒に音楽の教科書について尋ねられた際、彼が「…使わないよ」と短く答えたのは、まさにその実験の第一歩でした 。この実験の目的はただ一つ、「虫けらどもとつきあうことで何が得られるのか…」 、その必要性を知ることでした。
「力」と「正義」の獲得
ホヨンの実験は、ある出来事をきっかけに次の段階へと進みます。彼は、ヒョンジュンという生徒が別の生徒をいじめている場面に遭遇し、その暴力を「それぐらいにしとけ」の一言で制止しました 。
この行動は、彼に決定的な変化をもたらします。元々、周囲から恐れられていた圧倒的な「力」に加え、弱者を助けるという「正義」のイメージ。この二つを併せ持つ存在として、彼はクラスの大多数から支持されるようになったのです 。
支配の完成と「仮面」
「力」と「正義」を手に入れたホヨンは、次に「微笑みと親切さそして共感という仮面」を被ります 。その結果は絶大でした。彼はもはや牙をむく必要がありません。生徒たちは自ら進んで彼の機嫌をうかがい、好意を示し、その能力を賞賛するようになったのです 。
この状況に、ホヨンは「喜びを感じた」とされています 。彼は、他人の好感を得ることで、彼らを意のままに利用する方法を知ったのです 。もちろん、彼の心の中で彼らが「相変わらず虫けらに違いなかった」としても 、その忠誠心と好意は、彼の自尊心を満たすには十分でした 。こうしてホヨンは、ついに「虫けらたちとつきあうことの必要性に気付いた」のでした 。
仮面の下の不協和音:教室の支配と狂気
遠ざかるホヨン、焦るドンフン一派
場面は現代の教室。すっかり学級委員として振る舞うホヨンを、スギョンとランは複雑な表情で眺めていました。スギョンは、彼が「完全にあっちの世界に行っちゃったわね…」と、自分たちとは違う世界の人間になってしまったことを嘆きます 。
ドンフンの仲間は、ランにホヨンとの仲介を頼みます。しかし、ランは「ずっと時間がないって断られてる」と、ホヨンが意図的に彼らを避けていることを明かしました 。彼女は、ドンフンから対価として受け取った「タバコが二箱かかってんだからベストは尽くしてるよ」としながらも、ホヨンが彼らの思惑に気づいて席まで移動したことから、「もう諦めな」とさじを投げてしまいます 。親友であったはずのホヨンに完全に拒絶され、ドンフンの一派は焦りを募らせていました。
匿名の反逆と揺らぐ秩序
ある日の自習の最中のこと。ドンフン一派が教室で騒ぎ立てる中、学級委員としてホヨンが「ちょっと静かにしろ」と注意をします 。しかし、彼らは「ヤなこった」と、その権威をあざ笑うかのように拒絶しました 。ホヨンの「正義の仮面」が、旧来の暴力的な秩序の前では無力であることを示すかのような光景です。
しかし、その時、教室の空気を一変させる出来事が起こります。誰かが匿名の声で
「おい 学級委員の言うことを聞けよ!」
と、ホヨンを擁護したのです 。この予期せぬ反逆に、ドンフンの仲間たちは「今言ったのは誰だ?」と色めき立ち、声の主を探し始めました 。ホヨンが築き始めた新しい秩序が、確かに一部の生徒に影響を与え、古い支配体制に亀裂を生み出した瞬間でした。
最も弱い者への矛先
犯人を見つけられず苛立つ仲間たち。その混沌とした状況を収拾するため、ついにドンフン自らが動きます。彼は、反逆者を探すのではなく、クラスで最も気弱な生徒、ギョンムンの前に静かに立ちました 。ギョンムンは、自分が何も言っていないと恐怖に震えます 。
ドンフンは、彼が無実であることを承知の上で、この物語で最も残酷なセリフの一つを口にします。
「お前じゃねぇのは俺も知ってるよ」 「だけどお前が一番使いやすいんだ わかってくれよな」
これは、彼の行動が、犯人を罰するためではなく、クラス全体を恐怖で支配するための、計算され尽くした「見せしめ」であることを示しています。彼は、反撃するすべを持たない、最も弱い者を標的にすることで、効率的に恐怖を伝播させようとしたのです。
狂気の公開処刑
そして、ドンフンは無実のギョンムンの頭を机に叩きつけ、歯を折り、クラス全体に戦慄を突きつけます 。
「じゃあ出てくるまでコイツの歯を一本ずつ折るぜ」
彼は、匿名の反逆者が名乗り出るまで、ギョンムンを人質として痛めつけ続けると宣言しました。これは、クラスの生徒全員に「見て見ぬふりをする罪」を共有させ、彼らを共犯者に仕立て上げるための、あまりにも陰湿な心理戦です。その常軌を逸した狂気には、彼の仲間ですら「アイツ…マジでイカれてるぞ」と、恐怖を覚えるしかありませんでした 。ホヨンとのケンカによってプライドを傷つけられたドンフンの怒りが、最も歪んだ形で教室を支配し始めた瞬間でした。
まとめ【人間関係アディクション】63話を読んだ感想(ネタバレあり)
今回は、ホヨンというキャラクターの恐ろしさが、まったく新しい側面から描かれた回でした。彼が被った「正義の仮面」の下にある、冷徹な計算と支配欲。その歪んだ心理が明らかになり、読んでいて背筋が凍る思いがします。彼がいじめを止めたのは、決して純粋な正義感からではなく、自らが築き上げた虚像と、クラス内での地位を守るための、究極の自己保身だったのです。
そして、最も胸が締め付けられたのは、ギョンムンの存在でした。彼は、ホヨンという救世主が現れたと信じたはずです。しかし、結局は強者たちのパワーゲームの駒として、都合よく利用され、最後は「オモチャ」として捨てられてしまう。この物語に蔓延する、弱者はどこまでいっても搾取されるだけという、救いのない構造に、改めて言葉を失いました。
ホヨンとドンフンの偽りの和解は、この後どのような悲劇を生むのでしょうか。利用されるだけだった少年ギョンムンの絶望は、どこへ向かうのか。物語は、登場人物たちの心の闇をさらに深くえぐり出し、ますます予測不能な展開へと進んでいきます。
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