【座敷女】第1話をネタバレありでわかりやすく解説する

ずっちー

【座敷女】第1話をネタバレありでわかりやすく解説する

プロローグ:不穏な日常の始まり

物語は、厚く垂れ込めた雲が空を覆う、陰鬱な風景から幕を開けます。主人公である大学生・ヒロシが住む、古びた木造アパートが映し出され、どこか不穏な雰囲気が漂っています。

場面は変わり、散らかったヒロシの部屋。彼はベッドの上でだらしなく寝転んでおり、その自堕落な生活ぶりがうかがえます。時間は深夜をとうに過ぎ、時計の針は1時半を指しています。ぼんやりとした意識の中で、ヒロシは「いけね・・・・ ちゃんと 寝なきゃ・・・・・」 とつぶやきます。この何気ない一言が、これから始まる悪夢のような出来事の、静かな序章となるのです。

深夜の訪問者:隣室の騒音

尿意を催し、トイレに向かったヒロシ。そのとき、静寂を破るように玄関のチャイムが鳴り響きます。「ピンポーン」という無機質な音に、彼は一瞬自分の部屋への来客かと考えます。しかし、すぐに「ん? 隣か・・・・・」 と、音の発信源が隣の部屋であることに気づきました。

ただ、チャイムは一度では終わりません。立て続けに鳴らされた後、今度はドアを強く叩く「ドンドンドン」という激しい音に変わります。深夜とは思えない非常識な物音に、ヒロシは「誰だ こんな 夜中に」 と眉をひそめます。そして、叩き続ける手は女性のものらしく、「開けてよ」 という切迫した声が聞こえてくるのでした。

ドアスコープの向こう側

あまりのしつこさに、ヒロシは気になって玄関のドアスコープからそっと外の様子を覗き見ます。そこには、長い髪を揺らし、隣の202号室のドアの前に立つ一人の女性の姿がありました。

ヒロシは、「隣は夜中に 女が訪ねてくるような タイプだったっけ?」 と、隣人についてほとんど何も知らないことに思い至ります。この時点では、彼はこの出来事を単なる隣人の痴話喧嘩か何かだろうと、まだ他人事のように捉えていました。

恐怖の序曲:常軌を逸した要求

しかし、事態はヒロシの予想を超えた方向に進みます。ドアスコープの先の女は、不意にこちら、つまりヒロシの住む203号室の方を振り返りました。

ヒロシは、モデルのように背の高いその女の異様な存在感に「でかい女 だなあ・・・・・・」 と内心で呟きます。

不気味な女との遭遇の後、ヒロシは「山本君の 彼女かな」「まあ関係 ねエや・・・・ 寝るべ」と無理やり思考を打ち切り、ベッドへと戻ります。しかし、隣室からの物音は鳴りやまず、彼の安眠を妨げるのでした 。この夜の出来事を、彼は「それが 女との始まり だった・・・・」 と、のちに運命的な出会いであったかのように回想します。

淡い恋の予感

翌日、ヒロシは寝坊して大学に遅刻しそうになりながらも、いつもと変わらない日常を送っていました 。友人のヒロシと合流し、昨夜の出来事を「昨夜よォ 寝らんなくて」 と愚痴をこぼします。

大学では、友人たちが「トイレシーローズ」とあだ名をつけている、少し不思議な雰囲気を持つ女子学生・ルミちゃんの話で盛り上がっていました。友人にそそのかされ、ヒロシは「・・・・・・ルミちゃん 俺は今日こそ このアツい想いを 伝えるぜ」 と、彼女へのアプローチを決意します。

その日の夜、バイト先のコンビニで偶然ルミちゃんと遭遇します。緊張しながらも話しかけると、彼女ははにかみながらも会話に応じてくれました 。そして別れ際、彼女はヒロシの名前を呼び、「おやすみ なさい・・・・・森さん・・・・」「頑張って くださいね」と微笑みかけてくれたのです。この一言で、ヒロシは完全に舞い上がってしまいます。

脈アリだぜっ!!!」 と歓喜の声をあげ、幸せな気持ちで帰路につきました。

侵入と執拗な電話

前述の通り、ヒロシは女の不気味さに困惑しながらも、隣人は留守だと伝えようとします 。しかし女は、電気メーターが動いていることを理由に「でも冷蔵庫とか ずっと動いてる ワケだし・・・・」 と言って聞き入れません。

埒が明かないと判断したのか、女は次に「それじゃ 電話を貸してください」 と、新たな要求をします。「そうしたら 帰りますから」 という言葉を信じ、早く帰ってほしい一心でヒロシは女を部屋に招き入れてしまいました。

女が電話をかけると、呼び出し音は壁を隔てた隣の部屋から聞こえてきます 。この瞬間、ヒロシは確信しました。「今朝の しつこい 隣の電話も この女だ!」 。何度かけても留守は留守なはずなのに、女は諦める素振りも見せません 。

つきまとう電話と奪われた個人情報

翌日、大学で友人たちに昨夜の出来事を話すと、「新手の押し売りとかじゃねぇの?」 と様々な憶測が飛び交います。しかし、本当の恐怖はここからでした。

その夜、バイトを終えてアパートに帰ると、部屋の電話が鳴り響きます。寝ぼけ眼で電話に出ると、聞こえてきたのはあの女の声でした。

あたし サチコです

昨夜 あなたの部屋に ポーチを 忘れてきたみたいなのよ・・

ヒロシは、なぜ女が自分の電話番号を知っているのかと戦慄します 。女は不気味に笑いながら「ふふふ 電話器に番号が あったわ」 と告げました。ヒロシは、引っ越したばかりで覚えやすいように、電話機本体に自宅の番号を書いたシールを貼っていたことを思い出し、愕然とするのでした 。玄関には、言われた通り豹柄の古びたポーチが残されています 。

ポーチの中身と深まる謎

後日、ヒロシは友人への好奇心と恐怖心から、悪いと知りつつもポーチの中身を見てしまったことを告白します 。中には古びた化粧品や、おびただしい髪の毛が絡みついたブラシなどが入っており、その気味の悪さに「もうイイって 感じでやめたよ」 と語ります。友人は笑い飛ばしますが、ヒロシは「あんな女に 電話番号 知られて 気味が悪いぜ」 と、拭えない不安を口にしました。

日常の光と、それを蝕む影

そんな恐怖とは裏腹に、ヒロシの日常にはささやかな光が差し込みます。想いを寄せる同級生のルミちゃんです。友人に後押しされ、大学の構内でルミちゃんと二人きりになるチャンスを得ます 。いざ告白しようと口を開いた、まさにその瞬間、友人から「事務局から 急用で 呼び出し」 がかかっていると邪魔をされてしまいました。

事務局へ向かうと、職員から「政経の森君?」 と内線電話を渡されます。電話の相手はもちろん、あの女「サチコ」でした

屈服、そして最悪の結末へ

女は「あのポーチ 今すぐ 必要なのよっ」 とヒステリックに叫び、今すぐアパートに戻るよう一方的に要求します 。ヒロシがルミちゃんを待たせていると断ると、女はこのドロボウッ! インポ野郎!!!」 と罵倒。ついに堪忍袋の緒が切れたヒロシは「いいかげんにしろ!!! ヘンだぞお前!」 と怒鳴りつけ、電話を叩き切りました。

しかし、女の執念はヒロシの想像を絶します。切ったはずの電話は事務員を通じて再びヒロシに渡され、今度は「ごめんなさい」「混乱しちゃって」 としおらしい声で謝罪してきます。度重なる嫌がらせに心身ともに疲れ果てたヒロシは、ついに思考を放棄してしまいました。

わかったよ

電気メーターの 上に予備の 鍵が隠して あるから

俺の部屋から 勝手に持ってって いいよ

ルミちゃんとの約束よりも、この悪夢から一刻も早く解放されたい。その一心で、ヒロシは決して教えてはならない情報、自宅の合鍵の隠し場所を教えてしまったのです。電話の向こうで、女は鍵を手に入れ、不気味な笑みを浮かべていました 。

そして物語は、ヒロシの知らないところで、女が鍵屋を訪れ「この鍵の スペア・・・・・ 作ってください」 と依頼する、最悪の結末を示唆して幕を閉じます。

【座敷女】1話を読んだ感想(ネタバレあり)

『座敷女』の第1話は、まさにジャパニーズホラーの真骨頂とも言える、じわじわと日常が崩壊していく恐怖を完璧に描いています。最初は単なる「迷惑な隣人トラブル」だったはずが、気づけば自分のプライベート空間にまで侵食され、個人情報を根こそぎ奪われていく過程は、読んでいて生きた心地がしませんでした。

特に恐ろしいのは、その手口の巧妙さと執拗さです。電話番号を盗み見て自宅や大学にまで連絡してくる異常性。激しく罵倒したかと思えば、次の瞬間にはしおらしく謝罪して同情を誘う巧みな話術。これらに精神をすり減らされたヒロシが、正常な判断能力を失い、ついには合鍵の場所を教えてしまう展開は、あまりにもリアルで胸が痛みました。誰にでも起こりうる、という身近さが、この物語の恐怖を何倍にも増幅させていると感じます。

また、ルミちゃんとの淡い恋模様という「光」の部分が描かれるからこそ、女という「影」の存在がより一層際立ちます。幸せな日常を掴みかけた瞬間に、必ず現れる不協和音。この巧みな緩急の付け方が、読者を須く引き込む要因なのでしょう。

最後の、ヒロシの知らぬ間に合鍵が複製されていくシーンは、もはやホラーというよりサスペンスの領域です。これから彼の身に何が降りかかるのか。逃げ場のない恐怖の始まりを予感させる、完璧な引きだったと思います。

【座敷女】1話のネタバレまとめ

  • 大学生ヒロシの住むアパートの隣室に、深夜、謎の長身の女「サチコ」が現れます 。
  • 女はヒロシの部屋に上がり込んで電話をかけ、その際に電話機に貼ってあったヒロシの電話番号を盗み見ました 。
  • 「ポーチを忘れた」という口実で、女はヒロシの自宅や大学の事務室にまで執拗に電話をかけ続けます 。
  • 激しい罵倒としおらしい謝罪を繰り返す女の言動に心身ともに疲弊したヒロシは、ついに自宅の合鍵の隠し場所を教えてしまいます 。
  • 物語の最後、女はヒロシに無断で合鍵を手に入れ、そのスペアキーを作ろうと鍵屋を訪れるところで終わります 。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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