【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】10話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 夫の涼太は、慣れないワンオペ育児と片道1時間の病院通いで、心身ともに疲弊していました 。
  • 強い薬が中止された千夏は、症状の再発に怯え、夫への猜疑心を募らせていました 。
  • 息子の翼が熱を出したと聞き、帰ろうとする涼太に対し、千夏は「翼なんかどうでもいいじゃん!!!」と叫んでしまいました 。
  • 妄想に囚われ、自分を責める千夏に対し、涼太は感情を爆発させながらも、「千夏なしの未来なんてありえない」と改めて深い愛情を誓いました 。

【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】第10話をネタバレありでわかりやすく解説する

夫・涼太との間に、修復しがたいほどの深い溝ができてしまったかのように見えた前回。しかし第10話では、同室の患者からの一言をきっかけに、千夏の中に「退院」という強い目標が生まれます。それは、たとえ偽りの仮面を被ってでも手に入れたい、切実な願いでした。この記事では、千夏の退院への執念と、そのために彼女がついた悲しい嘘について、ネタバレありで解説していきます。

退院への道筋「外泊」という名の試験

出口の見えない閉鎖病棟での生活。しかし、千夏に思わぬ転機が訪れます。

退院へのきっかけ

最近、周囲から「調子が良さそう」「なんか今日も表情いいし」と言われることが増えていた千夏 。自分ではまだ足が勝手に動き、そわそわする感覚が抜けないものの、夜眠れる日が増えたり、興奮を抑えるための筋肉注射を打たれることがなくなったりと、わずかな回復の兆しも感じていました

そんな時、同室の友人から「ちなっちゃんも!してみたら?外泊」「退院へのいいきっかけになるかもよ」と提案されます

夫の判断が鍵

主治医が退院を決めるのだと思っていた千夏でしたが、友人から驚きの事実を知らされます 。彼女のような「医療保護入院」の患者は、退院の決定権が第三者にあるというのです 。千夏の場合は、その決定権を持つのは夫の涼太でした

つまり、外泊を成功させ、涼太に「この状態なら大丈夫そうだ」と思ってもらえれば、退院できる。その事実は、千夏にとって大きな希望となりました 。

外泊許可、そして束の間の「日常」

千夏は早速、涼太に電話で外泊を願い出ます。しかし、彼の反応は慎重でした 。それでも、主治医の宇田川が「寝る前の薬に抗うつ剤を増やした」ことや 、「以前よりかは眠れている」という看護師からの報告を受け 、「涼ちゃんの判断が基準なんだ」と念を押された上で、週末の外泊が許可されたのです

久々のシャバと家族の温もり

外泊の日。千夏は久しぶりに外の世界の空気に触れます 。病棟の空調に慣れた体には、真夏の熱気がこたえました 。涼太は「無理そうだなって俺が思ったら病院に戻るからね」と釘を刺しますが、千夏は「平気だよっ!」と笑顔で返します

実家では、家族が彼女の好きなお店の水ようかんを用意して、温かく迎えてくれました 。その優しい雰囲気に、千夏の表情も自然と明るくなっていきました

母性の芽生えと、退院のための「嘘」

外泊の目的は、涼太に「大丈夫」だと思わせること。しかし、ある再会が、彼女の心に予期せぬ変化をもたらします。

我が子との再会

涼太の母が、息子の翼を連れて実家へやってきました 。人見知りをして泣き出した翼でしたが、千夏が「おいで」と抱きしめると、ピタリと泣き止んだのです

「やっぱりママがいいかあ」。その光景に、千夏の心にも温かい感情が芽生え始めました

「かわいい」という本心と拭えない嫌悪感

翼にミルクをあげながら、千夏は「かわいい…」とごく自然に感じる自分に気づきます 。しかし、心の奥底では「ぐにゃぐにゃで不規則な動き」「なまぬるい体温」「嘔気を覚える甘ったるいにおい」といった、生理的な嫌悪感も消えてはいませんでした

「私にとっての一番の薬は涼ちゃんと翼」

その夜、千夏は涼太に「…私ここにいちゃダメかな?」と本心を打ち明けます 。しかし、その願いは叶いません。この外泊を成功させなければ、あの地獄のような病棟に逆戻りです。

彼女は、自分を救うため、退院するため、ある「嘘」をつくことを決意します。愛しているとは言い切れない、嫌悪すら感じている息子を利用してでも、この状況から抜け出すのだと 。そして、涼太の目を見て、こう告げたのです。

「今日一日すごしてみてわかったことがあるの」

「私にとっての一番の薬は涼ちゃんと翼だってこと」

偽りの退院、そして…

千夏の悲しい嘘は、見事に功を奏しました 。涼太は彼女の言葉を信じ、退院を許可したのです。

9月2日、入院から1ヶ月と10日。千夏は、S総合病院の精神科閉鎖病棟を退院しました 。「もう二度とこんな所とは関わり合いになるもんか…!!!」と固く心に誓う彼女 。しかし、その偽りの仮面は、すぐに剥がれ落ちることになるのでした

【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】10話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回は、退院したい一心で、本来の自分とは違う「理想の母親」を必死に演じようとする千夏の姿が、あまりにも痛々しく、そして切実で、読んでいて心が締め付けられました。

特に印象的だったのは、我が子・翼に対して「かわいい」という母性と、「気持ち悪い」という生理的な嫌悪感が、彼女の中で同時に存在しているという描写です。これは、産後のホルモンバランスの乱れや極度のストレス下に置かれた母親が抱える、非常にリアルで複雑な感情なのだと思います。決して「悪い母親」なのではなく、病気がそうさせているのだと、改めて感じさせられました。

そして、退院のために「一番の薬は涼ちゃんと翼」という嘘をつくシーン。自分を救うために、愛しきれていない息子を利用してしまう罪悪感と、それでもこの地獄から抜け出したいという強い意志。その葛藤に、胸が苦しくなりました。

ようやく手に入れた退院という名の「自由」。しかし、物語の最後の一文、「偽りは……すぐに剥がれ落ちはじめる」が、この先も決して平坦な道のりではないことを予感させます。偽りの仮面の下で、千夏は本当の自分と、母親である自分と、これからどう向き合っていくのでしょうか。目が離せません。

【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】10話のネタバレまとめ

  • 同室の患者から「外泊」が退院のきっかけになると聞いた千夏は、退院という強い目標を持つようになりました 。
  • 夫・涼太の許可を得て外泊した千夏は、久しぶりに家族との温かい時間を過ごしました 。
  • 息子・翼との再会を通じ、千夏は「かわいい」という母性と「嫌悪感」という相反する感情を同時に抱きました 。
  • 退院したい一心で、千夏は涼太に「一番の薬は涼ちゃんと翼」という嘘をつき、強引に退院を果たしました 。
  • しかし、その偽りの回復は長くは続かず、すぐに綻びが見え始めることが示唆されました 。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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