【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】29話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

- 千夏は自らの病が「産褥期精神病」である可能性を主治医に訴えましたが、まともに取り合ってもらえませんでした 。
- そこへ夫の涼太が、周産期精神疾患の専門医である新垣先生を連れて現れました 。
- 新垣医師は、千夏の症状を「精神的な幼さ」と断じる宇田川医師の意見を退け、漢方薬によるホルモン治療を提案しました 。
- その後の外泊で、息子・翼から人見知りで泣かれてしまいましたが、最後に初めて自分に向けて笑いかけてもらい、千夏は深い感動を覚えました 。
【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】第29話をネタバレありでわかりやすく解説する
前回、息子・翼の初めての笑顔という、まばゆい光に照らされた主人公・千夏。第29話では、退院後初めて、家族3人だけで過ごす「夜」が描かれます。それは、彼女にとって最大の試練であると同時に、病に打ち克ち、本当の意味で「母親」になるための、決戦の夜でもありました。
この記事では、「妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】第29話のあらすじを、ネタバレありで徹底的に解説していきます。
親子3人、初めての夜
「私は息子を産んで以来 一度も一緒に朝を迎えたことがない」 。
息子の存在が怖かったから 。そして、自分が息子に危害を加えないか、周囲に心配をさせてしまったから 。
そんな千夏にとって、家族3人で過ごす夜は、お宮参りやお食い初め以上に、緊張を強いられる一大イベントでした 。
夜泣きと、母親としての一歩
静まり返った夜、翼の夜泣きが始まります 。涼太がすぐさまあやし始めますが、千夏は「私も何かしたい」という思いに駆られます。そして、勇気を振り絞ってこう申し出るのです。
「抱っこしてみていい?」 。
暗闇で自分の顔が見えなければ、翼も怖がらないかもしれない 。そんな打算的な考えもありましたが、それは紛れもなく、彼女が母親として踏み出した大きな一歩でした。
幻聴との対決、そして芽生えた「愛」
千夏が翼を抱きしめると、不思議と二人の鼓動が一つに重なるように感じられました 。しかし、その穏やかな瞬間を、病魔が見逃すはずはありませんでした。
闇からの声
彼女の頭の中に、翼の声色をした幻聴が響き渡ります。それは、かつて病が彼女に言わせた、おぞましい言葉の数々でした。 「ぼくだって産んでほしくなかった」 。
「『産まなきゃよかった』って後悔してたくせに」 。
「…なにを今さら母親づらして」 。
「違う!!!」―魂の叫び
そして、幻聴は最も残酷な問いを投げかけます。「それはぼくのことを愛してないから」 。
しかし、今の千夏はもう屈しませんでした。彼女は、涙ながらに絶叫します。
「違う!!!」
「気持ち悪くなんてないよ!翼に悪いところなんてない」 。
「本心」の勝利
その叫びは、病が生み出した偽りの自分に対する、決別の言葉でした。
「どうしてわからなくて…!!!!」
幻聴と会話しているかのような妻の姿に、涼太は戸惑います。しかし、千夏の口から溢れ出たのは、後悔と、そして本物の愛情でした。
「本当にごめんね」「こんなにもかわいいのに どこが怖いのか…」「どうしてもわからなくて…!!!!」
「愛したくて、愛したくて」
彼女は、自分の頭の中に「コントロールできない領域」があったことを認めます 。しかし、これまで口にしてしまった数々の酷い言葉は、「決して本心からじゃない」と断言するのです 。
その確信から、「信じられない感情がいっぱい生まれた」 。翼は、世界で一番守り育てたい存在であり 、「愛したくて 愛したくて」たまらない、かけがえのない宝物なのだと 。
「産まれてきてくれてありがとう」
あふれ出す愛情は、涙と共に、最も伝えたかった言葉となって紡がれます。
家族の涙
「翼 本当にごめんね…!!!!」 。
「産まれてきてくれて ありがとう」
その言葉に、涼太もまた涙を流し、「うん 大丈夫だ きっと伝わってる」と、二人を優しく抱きしめます 。そして、力強く宣言するのです。「ちゃんと…俺たちは家族だ」 。気がつくと、3人そろって涙で頬を濡らしていました 。
初めて越えられた夜
親子3人で、初めて「夜」を越えられた瞬間でした 。それからの日々、千夏はつかず離れずの距離で、翼との時間を少しずつ積み重ねていきます 。初めての離乳食。千夏が差し出したスプーンから、翼は「あーん」と10倍粥を食べました 。そのささやかな瞬間に、千夏は「ああ産まれてきて良かった」と、息子に何度も何度も感じてほしいと願うのでした 。
【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】29話を読んだ感想(ネタバレあり)
今回は、これまでの壮絶な展開がすべてこの瞬間のためにあったのだと思えるほど、圧倒的なカタルシスに満ちた回でした。夜泣きする息子を前に、千夏が病気の生み出した幻聴と対決し、「違う!!!」と叫ぶシーンは、彼女の「本心」が、ついに病に打ち克った瞬間であり、涙なしには読めません。
そして、「こんなにもかわいいのに、どこが怖いのか、どうしてもわからなくて」と泣きじゃくる千夏の姿。これこそが、この病気の本当の恐ろしさなのだと、改めて痛感させられました。愛情があるのに、それを恐怖が上回ってしまう。そのコントロールできない感覚は、どれほど苦しかったことでしょう。
涼太の「俺たちは家族だ」という言葉も、深く胸に響きました。どんなに壊れてしまっても、どんなに傷つけられても、決して揺らぐことのなかった彼の愛情こそが、千夏をこの勝利へと導いた最大の力だったのだと思います。
初めて親子3人で迎える朝。それは、絶望の闇を乗り越えた彼らにとって、何物にも代えがたい、希望の光そのものだったに違いありません。
【妊娠したら死にたくなった~産褥期精神病~】29話のネタバレまとめ
- 千夏は、再入院から5ヶ月以上を経て、初めて息子・翼と夫の涼太と、親子3人きりで夜を過ごしました 。
- 夜泣きする翼を抱いた際、千夏は「産まなきゃよかった」などと囁く幻聴に襲われますが、「違う!!!」と、自らの意思でそれを否定しました 。
- 病に打ち克った千夏は、「こんなにもかわいいのに、どこが怖いのかわからなくて」と涙ながらに本心を吐露し、翼への深い愛情を自覚しました 。
- 夫の涼太に支えられ、「産まれてきてくれてありがとう」と翼に伝えた千夏は、初めて親子3人で穏やかな朝を迎えることができました 。
◁前の記事はこちらから

▷次の記事はこちらから



