漫画【カラオケ行こ!】後編|狂児死亡の真相やラストの刺青の考察まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 合唱部部長の岡聡実は、ヤクザの成田狂児に「歌がうまくなるコツ」を教えてほしいと頼まれます。
  • 狂児の組では、カラオケ大会で最下位になると、組長自ら下手な刺青を彫られるという恐怖の罰ゲームがありました。
  • 聡実も「変声期」という悩みを抱える中、狂児やその仲間たちに歌のレッスンをすることになります。
  • レッスンを通して、二人の間には少しずつ不思議な交流が生まれますが、物語は狂児が聡実に破門された組員の「指」を見せ、不穏な雰囲気で終わりました。

【カラオケ行こ!】後編をネタバレありでわかりやすく解説する

物語はいよいよクライマックスへ。聡実の合唱祭と狂児のカラオケ大会、二人の少年とヤクザの「勝負の日」が、思わぬ形で交錯します。後編では、二人の関係が大きく動く、怒涛の展開が待ち受けています。

決戦を前にした二人の苦悩

運命の日を前に、二人はそれぞれ壁にぶつかっていました。

聡実は、合唱をする者にとって悪夢ともいえる「変声期」の真っ只中にいました。練習をすればするほど声はかすれ、かつての美しい高音は見る影もありません。

後輩の和田は、苦しそうな聡実を見かねて「最後の舞台くらい楽しく立ってほしいんです」と、ソロパートの辞退を促すほどでした 。しかし、部長としてのプライドと責任感が強い聡実にとって、その優しい気遣いは、かえって自分の不甲斐なさを突きつけられるようで、素直に受け入れることができませんでした。

一方、無理な発声を続けた狂児もまた、喉の調子を悪化させていました 。聡実が本気で心配し、ボイストレーニング教室に通うことを提案しても、狂児は「おっさん2人で…恥ずかしいやろ」と照れて拒否します 。互いに万全とはいえない焦りの中、運命の日は刻一刻と近づいていました。

運命が交差する日

ある日のレッスン中、聡実は苦し紛れに、古典落語『まんじゅうこわい』のような作戦を提案します。わざと組長の前で「狂児さんが好きなものを嫌いだ」と言ってみてはどうか、と。しかし、ヤクザの世界の理不尽さを知る狂児は、「どっちにしろ出来上がるのはゴミやからな」と、その子供じみた作戦を一蹴します

そして、聡実が何気なく尋ねたカラオケ大会の日付。狂児の口から告げられたのは、

8月11日という、聡実にとって忘れられない日付でした 。奇しくも、それは聡実の中学最後となる合唱祭の当日だったのです 。二人の「勝負の日」が同じであると知った瞬間、聡実は、これが狂児との最後のレッスンになることを悟るのでした。

狂児の元へ…繁華街での危機

決戦の日が近づくにつれ、聡実の心は狂児のことでいっぱいになります。家族から渡されたお守りを、狂児にあげようかと思い悩むほどでした 。そして、狂児から「絶対に来るなよ」と固く忠告されていたにもかかわらず、居ても立ってもいられなくなった聡実は、彼の身を案じて危険な繁華街へと足を運んでしまいます 。

その心配は、最悪の形で的中します。聡実は見るからに柄の悪いチンピラに絡まれ、人生で初めて胸ぐらを掴まれるという恐怖を味わいます 。絶体絶命のその瞬間、まるでヒーローのように現れたのが狂児でした。彼はチンピラを一撃で沈黙させ、呆然とする聡実を車へと促します。車に戻ると、狂児は「絵に描いたようなチンピラでわろてまうやろ」「あいつに捕まるて才能あるなぁ聡実くんは」と、緊張感のない言葉で聡実をからかうのでした

溜め込んだ感情の爆発

狂児の飄々とした態度。それが、これまで聡実が心の奥底に押し込めてきた、変声期への焦り、ヤクザと関わる恐怖、そして自分を理解してくれないように見えた狂児への苛立ちといった、あらゆる感情の導火線に火をつけました。

「僕かて必死にやってきたわ!!!!」

「なんも知らんくせに勝手なこと言うな!!!」

涙ながらに叫び、聡実は狂児の頬を叩きます。それは、優等生の仮面を脱ぎ捨て、彼が初めて他人に弱音と本音をぶつけた瞬間でした。「ゴミ虫野郎!!」という渾身の罵声を浴びせ、聡実は車から飛び出していきました

涙と、フリーザからのメッセージ

一人きりになり、聡実を襲ったのは激しい自己嫌悪でした。なぜあんなに感情的になってしまったのか。後悔の念に駆られて涙を流していると、スマートフォンの通知が鳴ります。それは、狂児からのメッセージでした。

「キレると急に口悪くなるのフリーザみたいやな」

絶妙なユーモアに、張り詰めていた聡実の心の糸がふっと緩みます。深刻な空気を一変させるこの一言は、聡実の罪悪感を和らげる、狂児なりの最高の優しさでした。狂児からは「帰り道、気をつけて」と、気遣う返信が 。この短いやり取りのおかげで、聡実の合唱祭への不安は、いつの間にか不思議と消えていました 。

勝負の日に起きた悲劇

合唱祭当日。聡実が会場に向かう途中、騒がしい人だかりが目に留まります。そこは、車が大破した凄惨な交通事故の現場でした 。そして、野次馬の会話と警察官の報告から、彼は信じがたい事実を耳にします。被害者の名前が「成田狂児」であり、意識不明の重体である、と 。

頭が真っ白になり、何度も狂児に電話をかける聡実。しかし、その呼び出し音が虚しく響くだけでした 。絶望の中、彼は合唱祭の会場に背を向け、ヤクザのカラオケ大会が開かれているスナック「カッツェ」へと走り出しました 。

狂児への鎮魂歌、『紅』

スナック「カッツェ」では、組長主催のカラオケ大会が重苦しい空気の中で始まろうとしていました。そこに現れた聡実に、組員たちは驚きの目を向けます。やがて組長は、病院から連絡があり、狂児が「地獄に行った」と静かに告げました 。

狂児はもういない。その事実を受け入れられない聡実。呑気に歌を歌っている組員たちに対して腹が立ち「お前らも狂児と一緒に地獄に落ちてしまえ」と暴言を吐いてその場を立ち去ろうとします。その背中に向けて組長は「ちょっと待て」と一言。

「名前も名乗らんと突然入ってきてタダで帰るつもりか?」と言われて何かを覚悟した聡実でしたが、そんな聡実に対して組長はマイクを差し出します。「1曲歌っていけ」 「狂児への鎮魂歌…」

「ここで逃げてはダメだ」 。彼は、狂児のために歌うことを決意しました。曲はもちろん、狂児が愛し、聡実が「気持ち悪い」と評した、あの『紅』でした 。

聡実は、狂児との短いけれど濃密な思い出を胸に、力の限り歌い上げます。それは、地獄にいる友人が二度と下手な刺青を彫られることがないようにと願う、魂の絶唱でした 。

奇跡の再会、そして3年後

聡実の悲痛な歌声は、その場にいた組員、そして組長の心さえも震わせ、涙させました 。歌い終え、静まり返る店内に、信じられない声が響きます。

「いや〜地獄めっちゃ暑かったわ〜」

そこに立っていたのは、死んだはずの狂児でした。逆恨みによる事故に遭ったものの、聡実にもらったお守りのおかげか、奇跡的に軽傷で済んだと彼は笑います 。狂児の生存に、聡実は安堵の涙を流しました。この日を最後に、二人が会うことはなくなりました

そして3年の月日が流れます。高校の卒業文集に、聡実は中学時代の狂児との出来事を綴っていました 。大学進学のため訪れた空港で、彼は見慣れた男の姿を見つけます。狂児です。

結局、狂児はあのカラオケ大会で歌ヘタ王になり、腕に刺青を彫られていました 。しかし、彫られた文字は、なんと「聡実」 。罰ゲームで好きなものを聞かれ、聡実の名前を答えたからでした 。3年ぶりの再会に、狂児は昔と変わらない笑顔で、あの言葉を口にするのでした。

「カラオケ行こ!」

【カラオケ行こ!】後編を読んだ感想(ネタバレあり)

後編は、まさにジェットコースターのような展開でした。二人の勝負の日が同じだと判明した瞬間から、物語は一気に加速していきます。

聡実が危険を顧みず狂児に会いに⾏くシーン、そして溜め込んだ感情を爆発させるシーンは、読んでいて胸が苦しくなりました。それまで優等生として感情を抑えてきた聡実が、初めて見せた剥き出しの姿。それは、彼が狂児という存在にどれだけ心を揺さぶられていたかの証明だと思います。

そして、圧巻だったのは、狂児の死を知らされた聡実が、ヤクザたちの前で『紅』を熱唱するクライマックスです。自分のためではなく、亡くなった(と思った)友人のために歌う姿には、涙を禁じ得ませんでした。変声期に悩み、歌うことから逃げていた少年が、一番大切な場面で最高の歌を届ける。これ以上ないカタルシスを感じました。

ラストの再会シーンは、本当に爽やかで希望に満ちています。腕に「聡実」と彫られた狂児の姿には笑ってしまいましたが、それもまた彼らしい愛情表現なのでしょう。全く違う世界に生きる二人が出会い、ぶつかり合い、そして確かに友情を育んだ。この短い夏の物語は、読後、あたたかくも少し切ない余韻を残してくれました。

【カラオケ行こ!】後編のネタバレまとめ

  • 聡実の合唱祭と狂児のカラオケ大会が、奇しくも同じ8月11日であることが判明します。
  • 狂児を心配して会いに行った聡実はチンピラに絡まれますが、狂児に助けられます。
  • 車中で感情を爆発させた聡実は狂児と口論になりますが、メッセージのやり取りで和解します。
  • 大会当日、狂児が交通事故で意識不明の重体になったと知った聡実は、合唱祭を休み、ヤクザのカラオケ大会の会場へ向かいます。
  • 狂児が死んだと聞かされた聡実は、彼への鎮魂歌として、組長や組員たちの前で『紅』を熱唱します。
  • 歌い終えた聡実の前に、軽傷で済んでいた狂児が姿を現し、二人は再会を果たします。
  • 3年後、大学生になった聡実は空港で狂児と再会。狂児は腕に「聡実」という刺青を彫られており、再び聡実をカラオケに誘います。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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