【さよならお兄ちゃん】8話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 月が腕に自らつけた傷を見せ、チャプサリに襲われたと嘘の訴えをする。それを信じた兄たちは激怒し、チャプサリへの憎悪を募らせる。
  • 星はゴミ集積所の中で、何者かによって毒殺されたチャプサリの冷たい亡骸を発見し、絶望のあまり泣き崩れる。
  • 月は星の耳元で「私のプレゼント、気に入った?」と囁き、自分がチャプサリを殺した犯人であることを暗に認め、星を挑発する。
  • しかし月は、星の部屋に毒薬を隠すなど巧妙に証拠を捏造し、星がチャプサリを殺した犯人であるかのように見せかけることに成功する。
  • 精神的ショックから喘息の発作で苦しむ星から、月は唯一の命綱である吸入器を奪い、目の前で踏みつけて破壊する。
  • 助けを求めることもできず意識を失った星が、庭で倒れているところを、異変に気づいた兄たちが発見する。

【さよならお兄ちゃん】第8話をネタバレありでわかりやすく解説する

前回、唯一の心の支えであった愛犬チャプサリを失い、月(タル)の策略によって吸入器さえも奪われ、冷たい地面に意識を失った星(ビョル)。彼女が再びその瞼を開けた時、目に映ったのは見慣れた自室の天井でした。

しかし、それは決して優しい夢の続きなどではなく、彼女の最後の希望さえも奪い去る、あまりにも残酷な誕生日の朝の始まりを告げるものでした。

目覚めと冷たい現実

「また…夢を見てるのかな?」 朦朧とした意識の中で星がそう呟くと、冷たく、しかし聞き慣れた長兄・珉(ミン)の声が静かな部屋に響きます。

「ようやく目が覚めたか。お前、庭で倒れていたんだぞ。これからはもう少し自分の行動に気をつけろ」

その声には、妹を案じる温かみは一切含まれていませんでした。むしろ、これ以上面倒事を起こしてくれるな、という警告のような響きが多分に含まれており、星の心をさらに冷たくさせます。そこへ電話の着信音が鳴り、様子を見に来た次兄・勛(フン)と三兄・哲(チョル)も部屋に入ってきます。

「体はもう大丈夫なのか?」「あの時は本当にごめん。ついカッとなってしまって…」

兄たちから紡がれる言葉は、心からの反省や愛情からではなく、ただその場を収めるためだけに発せられた、中身のない形だけの謝罪でした。星の心は、もう何の感情も映さない湖面のように静まり返っており、彼らの言葉が波紋を立てることはありませんでした。

パーティーへの「招待」

その時、家政婦が部屋に入ってきて、息をのむほど美しい純白のドレスを星の前に差し出します。 「これは…何?」 星が戸惑いの表情を浮かべていると、哲が少し照れたように、しかしぶっきらぼうに説明します。

「今日は大事な日なんだから、それくらい着て来いよ。お前のためのもんだ」

その言葉に、完全に死んでいたはずの星の心に、ほんのかすかな、淡い光が灯ります。今日は、彼女の18歳の誕生日。忘れていると思っていたのに、もしかして、兄たちはこの日のためにサプライズを用意していてくれたのでしょうか。

「…今日が、何の日か覚えててくれたの?」

震える声で、最後の期待を込めて星がそう問いかけると、珉はまるで当たり前のことのように、あっさりと答えました。

「もちろん忘れるわけないだろう。忘れているのはそっちの方じゃないか?今日は、俺の『星眠計画』の成功を祝う、記念すべきパーティーの日だ。これは我が社にとっての一大事なんだぞ」

その瞬間、星の顔からすっと血の気が引いていきました。灯ったばかりの淡い光は、無慈悲な言葉によって跡形もなくかき消されます。

(お祝いパーティー…?なんて無駄な期待をしてしまったんだろう。どうせ私の誕生日なんか、誰も覚えていないのに…)

心の中で自嘲気味に呟いた星は、さらに残酷な真実に気づき、戦慄します。

(そうか…。私がこの世から消える日を、家族みんなで盛大にお祝いするのね…)

危機一髪の書類隠し

「ところで、これは何だ?」 そう言って、珉が星の枕元に無造作に置かれていた、「星眠計画」の契約書類のファイルに、何気なく手を伸ばします。 星の心臓が大きく跳ね上がります。その書類には、志願者が「南宮星」であること、そして角膜提供の意思が記されています。

これを見られたら、すべてが終わる。星が声にならない悲鳴を上げた、まさにその瞬間でした。

「大変です!月お嬢様の心臓がまた…!」

階下から、家政婦の切羽詰まった声が聞こえてきます。星はすかさず「またその言い訳。本当に都合のいい心臓ね」と心の中で毒づきますが、兄たちは案の定、月の元へと慌てて駆け出していきます。去り際、兄弟たちは星に向かって、まるで当然のように言い放ちました。

「ちゃんと休んで、パーティーには必ず来いよ。ああ、それからパーティーが終わったら、お前が寂しくないように、チャプサリと同じ犬をすぐに連れてきてやるから」

星が愛したかけがえのない家族のことを、平然と「同じ犬」と表現する兄。彼にとって、星が注いだ愛情も、共に過ごした時間も、すべてはただ交換可能なモノに過ぎないのです。 一人になった部屋で、星は静かに、しかし確固たる意志を持って呟きます。

「ごめんね、お兄ちゃんたち。今度こそ、もう待ってあげられない」

それは、彼女が下した、これが最後の決意であるという静かな宣言でした。

華やかなパーティー会場での残酷な宣言

場面は変わり、南宮家の豪邸で開かれた、豪華絢爛なパーティー会場。多くの招待客がシャンパングラスを片手に談笑する中、司会者がマイクを手に取り、高らかに宣言します。

「皆様、お待たせいたしました。本日の主役、南宮珉(ナングンミン)社長のご登場です」

大きな拍手に迎えられ、珉が壇上に立ち、自信に満ちた表情でスピーチを始めます。

「まず初めに、お忙しい中ご出席いただいた皆様に、心より感謝申し上げます。今回の『星眠計画』が、こうして無事にスタートを切れたのは、自らの名前も明かさない、一人の勇敢な志願者のおかげです。彼女が、人類の未来のために自身の30年という尊い命を捧げてくれたおかげで、我々は不可能と言われた冷凍睡眠計画の、記念すべき第一歩を踏み出すことができました。彼女の勇気に、一杯捧げましょう」

会場に「乾杯!」という声が大きく響き渡ります。その崇高な志を持つ志願者が、今まさに家族から存在を否定され続けている自分の義理の妹であることを、珉はまだ知る由もありません。

名前さえも奪われる瞬間

珉のスピーチは、さらに続きます。

「そして皆様ご存知の通り、長年行方不明だった私の実の妹、南宮月(ナムグンタル)を見つけてから、早2年が経ちました。星(ビョル)と月(タル)、どちらも私たち南宮家にとって、かけがえのない大切な家族です」 しかし、彼の口から次に発せられた言葉は、星にとって魂を殺す最後の一撃となりました。

「本日この輝かしい場をお借りして、皆様にご報告がございます。『星眠計画』は、本日よりその名前を『月星睡眠計画』へと変更することを、ここに高らかに宣言いたします」

会場の片隅で、そのスピーチを聞いていた星が、誰にも聞こえない声で満足そうに呟きます。

「これで、もう南宮家の星(ビョル)は、完全に無くなるわね」 プロジェクトの名前からさえ、星という存在の痕跡は、完全に消し去られようとしていました。

仕組まれた「事故」

パーティーが和やかに進む中、月の友人たちが、盲目である次兄・勛について無遠慮な言葉を投げかけています。

「ねえ、あんたのお兄さんって、本当に目が見えないの?普通に歩いてるし、そうは見えないけど」

その言葉に、月は悪戯っぽく、そして悪意に満ちた笑みを浮かべます。

「ふふ、じゃあ、ちょっと試してみる?」

そして、少し離れた場所にいる勛に向かって、鈴を転がすような声で呼びかけました。 「お兄ちゃん!こっちに来て、美味しいお肉を食べましょうよ」

「実の兄だろ?」と友人が念のために確認すると、月は意味深に、そして意地悪そうに「さあ、どうかしら?実の兄、かしらね?」とだけ答えます。

燃える危険と、最後の優しさ

勛は、愛する妹の声だけを頼りに、ゆっくりと歩き始めます。しかし、彼が進むその先には、来客のために用意された、真っ赤な炭が燃えたぎるバーベキューグリルがありました。月は、兄が危険な方向へ向かっていることを完全に理解した上で、わざとそちらへ誘導していたのです。

その恐ろしい企みにいち早く気づいた星は、反射的に、そして心の底から叫びます。 「お兄ちゃん、危ない!そっちはダメ!」 必死で勛の元へ助けに向かおうとする星。

しかし、彼女が駆け出したその瞬間、すぐそばにいた月が、誰にも気づかれないよう巧妙に星の足を引っ掛けます。完全にバランスを崩した星は、為すすべもなく前のめりに倒れ込み、すぐ目の前にいた勛をも巻き込んで、派手な音を立てて転倒してしまいました。

会場に響き渡る招待客の悲鳴。華やかだったパーティーは、一瞬にして混乱の渦に包まれます。必死で助けようとした星が、結果的にパーティーを台無しにする騒動を起こしてしまったかのように見えるこの状況。月の計算され尽くした完璧な罠は、またしても星を、言い逃れのできない悪役へと仕立て上げることに成功したのでした。

【さよならお兄ちゃん】8話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回は、星にとって、これ以上ないほどに残酷な誕生日となってしまいました。自分の18歳の誕生日に、自分が社会的に「死ぬ」ことを祝うためのパーティーが開かれるという、あまりにも皮肉な状況。追い打ちをかけるように、彼女の存在の証でもあったプロジェクト名から「星」の名前が消され、「月」の名が被せられるという、存在そのものの完全な否定。

これほどまでに痛ましく、救いのない展開があるでしょうか。 珉のスピーチで「名前も明かさない、勇敢な志願者」への感謝を述べる場面は、特に胸が締め付けられました。その志願者こそが、今まさに彼の目の前で心を殺されている妹の星であるというのに。

人類の未来という大義名分のために、家族である彼女の命が差し出されようとしている事実を、誰一人として気づいていません。 そして月の悪意は、もはや狂気の域に完全に達しています。血の繋がった盲目の兄を、燃え盛るグリルへと平然と誘導するなんて、これは明らかな殺人未遂行為です。

それなのに、星が助けようとしたその瞬間を狙って足を引っ掛けて転ばせる。結果的に星がすべての騒動を引き起こした加害者に見せかけるその手口は、あまりにも巧妙で、悪魔的で、恐ろしいものでした。

「ごめんね、お兄ちゃんたち。今度は待ってあげられない」という、パーティーの前に星が呟いた言葉が、深く、そして重く心に残ります。もう彼女は、かつて愛した家族からの理解や愛情を期待することを、完全に諦めてしまったのでしょう。

それでもなお、危険が迫る兄を目の前にして、最後まで助けようと行動してしまう彼女の根源的な優しさが、かえってこの物語の悲劇性を深めているように感じました。

【さよならお兄ちゃん】8話のネタバレまとめ

  • 庭で倒れていた星が自室で目を覚まし、兄たちから心のない形だけの心配を受ける。
  • その日は星の18歳の誕生日だが、兄たちはそれを忘れ、自分たちのための「星眠計画」の成功を祝うパーティーの日としか認識していない。
  • パーティーのスピーチで長兄・珉は「名前も明かさない志願者」への感謝を述べ、さらにプロジェクト名を「月星睡眠計画」に変更すると発表し、星の存在を公の場から抹消する。
  • 月は盲目の次兄・勛を燃え盛るバーベキューグリルへと意図的に誘導し、その命を危険に晒す。
  • 星は勛を助けようと駆け出すが、月に足を引っ掛けられて転倒し、結果的に次兄・勛も巻き込んでパーティーを台無しにした加害者のように見せかけられてしまう。

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コマさん(koma)
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野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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