【兄だったモノ】全話ネタバレ考察!結末や聖の正体を解説

この記事にたどり着いたあなたは、漫画【兄だったモノ】の謎に満ちた物語に心を奪われ、「結末がどうなるのか知りたい」「複雑な話の順番を時系列で整理したい」といった強い思いを抱えているのではないでしょうか。
この物語は、単なるサイコホラーやミステリーという言葉では言い表せない、登場人物たちの歪んだ愛情と深いトラウマが複雑に絡み合う人間ドラマです。この記事を読みに来た方々は、おそらく以下のようなことを知りたいと考えているはずです。
- 物語が複雑で、最終的にどのような結末を迎えるのか先に知っておきたい。
- 登場人物たちの関係性や、誰が本当は何を考えているのかを整理したい。
- 衝撃的な展開が多いと聞いたので、心の準備をしてから本編を読みたい。
この記事では、そんなあなたの知りたいという気持ちに応えるため、【兄だったモノ】の第1話から最新話までのあらすじと感想を、徹底的に解説していきます。物語の全ての謎や伏線、そして登場人物たちの心の動きを時系列で完全に把握できるのが、この記事を読む最大のメリットです。
しかし、その一方で大きなデメリットも存在します。この記事は文字通り「ネタバレの全て」です。読み進めてしまうと、この作品の醍醐味である先の読めない展開や、息を呑むような衝撃的な事実が明らかになる瞬間のスリルを、完全に失うことになります。もし、あなたがまだ作品を読んでおらず、新鮮な驚きと共に物語を楽しみたいと考えているのであれば、このページを閉じることを強くお勧めします。
その覚悟の上で、それでも真実を知りたいと願う方だけ、この先へとお進みください。
- 【兄だったモノ】ってどんなあらすじ?世界観や登場人物を解説(ネタバレあり)
- 【兄だったモノ】最終回まで全話ネタバレ。あらすじ解説
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【兄だったモノ】ってどんなあらすじ?世界観や登場人物を解説(ネタバレあり)
どんなあらすじ?世界観や設定をわかりやすく解説!
本作は、亡き兄の恋人だったという青年・聖(ひじり)と、兄の妹である主人公・鹿ノ子(かのこ)の関係性を軸に描かれる、サイコホラーとヒューマンドラマが融合した物語です。
物語の序盤は、亡き兄を偲ぶ切ない恋愛譚のように見えますが、すぐにその様相は一変します。兄の死の真相、聖の謎めいた過去、そして鹿ノ子自身が抱える家族への復讐心。これらの要素が複雑に絡み合い、登場人物たちは「呪い」と呼ばれる超常的な恐怖と、人間の心の内に潜む、より根源的な狂気に苛まれていきます。
生者と死者の境界線が曖昧な世界で、登場人物たちがそれぞれのトラウマと向き合い、愛と憎しみの間で揺れ動く様が、本作の大きな魅力となっています。
主要な登場人物を紹介
- 北角 鹿ノ子(きたかど かのこ)本作の主人公である女子高生。物語当初は、両親への復讐のために、亡き兄の恋人であった聖へ意図的に近づきます。しかし、彼と行動を共にするうちに、その目的は複雑に変化していくことになります。芯が強く、一度決めたことは曲げない強い意志の持ち主です。
- 中眞 聖(なかま ひじり)鹿ノ子の亡き兄・騎一郎の恋人だった美青年。儚げで物腰の柔らかい人物ですが、その過去は多くの謎に包まれています。彼に関わる人間が次々と不幸に見舞われることから、物語の核心を握るキーパーソンとして描かれます。
- 東雲 騎一郎(しののめ きいちろう)鹿ノ子の異母兄であり、聖の亡き恋人。物語開始時点ですでに故人ですが、その存在は「呪い」として聖に取り憑き、鹿ノ子たちの前に立ちはだかります。妹思いの優しい兄であった一方、聖に対しては歪んだ愛情を抱いていました。
- 南 カンナ(みなみ かんな)騎一郎の大学時代の元恋人。常識的で面倒見の良い性格で、当初は鹿ノ子と対立しますが、やがて「聖を守る」という共通の目的のもと、最も信頼できる協力者となります。
- 藤原 頼豪(ふじわら らいごう)カンナの紹介で登場する、副業で僧侶をしているデザイナー。飄々とした性格ですが、強力な霊能力を持ち、論理的な視点から一行をサポートする頼れる存在です。
- 西迫 正義(さいさこ まさよし)聖の高校時代の元恋人。聖に対して異常な執着心を持ち、暴力を振るうなど、物語のヴィラン(悪役)の一人として登場します。しかし、彼もまた複雑な過去を抱えています。
【兄だったモノ】最終回まで全話ネタバレ。あらすじ解説
1話ネタバレはこちら
【あらすじ】
主人公の女子高生・鹿ノ子は、亡き兄・騎一郎の恋人だった男性・聖と共に、広島にある兄の墓を訪れます。兄の死に実感が持てない鹿ノ子に、聖は優しく寄り添いました。しかし、聖の家で兄の遺骨と対面した鹿ノ子は、彼が両親によって葬式への参列を拒まれていたこと、そして聖自身も末期の病で「もう先がない」ことを告白されます。物語の最後、鹿ノ子の視点に切り替わり、彼女が聖に近づいたのは両親への復讐のためであり、「理解ある妹」を演じていただけだったことが明らかになるのでした。

【感想】
最初は亡くなった兄を偲ぶ、切なくも美しい物語かと思いきや、最後の最後で全てが覆される衝撃的な第1話でした。聖さんの儚げな優しさと、鹿ノ子ちゃんの抱える底知れない憎悪の対比が鮮やかです。彼女が言う「儲け」や「怪物」とは一体何を指すのか、多くの謎を残す幕開けに、一気に物語の世界へ引きずり込まれました。
2話ネタバレはこちら
【あらすじ】
学校の友人との会話で、鹿ノ子は広島へ行く本当の理由を隠し、「好きな人に会いに行くの」と語ります。その「好きな人」を「執念深い人」と表現する彼女は、学校帰りに公衆電話から聖へ連絡し、兄の月命日に再び広島を訪れる約束を取り付けました。しかしその直後、電話の向こうから不気味な声が聞こえ、聖の背後に黒い影が現れるという怪奇現象が起こります。その夜、自宅で母が作ったオムライスを食べた鹿ノ子は、兄の好物について、母と聖の認識が異なっていることに気づき、新たな疑問を抱くことになりました。

【感想】
第1話の復讐劇から一転、まさかのホラー展開に驚きました。公衆電話のガラスに張り付く無数の手や、聖さんの背後に現れる黒い影の描写は、純粋に恐怖を感じさせます。そして、最後に提示された「オムライスの謎」。単なるホラーやサスペンスではなく、ミステリーの要素も加わり、物語の深みが一気に増したように感じます。
3話ネタバレはこちら
【あらすじ】
再び広島へ向かう新幹線の中、鹿ノ子は過去を回想します。幼い頃、兄の家で彼が金髪の女性と親密にしている姿を目撃したこと。そして、優しい兄との美しい思い出の夢が、突如としておぞましい「化け物」の姿へと変貌する悪夢。その化け物は兄の顔をしており、「俺から聖を奪るのか?」と鹿ノ子に問いかけます。この「化け物」こそ、聖に執着する兄・騎一郎の亡霊だったのです。しかし鹿ノ子は怯えることなく、亡霊に対して怒りを爆発させ、真っ向から対立する意思を見せました。

【感想】
あの黒い影の正体が、聖さんへの執着心から生まれた兄の亡霊だったとは、衝撃の展開でした。優しい兄の記憶が悪夢に変わるシーンは、本作の持つ切なさと恐ろしさを見事に表現しています。そして、その亡霊に対して一歩も引かない鹿ノ子ちゃんの気の強さ。彼女の行動原理が、単なる復讐心だけではない、もっと複雑なものであることが示唆された回でした。
4話ネタバレはこちら
【あらすじ】
広島駅で聖と再会した鹿ノ子。しかし、彼女の目には、聖の背後に常に兄の亡霊が付きまとっている姿が見えていました。穏やかな再会も束の間、鹿ノ子は聖が亡霊に襲われる凄惨な幻覚を見てしまいます。川辺を散歩中、聖がごく自然に手を差し伸べてきたその優しさに、鹿ノ子の心は大きく揺さぶられます。「…ずるいんだ!」。利用するはずの相手の純粋さに触れてしまった彼女は、心の中でそう叫ぶしかありませんでした。

【感想】
聖さんの背後に、常にあの黒い影がまとわりついている描写が秀逸で、見えている鹿ノ子ちゃんの恐怖と、何も知らずに微笑む聖さんの無邪気さの対比が、息苦しいほどの緊張感を生んでいました。そして、最後の「ずるいんだ!」というモノローグ。これは名シーンだと思います。復讐という目的が、聖さん本人に触れることで揺らいでいく。鹿ノ子ちゃんの人間らしい心の動きが、とても切なく描かれていました。
5話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖の家を訪れた鹿ノ子。しかしキッチンで、聖が包丁で自らの手を深く切りつけてしまうという惨劇が起こります。その姿を見た鹿ノ子は、「守らないと この聖さんを 緑の眼をした怪物から」と、彼を兄の亡霊から守ることを強く決意します。混乱の中、玄関のチャイムが鳴り、南カンナと名乗る謎の女性が訪ねてきました。彼女は兄・東雲騎一郎の線香を上げに来たと言い、手際よく聖の手当てを始めます。その時、鹿ノ子は聖の背中に、兄の亡霊によるものと思われる不気味な痣があるのを発見するのでした。

【感想】
聖さんが手を切るシーンは、非常にショッキングで、物語の緊張感が一気に高まりました。この事件をきっかけに、鹿ノ子ちゃんの目的が「復讐」から「守護」へと明確に変わったのが印象的です。そして、南カンナと名乗る謎の女性の登場。彼女は一体何者なのか、そして聖さんの背中の痣は何を意味するのか。新たな謎が次々と提示され、目が離せない展開でした。
6話ネタバレはこちら
【あらすじ】
突如現れた南カンナは、聖が未成年である鹿ノ子を家に泊めようとしたことの非常識さを厳しく叱責し、強引に彼女をホテルへと連れ出します。そして、二人きりになったタクシーの中で、カンナは衝撃の事実を告げました。「あなた 見えてるんでしょ」「中眞くんの後ろにいた『あれ』」。鹿ノ子にしか見えていないはずだった兄の亡霊を、カンナもまた認識していたのです。さらに、彼女は自らの正体が、兄・騎一郎が大学時代に交際していた元恋人であることを明かしました。

【感想】
カンナさん、最高のキャラクターですね。常識的かつパワフルな彼女の登場で、危ういバランスで成り立っていた二人の関係に、良い意味で喝が入ったように感じます。そして、彼女も「見える」側の人だったという事実。鹿ノ子ちゃんにとって、初めて秘密を共有できる協力者が現れた瞬間であり、今後の展開に大きな希望が持てるようになりました。
7話ネタバレはこちら
【あらすじ】
ホテルでカンナは、聖が手を切ったのは兄の亡霊が突き飛ばしたからだと断言し、このままでは聖が殺されてしまうと分析します。「聖を守る」という共通の目的のもと、二人は協力関係を結びました。その後、お好み焼き屋で、カンナは兄に関する新たな事実を明かします。兄はオムライスが嫌いだっただけでなく、「食べることそのものが苦手だった」というのです。さらに、彼女は騎一郎との幸せな思い出の直後に、一方的に別れを告げられていた過去を語るのでした。

【感想】
鹿ノ子ちゃんとカンナさん、目的は違えど利害が一致し、協力関係を結ぶ展開は熱かったです。そして、深まる騎一郎の謎。「食べること自体が苦手だった」という新事実は、彼の人物像をより複雑なものにしています。幸せの絶頂で突然別れを告げるなど、彼の行動にはどこか破綻した危うさを感じます。物語の核心に、一歩近づいた回でした。
8話ネタバレはこちら
【あらすじ】
ホテルの一室で、カンナは鹿ノ子に「賭け」について問いただします。鹿ノ子は、貯金が尽きるまで広島に通い、聖の心を射止めようとしていることを告白しました。それは、死んでしまった兄と「正々堂々」勝負がしたいという、彼女なりの歪んだ誠実さの表れでした。一方、カンナの回想で、聖がかつて筆を折った作家であり、その度に騎一郎が彼を支えていたという過去が明かされます。聖の無意識の魅力が、実は兄の亡霊の影響ではないかと、カンナは疑いを抱くのでした。

【感想】
鹿ノ子ちゃんの「賭け」の内容が、あまりにも健気で、そして痛々しくて胸が締め付けられました。恋敵である兄の亡霊に対して、フェアに戦おうとする彼女の純粋さが、逆に危うく感じられます。そして、聖さんの過去と、カンナさんの新たな疑惑。聖さんの魅力が、彼自身のものではないかもしれない、という可能性は、物語の根幹を揺るがす恐ろしいものでした。
9話ネタバレはこちら
【あらすじ】
カンナの視点から、生前の騎一郎が妹思いの好青年だったこと、そして聖が同級生から「毒を持つ鈴蘭」と評されていたことが語られます。カンナが一人で聖の家を訪れると、聖は兄の亡霊が自分を「監視するため」にいるのだと明かしました。さらに、亡霊は聖の体を乗っ取り、カンナと直接会話をします。その様子からカンナは、聖自身が、自分に取り憑く亡霊の存在に全く気づいていないという、最も恐ろしい事実にたどり着きました。事態を重く見た彼女は、専門家らしき人物に助けを求める電話をかけます。

【感想】
聖さんが、自分を乗っ取っている亡霊に全く気づいていない、という事実にはゾッとしました。自分の意思とは関係なく、体が操られているかもしれない恐怖。そして、亡霊の目的が「監視」というのも不気味です。一体何を監視しているというのでしょうか。最後のカンナさんの電話が、今後の反撃の狼煙になることを期待させます。
9.5話ネタバレはこちら
【あらすじ】
今回は、兄・騎一郎が生きていた頃の、聖との思い出を描く特別編です。病に侵されていた騎一郎は、自らの死期を悟りながらも、「思い出がほしい」と聖を真冬の海へ連れ出します。彼は、かつて妹の鹿ノ子を海へ連れて行った思い出を愛おしそうに語り、もう一度、今度は聖も加えた「三人で」海が見たかったのだと、叶わぬ願いを口にするのでした。一人残された現在の聖は、その果たされなかった約束を思い出し、悲しい物語を想起します。

【感想】
本編の恐ろしい亡霊としての姿とは違う、人間味あふれる騎一郎の姿が描かれ、涙なしには読めないエピソードでした。こんなにも深く二人を愛していた彼が、なぜあのような呪いになってしまったのか。そのギャップが、物語の悲劇性をより一層際立たせています。美しい冬の海の情景と相まって、詩のような余韻を残す回でした。
10話ネタバレはこちら
【あらすじ】
広島での出来事を胸に秘め、日常に戻った鹿ノ子。しかし、学校の授業中に上の空になり、ついに気を失って倒れてしまいます。彼女は、自分が聖を失うかもしれないという恐怖に苛まれていたことを自覚しました。そんな彼女の前に、兄の元恋人・カンナが現れます。彼女は、この問題を解決するために「プロ」に協力を依頼したと告げました。そのプロの正体は、普段はデザイナーとして働き、副業で僧侶をしているという、一風変わった「お坊様」だったのです。

【感想】
鹿ノ子ちゃんが、ついに自分の恋心をはっきりと自覚する、重要な回でした。彼女の繊細な心の動きが、夏目漱石の『こころ』の一節と重ねられて描かれる演出が非常に巧みです。そして、満を持して登場する「プロ」の存在。デザイナー兼お坊さんという、何とも胡散臭くて魅力的なキャラクターの登場に、今後の展開への期待が一気に高まりました。
11話ネタバレはこちら
【あらすじ】
鹿ノ子とカンナは、プロの僧侶である藤原頼豪と対面します。彼は、二人の話を真摯に受け止め、「聖を救う」という目的のために協力することを約束しました。頼豪は、加害行動をする霊には何か強い「想い」があることが多いと推測します。そして、鹿ノ子たちが語る生前の騎一郎像と、呪いの暴力的な印象があまりに違うことから、「別人のようだ」と指摘。最後に彼は、「そもそも『それ』は本当に東雲騎一郎その人だったのでしょうか」と、呪いの正体そのものに根源的な疑問を投げかけました。

【感想】
新キャラクター・頼豪さん、最高です。飄々とした雰囲気ながら、物事の本質を見抜く鋭さを持っており、彼の登場で物語に論理的な視点が加わりました。そして、最後の「あれは本当に騎一郎なのか?」という問い。読者が無意識に信じていた前提を覆す、見事なクリフハンガーでした。もし、あの呪いが兄ではない別の何かだとしたら…。物語の謎が、さらに一段階深まった瞬間でした。
12話ネタバレはこちら
【あらすじ】
頼豪の問いかけに、鹿ノ子は最初に呪いを「兄」だと断定したのが自分自身であったことを自覚します。話が平行線を辿る中、頼豪はカンナに取り憑いていた小さな霊を見抜き、対処することで自らの能力を証明しました。彼の力は本物でした。しかし、それでも鹿ノ子の確信は揺らぎません。彼女は、呪いが兄とは容姿も性格も声も、何もかもが違うと認めつつも、初めて見た時に「『兄』の顔をしていた」ことは間違いない事実だと、力強く断言するのでした。

【感想】
頼豪さんの合理的な疑念に対し、鹿ノ子ちゃんが自らの「見たままの事実」で反論する展開が熱かったです。「何もかも違う、でも兄の顔をしていた」。この矛盾こそが、この怪異の核心なのだと感じさせます。単なる成りすましや思い込みではない、もっと根源的な恐怖。タイトルの「兄だったモノ」という言葉の重みが、ここにきてズシリと響いてきました。
13話ネタバレはこちら
【あらすじ】
鹿ノ子の確信を受け、頼豪はついに霊視によって呪いの正体を直接覗き見ることを決意します。彼の脳内に流れ込んできたのは、血まみれの聖を、黒い影が何度も刺し貫くという、あまりにも凄惨な光景でした。そのおぞましさに、頼豪は鼻血を流し消耗してしまいます。彼は、これが単なる霊の姿ではなく、繰り返し再生される「呪い」そのものであると結論付けました。そして、「『あれ』はもう『幽霊』ではない」「呪いそのものだ」と、二人に絶望的な事実を告げるのでした。

【感想】
頼豪さんの霊視シーンは、これまでで最も直接的で暴力的な描写であり、読んでいて戦慄しました。プロの能力者である彼が「祓えない」「駄目だ」と匙を投げるほどの相手。そして、「幽霊ではなく呪いそのもの」という結論。これは、物語のジャンルが一段階変わった瞬間のように感じます。人の想いが残った存在ならまだ救いがあったかもしれませんが、純粋な悪意の塊である「呪い」となると、もはや打つ手がない。絶望感が半端ではない回でした。
14話ネタバレはこちら
【あらすじ】
霊視の消耗から回復した頼豪は、呪いの根源に「怒り」の感情があること、そして「血まみれの聖を見下ろす兄」という不穏なビジョンを見たことを報告します。さらに、制服姿の聖と共に「サイサコ マサヨシ」という謎の人物の名前が浮かび上がっていました。その名前に手がかりを掴めずにいる中、鹿ノ子は実家にあった兄の荷物が全て広島の聖の家へ送られていたことを思い出します。彼女は兄の遺品に手がかりがあると確信し、自らの意志で広島へ行くことを決意しました。カンナはそんな彼女を「恋のキューピット」として後押しします。

【感想】
絶望的な状況の中でも、決して諦めない鹿ノ子ちゃんの強さが光る回でした。これまではどこか流されるままだった彼女が、初めて自分の意志で「広島へ行く」と決断する姿に、大きな成長を感じます。そして、そんな彼女を応援するカンナさんとの絆も美しい。「サイサコ マサヨシ」という新たな謎も提示され、物語が再び動き出す予感に満ちていました。
15話ネタバレはこちら
【あらすじ】
広島へ向かう新幹線で、鹿ノ子は偶然にも聖本人と隣り合わせになります。それはカンナの計らいでした。好きな人と一緒にいられる時間に喜びを感じつつも、事態が解決していないことに罪悪感を覚える鹿ノ子。彼女は、聖の指にはめられたままの、兄とお揃いの指輪が、法的に結ばれなかった二人を繋ぐ「唯一の鎖」なのだと痛感します。広島駅に到着し、混雑の中、聖にごく自然に手を繋がれた鹿ノ子は、それを「兄らしい行動」だと判断し、彼の行動を観察し始めるのでした。

【感想】
死出の旅のはずが、予期せぬ二人きりの道行きとなり、鹿ノ子ちゃんの恋心が揺れ動く様子が丁寧に描かれていました。罪悪感と幸福感の狭間で揺れる彼女の姿は、とても人間的で共感が持てます。最後の、手を繋ぐシーンも印象的でした。聖さんの優しさの中に、今も「兄だったモノ」の影を探してしまう。この危うい関係性が、この作品の魅力なのだと改めて感じます。
16話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖と共に兄の墓を訪れた鹿ノ子は、遺骨がないにも関わらず、墓が綺麗に手入れされていることを知ります。しかし、聖の家に着くと、彼の冷蔵庫は空っぽで、食生活が乱れきっていることが判明しました。聖が買い物に出かけた隙に、鹿ノ子は兄の遺品を探し始めます。一方、東京のカンナは独自の調査で呪いの正体に関する仮説にたどり着いていました。そして鹿ノ子は、兄の荷物の中から一冊の古いアルバムを発見。そこに写っていたのは、学生服姿の聖と、「西迫 正義(さいさこ まさよし)」という名の見知らぬ少年でした。

【感想】
鹿ノ子の広島での調査と、カンナの東京での頭脳戦が同時進行する構成が巧みでした。離れていても同じ目的に向かう二人の絆を感じます。そして、ついに明らかになった「サイサコ マサヨシ」の顔。頼豪さんの霊視と、アルバムの写真が繋がった瞬間は、ミステリーとしてのカタルシスがありました。物語の核心に、大きく近づいたことを感じさせる回です。
17話ネタバレはこちら
【あらすじ】
東京のカンナは、僧侶・頼豪に電話をかけ、自らが立てた恐るべき仮説を語ります。それは、呪いの根源が兄・騎一郎ではなく、聖自身にあるのではないか、というものでした。カンナは、学生時代の友人が聖を「鈴蘭(毒を持つ花)」と評していたこと、そして、大学時代に聖に近づいた7人もの男子学生が、彼に執着し次々とおかしくなっていった過去を明かします。兄・騎一郎もその一人であり、聖こそが、無自覚に人を狂わせる呪いの発生源なのではないか、と彼女は結論付けました。

【感想】
物語の構図が180度ひっくり返る、衝撃的な回でした。聖さんが実は被害者ではなく、周囲を不幸にする加害者側だったのかもしれない、という可能性。カンナさんの友人から語られる過去の逸話は、その仮説に恐ろしいほどの説得力を持たせています。無邪気な美貌の裏に隠された、底知れない魔性。聖というキャラクターの恐ろしさが、ここにきて一気に増しました。
18話ネタバレはこちら
【あらすじ】
広島の聖の家で、鹿ノ子は彼にオムライスを振る舞います。兄の食の好みに関する三者三様の証言について、聖は芥川龍之介の『藪の中』を例に出し、どれも真実の一面だろうと語りました。その言葉をきっかけに、鹿ノ子は幼い頃に目の当たりにした両兄の激しい夫婦喧嘩を思い出します。彼女は、兄が自分を庇ってくれていたこと、そして同時に、家庭不和の原因である自分を憎んでいたであろうことを悟るのでした。鹿ノ子が帰ろうとした矢先、聖は彼女に「泊まってって 駄目?」と引き止めます。

【感想】
『藪の中』を引用して、一つの事実がいかに多角的に見えるかを語る聖さんのシーンは、この物語のテーマそのものを表しているようで、非常に深みがありました。そして、ついに明かされた鹿ノ子ちゃんの家庭環境の劣悪さ。兄が抱えていた苦悩の根源がそこにあったこと、そして彼が妹に対して抱いていたであろう、愛と憎しみのアンビバレントな感情。あまりにも切ない真実に、胸が締め付けられます。
19話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖の家に泊まることになった鹿ノ子は、兄が使っていた部屋で眠ります。聖は、彼女を引き止めた理由を「寂しかったから」と正直に打ち明けました。その夜、鹿ノ子は夢とも現実ともつかない場所で呪いと対峙し、自分が聖にとって兄の「代用品」でしかないと悟ります。しかし、彼女はそれを受け入れ、「聖さんがそれを望むなら 私は兄を演じ通す」「私は お兄ちゃんだったモノになるわ」と、悲しい決意を固めるのでした。

【感想】
鹿ノ子ちゃんの覚悟があまりにも切なく、読んでいて胸が苦しくなりました。愛する人に必要とされるためなら、自分を捨てて、憎んでいたはずの兄の役割を演じる。それは、自己犠牲とも言える、あまりにも歪で、純粋な愛の形なのだと感じます。彼女のこの決意が、今後の物語にどのような影響を与えるのか。静かな夜に交わされた、少女の悲痛な誓いの行方を見守りたいです。
20話ネタバレはこちら
【あらすじ】
夢の中で呪いから「それがお前の愛し方か」と謎の問いを投げかけられた鹿ノ子。兄を演じる決意を固めた彼女は、翌朝、服装や言動を兄のように変えます。聖との別れ際、彼女は兄のように振る舞い、「また会いにくるよ」「聖さんは寂しがりやだから」と約束しました。鹿ノ子が去った後、一人残された聖は、「困ったねぇ……」と、これまでの彼からは想像もつかないような、不敵な笑みを浮かべるのでした。

【感想】
鹿ノ子ちゃんが決意を行動に移した、物語の大きな転換点でした。服装を変え、兄のように振る舞う彼女の姿は、健気でありながら、見ていて危うさを感じさせます。そして、何よりも衝撃だったのが、最後の聖さんの笑みです。あれは一体どういう意味なのでしょうか。彼女の行動が、彼の何かを刺激してしまったのか。これまでの被害者然とした彼のイメージが覆る、不気味なラストでした。
21話ネタバレはこちら
【あらすじ】
鹿ノ子が東京へ戻る中、カンナは独自の調査を開始し、聖の担当編集者・犬上静真と接触します。犬上は、丁寧な物腰とは裏腹に、聖に対して異常なまでの執着心と庇護欲を見せ、カンナを警戒しました。聖が休筆中であることを理由に、カンナの提案を一方的に拒絶する犬上。しかし、カンナが切り札として「西迫(さいさこ)」の名前を出すと、彼は激しく動揺するのでした。

【感想】
カンナさんの行動力と交渉術が光る回でした。そして、新キャラクター・犬上編集者の登場。彼の聖さんへの異常なまでの執着心は、彼もまた聖という「鈴蘭」の毒にあてられた一人であることを示唆しています。最後の、カンナさんが「サイサコ」の名前を切り札として使うシーンは、見事な駆け引きで、読んでいてゾクゾクしました。
22話ネタバレはこちら
【あらすじ】
「サイサコ」の名前に動揺した犬上の脳裏に、過去の記憶が蘇ります。新人編集者だった頃、聖の優しさに触れて彼に心酔していったこと。そして、ある日、聖の元恋人を名乗る西迫正義(さいさこ まさよし)と遭遇し、彼が聖に対して異常な執着を見せていたこと。一方、カンナは犬上を協力者として取り込むことに成功します。その報告を受けた頼豪は、霊視で見た「血を流す聖」の記憶が、西迫、そして兄・騎一郎の存在と結びつくのでした。

【感想】
謎の人物だった「サイサコ」のフルネームと、彼が聖さんの元恋人であったという事実が明かされ、物語が大きく動きました。そして、頼豪さんの霊視の断片が、過去の事件と繋がっていく構成が見事です。一つの暴力事件が、現在の呪いの根源となっている。そう確信させる、ミステリーとしても秀逸な回でした。
23話ネタバレはこちら
【あらすじ】
鹿ノ子は駅で、兄の面影を持つ男に声をかけ、その正体が西迫正義であることを突き止めます。兄が過去に傷だらけで帰ってきた日の記憶が蘇り、それが西迫と関係していると直感する鹿ノ子。西迫は、兄が死んだと聞いても悪びれず、これから広島の聖の元へ向かうと告げます。鹿ノ子が必死に引き止める中、彼女を心配して探していたカンナが駆けつけ、西迫と鉢合わせするのでした。頼豪は電話で、聖と西迫の過去の関係が「酷く歪なもの」であったことを、カンナにだけ伝えていました。

【感想】
ついに鹿ノ子ちゃんと西迫が直接対決。西迫の、人の心を踏みにじるような傲慢な態度には、本当に腹が立ちます。そして、カンナさんの絶妙なタイミングでの登場。これで役者は揃った、という感じですね。聖さんの元へ向かう西迫、そして広島に迫る嵐。全ての要素が破滅的な結末を予感させていて、次回の展開が恐ろしくも、待ち遠しくて仕方ありません。
24話ネタバレはこちら
【あらすじ】
鹿ノ子は、広島で兄の日記を発見したことをカンナに報告します。時間は少し遡り、鹿ノ子が聖の家に泊まった夜、聖が久しぶりに穏やかな眠りにつけたことが描かれました。しかし、鹿ノ子が帰った後、西迫が聖の家に押しかけます。西迫は聖を激しく罵倒し、彼が「弱いふりをして相手を虜にし、飽きたら捨てる」ことで騎一郎を死に追いやったのだと、一方的に非難するのでした。

【感想】
前半の穏やかなパートと、後半の暴力的なパートの対比があまりにも残酷でした。鹿ノ子ちゃんの存在が聖さんにとって救いになりつつある、と感じさせた直後の西迫の襲撃。西迫の言葉は、カンナさんが抱いていた仮説そのものであり、読者が感じていた聖さんへの疑念を、最悪の形で突きつけてきました。彼の言葉が真実なのか、それとも憎しみからくる一方的な思い込みなのか。緊迫感しかないラストでした。
25話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖の幼い頃の回想シーンが挿入されます。庭で、叔父らしき男から不気味に誘われる聖。彼の過去に性的虐待があったことが強く示唆されました。現在、西迫から暴力を受ける聖。彼が馬乗りになった瞬間、聖の背後から黒い呪いの腕が伸び、西迫を弾き飛ばします。そして呪いは、かつて生前の騎一郎が西迫に言ったのと同じ、「聖はお前のものじゃない」という言葉を口にするのでした。呪いは、聖には自分の姿が見えず、鹿ノ子のような特定の人物にしか見えないことも明かしました。

【感想】
聖さんの過去が、これほどまでに痛ましいものだったとは…。彼の歪みの根源が、幼少期のトラウマにあることが示唆され、物語にさらなる深みが加わりました。そして、呪いが聖さんを守るかのように顕現するシーン。しかし、その行動原理は「守護」というより「所有」。呪いと騎一郎の言動が一致したことで、二人の同一性がほぼ確定しましたが、なぜ聖さん本人には見えないのか、という新たな謎も生まれました。
25.5話ネタバレはこちら
【あらすじ】
今回は、本編の時系列から少し離れた、聖の日常を描く番外編です。兄の月命日に墓参りへ向かう途中、河原で一組の親子と出会う聖。父親との何気ない会話の中で、彼の「家族のおかげです」という言葉に、聖は寂しげな表情を浮かべます。聖と別れた後、父親の妻は、彼のことを見て「消えちゃいそうな人だった」と、その存在の儚さを的確に言い表すのでした。

【感想】
本編の壮絶な展開の合間に描かれた、静かで美しいエピソードでした。ごく普通の幸せな家族と触れ合うことで、逆に聖さんの孤独や、彼が失ったものの大きさが際立っています。「消えちゃいそうな人だった」という最後のセリフが、彼の危うい精神状態を象徴しているようで、胸が締め付けられます。
26話ネタバレはこちら
【あらすじ】
兄の姿をした呪いと西迫が対峙する中、呪いは自らが騎一郎本人ではなく、彼を「殺して閉じ込めた」存在であることを独白します。そのおぞましい本性を目の当たりにし、西迫は一旦退散。一人残され、恐怖に震える聖の元に、鹿ノ子から安否を気遣う電話がかかってきます。精神的に限界だった聖は、電話口で亡き恋人の名を呼び、「たすけて」と、悲痛な助けを求めるのでした。

【感想】
呪いによる「騎一郎を殺した」という独白。これは、物語の最大の謎に対する、最悪の答えでした。あれはやはり、兄本人ではなかった。そして、最後の聖さんからの電話のシーン。心身ともにボロボロの彼が、最後に助けを求めたのが、自分を殺した呪いと同じ顔を持つ「きいちろう」だったというのが、あまりにも皮肉で悲しすぎます。彼の「たすけて」という一言の重みに、胸が張り裂けそうでした。
27話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖からのSOSを受けた鹿ノ子は、「兄」として振る舞い、彼を落ち着かせ、東京に来るよう提案します。しかし、聖は電話口の鹿ノ子と、目の前にいる兄の亡霊の姿を混同し、意識が混濁した状態に陥っていました。翌朝、僧侶の頼豪がカンナに電話をかけ、これ以上関わると殺されると警告し、この一件から手を引くことを宣言。頼れる協力者を失い、鹿ノ子とカンナは絶望的な状況に追い込まれます。

【感想】
聖さんからのSOSに対し、即座に「お兄ちゃん」モードに切り替わって冷静に対処する鹿ノ子ちゃんの姿は、痛々しくも、非常に格好良かったです。しかし、頼れるプロである頼豪さんが、ついに匙を投げてしまった。プロが「殺される」とまで言う相手に、素人の彼女たちはどう立ち向かうのか。まさに四面楚歌。絶望的な状況ですが、だからこそ、二人の絆と鹿ノ子ちゃんの覚悟が、唯一の希望の光のように感じられました。
28話ネタバレはこちら
【あらすじ】
頼豪からの警告を受けながらも、カンナは事件に関わり続けることを決意します。その理由は、元恋人である騎一郎が、聖と心から幸せそうにしていた、その記憶を守るためでした。翌朝、頼豪がカンナの元を訪れ、昨夜を境に呪いの気配が完全に消え失せたことを報告します。しかし、それは成仏などではなく、「存在理由を失って消滅した」かのようだと。彼は「嵐の予感がします」と不吉な未来を警告し、物語は、聖の家で血が滴り落ちる不気味なシーンで幕を閉じました。

【感想】
カンナさんが戦う理由が、元カレへの未練ではなく、彼が最後に手に入れた「幸せ」の記憶を守るためだった、という告白には胸が熱くなりました。そして、「呪いの気配が消えた」という衝撃の事実。一瞬事態が好転したかと思いきや、頼豪さんの「嵐の予感」という言葉と、最後の血の描写で、一気に突き落とされました。静かな雰囲気の中、じわじわと恐怖を煽る演出が見事な回でした。
29話ネタバレはこちら
【あらすじ】
カンナと頼豪は、鹿ノ子の両親が彼女の広島行きに無関心であることが不自然だと気づきます。カンナは、生前の騎一郎が「家を出たら『あの人』に鹿ノ子が殺されちまう」と語っていたことを思い出しました。一方、広島へ向かう前に自宅へ戻った鹿ノ子は、両親が兄の遺影を前に彼を罵倒している場面を目撃。そして、帰宅した彼女に気づいた父が、無言で手を振り上げるという、不穏な場面で物語は終わります。

【感想】
これまで断片的にしか描かれなかった、鹿ノ子ちゃんの家庭環境の地獄が、はっきりと示された回でした。亡くなった息子を罵る両親の姿は、異常としか言いようがありません。そして、兄・騎一郎が家を出なかった理由。「鹿ノ子が殺されるから」。彼は、両親という怪物から、たった一人で妹を守り続けていたのですね。その事実に、涙が出そうになりました。
30話ネタバレはこちら
【あらすじ】
父は意外にも穏やかに鹿ノ子に接し、出張へと出かけていきます。しかし、母は精神的に不安定なままでした。家から逃げるように駅へ向かった鹿ノ子は、そこで偶然、顔に傷を負った聖と再会します。彼は、心配した編集者の犬上が手配したホテルに泊まるために東京に来ていたのです。聖は、家に帰りたくないであろう鹿ノ子の心を見透かすように、「一緒に泊まる?」と優しく誘うのでした。

【感想】
お父さんの静かな狂気が、逆にこの家庭の異常さを際立たせていて、背筋が凍りました。そんな地獄から逃げ出した先での、聖さんとの再会。しかし、彼の顔の傷が昨夜の惨劇を物語っています。最後の「一緒に泊まる?」という誘いは、弱った彼の純粋な願いなのか、それとも彼の中の「何か」が彼女を誘い込もうとしているのか。「リリスの誘惑」というタイトル通り、甘く危険な展開に目が離せません。
31話ネタバレはこちら
【あらすじ】
編集部では、犬上が鹿ノ子のホテル代まで経費で手配しようとし、上司と対立していました。彼は鹿ノ子を聖の「家族」だと主張し、自らの正義を貫こうとします。一方、ホテルの一室で、聖は西迫との過去を語り始めますが、精神的な限界から鹿ノ子の前で泣き崩れてしまいました。彼を抱きしめる鹿ノ子。意識が朦朧とする中で、聖は「鹿ノ子ちゃんには 見えとったん?」「騎一郎?」と、核心を突く問いを投げかけるのでした。

【感想】
犬上さんの行動は常軌を逸しているかもしれませんが、彼の「僕はご家族だと思っています」という言葉には、歪んでいながらも、聖を想う強い気持ちが感じられました。そして、ついに泣き崩れてしまった聖さん。彼の弱い部分に触れた鹿ノ子ちゃんの母性が、とても美しく描かれています。最後の聖さんの問いかけは、あまりにも残酷で、切ない。彼は、鹿ノ子ちゃんの向こうに、本当に騎一郎の姿を見ていたのでしょうか。
32話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖の問いに、鹿ノ子は兄を演じることをやめ、自分の言葉で向き合うことを決意します。しかし、聖の口から語られたのは、衝撃の告白でした。彼は、呪いの存在に気づきながらも、兄を独占したいがために「見えないふり」をしていた、と。そして、自分が騎一郎を家に縛り付け、魂を「殺した」のだと罪の意識を吐露します。彼は、自分が騎一郎にとって鹿ノ子の「愛の代用品」でしかなかったと信じており、「『俺』のこと好きになってくれる?」と問いかけながら、鹿ノ子にキスをするのでした。

【感想】
あまりにも苦しく、そしてあまりにも切ない告白の連続でした。「俺が騎一郎を殺した」という叫びは、彼の抱えてきた罪悪感の重さを物語っています。そして、この物語に登場する人物が、誰もが誰かの代わりを求め、誰かの代わりを演じているという歪な構造。その中心にいた聖さんの苦しみは計り知れません。最後のキスシーンは、愛情表現ではなく、救いを求める悲痛な叫びそのものでした。
33話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖とのキスにより、鹿ノ子の心は激しく動揺します。聖を傷つけた男たちへの怒りに満ちたその時、彼女の意識は、突如として『不思議の国のアリス』のような奇妙な世界へと迷い込みました。そこでは、聖の上半身が料理として美しく盛り付けられ、動物の仮面を被った者たちが、一斉にナイフとフォークを突き立てていたのです。悪夢から覚め、恐怖に震える鹿ノ子に対し、聖は驚いたような表情を浮かべていました。

【感想】
これまでのホラー展開とは一線を画す、芸術的で、悪夢のようなシーンでした。聖さんが、彼に関わってきた人間たちによって、いかに「消費」され、「食い物にされてきた」か。その比喩表現として、これ以上ないほど的確で、残酷な描写です。鹿ノ子ちゃんの精神が、ついに聖さんの抱える闇の深淵に触れてしまった。物語が新たなステージに進んだことを感じさせます。
34話ネタバレはこちら
【あらすじ】
ホテルで一夜を過ごした二人。聖は、鹿ノ子の体を気遣い、一線は越えませんでした。翌朝、聖は「またね」という言葉と自らの電話番号を記したメモを残して姿を消します。彼との直接的な繋がりができたことに幸福を感じながら、鹿ノ子は朝食のために一軒のパン屋に入りました。しかし、そのパン屋で、兄と聖を苦しめた元凶である西迫正義と、最悪の再会を果たしてしまうのでした。

【感想】
前半の甘く切ない雰囲気と、ラストの突き落とされるような絶望感の落差が凄まじい回でした。聖さんの優しい拒絶、そして朝のメモ。二人の心の距離が確実に縮まったと感じた矢先の、西迫の登場。天国から地獄とは、まさにこのことでしょう。鹿ノ子ちゃんの束の間の幸せを、悪魔が待ち構えていたかのような、悪意に満ちた引きでした。
35話ネタバレはこちら
【あらすじ】
パン屋で西迫と遭遇した鹿ノ子は、聖を傷つけたのではないかと激しく問い詰め、後日改めて二人で話す約束を取り付けます。場面は遡り、西迫の襲撃直後。編集者の犬上が聖の家に駆けつけ、傷ついた彼の姿を発見していました。犬上にとって聖は、新人時代に自分を救ってくれた恩人であり、彼の聖への献身は、もはや崇拝の域に達していたのです。「僕が先生を守ってみせる」と、彼は固く誓うのでした。

【感想】
恐ろしい西迫を前に、一歩も引かない鹿ノ子ちゃんの強さに痺れました。彼女はもう、守られるだけの少女ではありません。そして、犬上さんの過去。彼の聖さんへの異常なまでの執着が、純粋な感謝と尊敬から始まっていたことが分かり、彼のキャラクターに深みが増しました。三者三様の形で聖さんを守ろうとする人々。複雑に絡み合った人間関係から目が離せません。
36話ネタバレはこちら
【あらすじ】
カンナは、大学時代の同級生・北斗と再会します。回想シーンで、北斗が聖の「手口」を分析していました。彼は、弱っている人間がかけて欲しい言葉を的確に囁き、虜にするのが恐ろしく上手い、と。聖に惹かれるのは、自己肯定感の低い人間ばかり。そして、騎一郎は、自力で立ち直れる人間は聖に「必要ない」と語っていました。北斗は、聖が相手を完全に堕とした瞬間に、まるで復讐でもするように冷たい目で見放す姿を目撃していたのです。

【感想】
聖さんの人物像が根底から覆される、戦慄の回でした。彼は無自覚な魔性ではなく、もっと狡猾で、悪意に近い何かを持っているのかもしれない。「復讐でもしてるみたい」という北斗さんの言葉。幼い頃に受けた虐待の復讐として、彼は無意識に、自分に近づく人間を壊し続けているのでしょうか。彼自身もまた、巨大な悲劇の被害者なのかもしれません。
37話ネタバレはこちら
【あらすじ】
北斗から聞いた聖の本性に、カンナは騎一郎との別れの日の記憶を重ね合わせます。北斗は、聖がセックス依存症ではないかという噂と、その原因が家族から正常な愛情を与えられなかったことにある可能性を指摘しました。その言葉をきっかけに、カンナは全てのピースが繋がったことに気づきます。聖に惹かれる者、そして騎一郎自身もまた、「愛情に飢えた目」をしていたこと。全ての元凶は、聖ではなく、騎一郎と鹿ノ子の家庭である「東雲家」にある。カンナはその恐るべき結論に至るのでした。

【感想】
これまでの謎が、カンナさんの思考を通じて一つの結論へと収束していく様は、読んでいて鳥肌が立ちました。「騎一郎も同じ目をしていた」。彼は聖さんの被害者ではなく、同じ傷を持つ共依存の相手だった。だとすれば、あの呪いは一体何なのか。物語の根源的な謎が、東雲家に隠された「秘密」へと絞られていく、見事なミステリー回でした。
38話ネタバレはこちら
【あらすじ】
鹿ノ子が待ち合わせ場所の個室に入ると、そこには西迫だけでなく、カンナと頼豪も同席していました。この会合は頼豪が仕組んだものでした。頼豪は、自らの霊能力で西迫が「義理の姉への恋」という隠された過去を抱えていることを見抜きます。図星を突かれ逆上した西迫が頼豪に襲い掛かろうとした瞬間、鹿ノ子が彼に強烈な平手打ちを見舞い、「予告通り」だと宣言。彼女は西迫に、すべての真実を話すよう迫るのでした。

【感想】
まさに「待ってました!」と快哉を叫びたくなる、痛快な回でした。鹿ノ子ちゃん、カンナさん、頼豪さんの三人が、ついにチームとして西迫と対峙する構図に胸が熱くなります。そして、鹿ノ子ちゃんの平手打ち!これまでの鬱憤を晴らすかのような、強烈で美しい一撃でした。彼女が、愛する人を守るために戦う強い女性であることを、見事に証明してくれました。
39話ネタバレはこちら
【あらすじ】
鹿ノ子の怒りの平手打ちと、核心を突く言葉に、西迫はついに崩壊します。彼の聖への仕打ちは、小学生が好きな子にちょっかいを出すのと同じ幼稚な独占欲であり、自分が見捨てられた後も聖が騎一郎を選び、最期まで添い遂げたという事実が、彼のプライドを粉々にしました。「俺は駄目で…あの男は…っ なんで…っ」。子供のように泣きじゃくる彼は、聖にだけは自分の手口が通用せず、逆に捨てられたことが許せなかったのだと告白します。物語は、幼い聖が屈託のない笑顔で彼を「正義」と呼ぶ、過去のワンシーンを映し出して幕を閉じます。

【感想】
これまで絶対的な悪役だった西迫が見せた涙に、複雑な気持ちになりました。彼の行動は許されませんが、その根底にあったのが、あまりにも人間的な嫉妬と自己嫌悪だったと知ると、彼もまた愛し方が分からなかった、一人の哀れな人間だったのかもしれません。最後の、幼い二人が親しげにしているシーンは、涙なしには見られませんでした。
40話ネタバレはこちら
【あらすじ】
物語は西迫の高校時代へと遡ります。三者面談の日、彼は「両親が仕事で忙しい」という理由で面談を欠席しようとしていました。同じく面談を欠席しようとしていたクラスメイトの中眞聖。そして、西迫が想いを寄せる義理の姉・西迫詩織。家庭の事情を抱える者同士、西迫は聖にかすかな仲間意識を感じます。しかし、彼の記憶の中の美しい義姉の姿は、おぞましい悪魔・リリスの幻影と重なるのでした。

【感想】
まさかの西迫視点での過去編でした。暴力的で胸糞の悪い男として描かれてきた彼の、意外な一面が見えて非常に興味深いです。そんな彼が、なぜ現在のような怪物になってしまったのか。その鍵を握るであろう、義姉・詩織の存在。砂糖菓子のように美しい彼女が、なぜ悪魔の姿に見えたのか。彼の告白はまだ始まったばかり。次の話が待ちきれません。
41話ネタバレはこちら
【あらすじ】
西迫の回想は続きます。雨宿りをきっかけに、二人の孤独な魂は惹かれ合いました。「家族と仲が良くない」という共通の痛みを分かち合った二人は、聖からの「おれがなぐさめてあげたいなぁ…」という言葉をきっかけに、ついに一線を超えます。その夜、西迫は初めて義姉の悪夢を見ませんでした。聖の存在が、彼の唯一の救いとなった瞬間。しかし、それは危険な共依存関係の始まりでもありました。

【感想】
孤独を抱えた少年二人が、互いの傷を舐めあうように惹かれ合っていく。その過程は、痛々しいほど純粋で、そしてあまりにも危険でした。聖さんが見せた、相手の心の隙間に入り込む巧みさ。これは、カンナの友人が語っていた「手口」そのものですね。西迫にとって聖さんは文字通り「救世主」だった。だからこそ、後に彼を失った時の絶望と憎しみが、あれほどまでに大きくなってしまったのでしょう。
42話ネタバレはこちら
【あらすじ】
西迫の告白は、聖との破局の瞬間へと至ります。友人の言葉から、聖が別の先輩と空き教室で密会していることを知った西迫。彼は教室へと乗り込みますが、そこで聖から、自分が義姉の「代用品」であったことを最初から見抜かれていた、と告げられます。西迫が「おれのこと好きじゃあなかったんか…?」と尋ねると、聖は満面の笑みで「うん!」と肯定。そして、「ざまあみろ!」と、心の底から楽しそうに、狂ったように笑い叫ぶのでした。

【感想】
あまりにも衝撃的で、後味の悪い回でした。聖さんの最後の「ざまあみろ!」という笑顔が、脳裏に焼き付いて離れません。彼は呪いに取り憑かれた被害者ではなく、彼自身の本性として、人を絶望させることを楽しんでいた。聖こそが、本当の「怪物」だった。その可能性が、ここにきて非常に濃厚になってきました。
43話ネタバレはこちら
【あらすじ】
西迫の告白から、彼もまた呪いの姿を認識できる「見える」人間であることが判明します。彼は、呪いが発した言葉が生前の騎一郎と同じだったことから、呪いの正体を騎一郎本人だと確信していました。しかし、頼豪は、西迫が聖を襲撃した日を境に、呪いの気配が完全に消滅したという事実を明かします。西迫は、呪いには実体がないため無力だと主張しますが、頼豪はそれを否定し、呪いが人の心を操り「事故」を引き起こすことで人を殺害する、より恐ろしい可能性を示唆するのでした。

【感想】
情報量が非常に多く、物語の核心にぐっと近づいた回でした。西迫さんも「見える」側の人だったという事実に加え、呪いの消滅と、その殺害方法に関する新たな仮説。呪いが消えた今、本当の恐怖が始まろうとしているのかもしれない。そんな不吉な予感に満ちています。
44話ネタバレはこちら
【あらすじ】
物語は、これまでの出来事を整理する異例の「法廷劇」の形式で幕を開けます。それぞれの証言が出揃う中、鹿ノ子は、聖が死にかけた一連の事件は、呪いが引き起こしたものではなく、すべて聖自身による自傷行為だった、という結論を述べました。その結論に納得できない西迫は、真実を問いただすため、鹿ノ子を連れて聖の元へ向かうと宣言。鹿ノ子は、たとえ自分の好きになった聖の姿が偽りだったとしても、「本当の聖」を知りたいと願い、自らの意志で同行を決意するのでした。

【感想】
冒頭の法廷劇の演出が、複雑な情報を整理しつつ、物語の異質さを際立たせる見事な手法でした。「聖の自作自演だった」という鹿ノ子ちゃんの結論は、これまでの全ての矛盾を説明しうる、最も悲しく、そして最も説得力のある答えです。彼女が、恋に恋する少女から、真実と向き合おうとする強い女性へと成長していく姿に、胸を打たれました。
45話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖のホテルへ向かう道中、西迫は自らの過去を「独り言」として語り始めます。聖と騎一郎が付き合い始めた後、聖の気を引くために、彼に日常的な暴力を振るっていたこと。そして、大学で再会した聖が、感情を持つ「人間に戻って」しまったことに、激しい嫉妬と憎しみを募らせたこと。その告白の直後、彼らの前に聖そっくりに変装した編集者の犬上が現れ、無言で西迫の背中に刃物を突き立てるのでした。

【感想】
西迫というキャラクターの悲劇性が、克明に描かれていて胸が苦しくなりました。彼の暴力は許されませんが、その根底にあったのが、あまりにも惨めな愛情の乞い方だったと知ると、彼を単純な悪役として断罪できなくなってしまいます。そして、最後の犬上の凶行。全く予想できませんでした。聖を取り巻く人間は、なぜこうも狂っていくのか。その根源にあるものの恐ろしさを、改めて感じさせられる回でした。
45.5話ネタバレはこちら
【あらすじ】
今回は物語の「幕間」として、これまでの複雑な人間関係と謎を、舞台劇のような形式で分かりやすく整理してくれる特別編です。物語の案内人と共に、この悲劇の全体像と登場人物それぞれの「役割」が示されます。主人公であるはずの鹿ノ子に「???」がついていたり、聖に至っては役割すら与えられていないたりするのが、この物語の核心であることを示唆しています。最後に案内人は、「一番恐ろしいのは誰なのでしょうね」と、読者に問いかけるのでした。

【感想】
物語の総集編のような形で、これまでの複雑な情報を一度整理してくれる、非常に親切な回でした。演劇の幕間、という形式がお洒落で、この物語全体が、一つの壮大な悲劇なのだということを改めて感じさせられます。最後の「一番恐ろしいのは誰か」という問いかけは、読者である私たち自身に投げかけられた言葉なのだと思います。
46話ネタバレはこちら
【あらすじ】
背中を刺され倒れ込む西迫。その傍らで、編集者の犬上は「見てくださいよ先生!」「悪人を刺してやった!」と狂ったように歓喜の声を上げます。彼は、自らの行為を聖を守るための英雄的な行いだと信じて疑っていませんでした。カンナが救急車を呼ぼうとしますが、頼豪は警察沙汰を避けるため、「非合法の医者」を呼ぶことを提案。意識が朦朧としながらも、西迫は「あいつに謝るまで死なねえよ」と、聖への謝罪の念を口にするのでした。

【感想】
犬上さんの狂気が本当に恐ろしかったです。「先生のため」という大義名分のもと、何の躊躇もなく人を刺す。彼の聖さんへの愛情が、もはや正常なものではないことが痛いほど伝わってきました。そんな極限状況の中、頼豪さんの冷静さと、西迫さんの最後のセリフが印象的でした。登場人物たちの業が深く絡み合う、見事な構成です。
47話ネタバレはこちら
【あらすじ】
西迫が刺された直後、消えていたはずの呪いが、西迫への激しい怒りと共に再び姿を現します。場面は病院のロビーへ。西迫の命に別状はないと分かり安堵する一行。しかし、隅で「ごめんなさい…」と繰り返す聖の姿に、カンナの怒りが爆発します。「被害者ぶらないでよ!」。その言葉をきっかけに、聖は豹変。呪いが彼の体を完全に乗っ取り、不敵な笑みを浮かべます。そして、「もっと根本的な 可哀想な子どもの話を しなくちゃね」と、自らの過去を語り始めると宣言するのでした。

【感想】
カンナさんの怒りの爆発には、読んでいてスッキリしました。彼女の言う通り、聖さんのあの態度が、周りの人間を狂わせてきたのは事実です。しかし、その後の聖さんの豹変ぶりには背筋が凍りました。あの無垢な青年が一瞬にして冷酷な支配者の顔になる。これから語られるという「可哀想な子どもの話」。それはきっと、聖という人間を形作った、悲劇の始まりなのでしょう。
48話ネタバレはこちら
【あらすじ】
西迫と犬上の処置が終わり、事態は一旦落ち着きます。しかし、聖の人格は、本来の彼と呪いの人格が不安定に入れ替わる危険な状態に陥っていました。鹿ノ子と二人きりになった聖は、過去に繰り返してきた「復讐」のような行為をもうやめたと告白します。そして、自分に取り憑く呪いが「哀しそうな顔をしている」と鹿ノ子から聞かされると、彼は彼女の手を固く握りしめ、「一緒に逃げちゃいませんか?」と、すべての過去から逃れるように提案するのでした。

【感想】
聖さんの内面の苦しみが痛いほど伝わってくる回でした。呪いの人格と本来の彼の人格が入れ替わる様は、見ていて本当に痛々しい。彼が、自分の中にいる「何か」に気づき、抗おうとしていることが分かり、救いを感じました。最後の「一緒に逃げよう」という提案は、あまりにも切実で、純粋な愛の告白のように聞こえました。
49話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖からの「一緒に逃げよう」という提案を受け入れた直後、聖は気を失って倒れてしまいます。行き場を失った鹿ノ子は、自らが「地獄」と呼ぶ実家へ、聖を連れて帰ることを決断。しかし、兄の部屋のドアが開いていることに気づき中を覗くと、そこにはいるはずのない母の姿がありました。母は、実の娘である鹿ノ子に対し、「なんで あんたが この家にいるのよ」と、冷たく言い放つのでした。

【感想】
聖さんを助けたい一心で、自らが地獄と呼ぶ実家へ彼を連れて帰る鹿ノ子ちゃんの決断には、胸を打たれました。そして、最後のシーン。ホラー映画でもなかなか見られないレベルの、最悪のタイミングでの母親の登場。兄の呪いという超常的な恐怖と、毒親という現実的な恐怖。この二つの地獄がついに交錯してしまいました。
50話ネタバレはこちら
【あらすじ】
実家に戻った鹿ノ子を、母は激しい憎悪で罵倒します。聖を「人殺し」と呼び、「騎一郎の代わりに鹿ノ子が死ねばよかった」という趣旨の恐ろしい言葉を口にしました。その言葉を受け、鹿ノ子はついに自らの秘密を告白します。彼女の本当の名前は北角鹿ノ子(きたかど かのこ)であり、父の不倫によって生まれた、騎一郎の異母妹だったのでした。

【感想】
あまりにも衝撃的な事実が立て続けに明かされ、読んでいて頭が真っ白になりました。お母さんの狂気は、もはや同情の余地を超えています。そして、鹿ノ子ちゃんの正体。これまでの全てのピースが、この一つの事実によって、恐ろしい形に繋がってしまいました。全ての元凶は、この歪んだ家族関係にあったのです。「離れ小島のロンサム・ジョージ」というタイトルが、この家族の中で孤立してきた鹿ノ子ちゃん自身を指していたことに気づき、言葉を失いました。
51話ネタバレはこちら
【あらすじ】
鹿ノ子は、自らの半生を聖に語り始めます。父の不倫相手の子供として東雲家に引き取られ、義母から虐待される日々。その暴力からいつも守ってくれたのが、半分しか血の繋がらない、優しくて完璧な兄・騎一郎でした。鹿ノ子は、そんな兄のことが大好きで、そして「吐き気がするほど大嫌いだった」と告白します。その憎しみの根源は、兄が聖に見せた、全てを投げ打つほどの激しい愛への「羨望」でした。彼女は、ただ誰かに愛されたかったのです。

【感想】
鹿ノ子ちゃんの独白があまりにも壮絶で、言葉を失いました。「兄が大好きで、大嫌いだった」。この告白は、この物語の核心に触れる、非常に重要な感情だと思います。愛と憎しみは常に表裏一体なのだと、改めて考えさせられました。彼女のこれまでの行動原理が、純粋な愛への渇望だったと知り、あまりにも切ない気持ちになりました。
52話ネタバレはこちら
【あらすじ】
鹿ノ子の告白は、聖の心に眠っていた感情を呼び覚まします。二人は地獄のような家から逃げ出し、広島へと向かいました。聖は、亡き兄・騎一郎が生前鹿ノ子と来たがっていた場所を、代わりに自分が案内すると提案します。彼は、鹿ノ子の「誰かに愛されたかった」という言葉に、自分と同じ痛みを感じ、喜びすら覚えていました。そして、旅の終わりに、聖は鹿ノ子に「俺と一緒に死んでくれない?」と、あまりにも甘く、絶望的な心中を持ちかけるのでした。

【感想】
死出の旅路だったはずの逃避行が、宮島デートへと変わっていく。この先の展開が、ただただ幸せなものであることを、心から願わずにはいられません。
53話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖と鹿ノ子は、兄の思い出の地を巡る「死出の旅」に出ます。過去のしがらみを断ち切るようにスマホを置いてきた聖は、かつて騎一郎にも心中を持ちかけ、激しく怒られた過去を明かしました。二人は旅の始まりに、「綺麗な服を着て死のう」と新しい服を買いに出かけます。その時間はどこか穏やかでした。しかし、旅支度を終え駅へと向かった二人は、そこで何か衝撃的なものを目撃するのでした。

【感想】
絶望的な状況の中にある、束の間の穏やかな時間が、逆にとても切なく、美しい回でした。「自殺願望の誘拐犯とその被害者」という聖さんの自嘲的な言葉も、二人の関係性の異常さと、その中にある確かな絆を物語っています。幸せな時間が、あまりにも儚い…。
54話ネタバレはこちら
【あらすじ】
二人が駅で見たもの、それは一人で泣いている幼い男の子でした。少年は父親から虐待を受けていると告白。鹿ノ子は警察に連れて行こうとしますが、自らも未成年誘拐と家出の当事者である矛盾を聖に突きつけられ、言葉を失います。聖は半ば自暴自棄に、少年を一緒に連れて行くことを決めてしまいました。少年は「ゴンちゃん」と名付けられますが、食事を拒否します。その夜、鹿ノ子は、いつも見えていた兄の呪いの姿が消えていることに気づくのでした。

【感想】
心中旅行という暗い旅に、まさかの迷子の子供が仲間入り。一気にロードムービーのような趣が出てきました。聖さんが、自分の状況を棚に上げてゴンちゃんを「救おう」としてしまう。その危うい正義感は、彼が抱える心の傷の深さを物語っているようです。そして、兄の呪いの不在。新たな存在であるゴンちゃんが、何か影響を与えているのでしょうか。不吉な予感に満ちた引きでした。
55話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖は、兄・騎一郎を「虫」になぞらえた悪夢にうなされます。翌朝、隣で寝ていたはずの「ゴンちゃん」の姿がどこにもありませんでした。ホテルの受付は、最初からそんな子供はいなかったと証言します。少年は幻だったのか。二人の旅は、日本神話の女神・伊邪那美が眠る「比婆山」へと向かいます。そこは、兄が生前登頂を断念した場所でした。聖と共に山頂を目指すことを、鹿ノ子は約束するのでした。

【感想】
聖さんの悪夢、そしてゴンちゃんの消失。物語は再びミステリアスな雰囲気に包まれました。最後の目的地である比婆山が、死と再生を司る女神・イザナミの墓所であるというのも、あまりにも象徴的です。二人は、ただ死ぬためではなく、何かからの再生を求めて、この山を登るのかもしれません。
56話ネタバレはこちら
【あらすじ】
比婆山を登る二人の前に、あのゴンちゃんが再び姿を現します。彼は、聖と自分には「家族が嫌い」という共通点があると語り、奇妙な共犯関係のような絆を深めていきました。しかし、鹿ノ子が聖のトラウマである「おじさん」について尋ねると、少年の態度は豹変。「一緒に死ぬなら相手のことを知っておいたほうがいいんじゃない?」と、子供とは思えぬ言葉で彼女を問い詰めます。鹿ノ子が彼の正体を問い詰めた瞬間、周囲の世界は突然、夜の闇に包まれてしまうのでした。

【感想】
ゴンちゃんの不気味さが際立つ回でした。聖さんの心の闇を当然のように代弁する姿は、もはや子供のそれではありません。彼は聖さんのトラウマが生み出した幻覚なのか、それとも消えたはずの兄の呪いが姿を変えたものなのか。最後の、世界が夜に変わるシーンは、もはや物理法則すら通用しない、彼らのルールに支配された世界に迷い込んでしまったようで、絶望的でした。
57話ネタバレはこちら
【あらすじ】
突然夜の闇に閉ざされた比婆山で、鹿ノ子はゴンちゃんにその正体を問い詰めます。少年は「好きなのにひじりのことなーんにもしらないよね」と、鹿ノ子の愛の覚悟を試すような言動を繰り返しました。鹿ノ子が「聖のことをしっかり知るべきだ」と答えた瞬間、少年は彼女を奈落へと突き落とします。鹿ノ子が落ちた先は、かつて彼女が悪夢で見た『不思議の国のアリス』のような異空間。その「奈落の国」で、彼女は呆然と佇む聖の姿を発見するのでした。

【感想】
ゴンちゃんの正体は、やはりただの子供ではありませんでした。彼の言動は、まるで聖さんの深層心理を守るゲートキーパーのようです。そして、ついに鹿ノ子ちゃんが足を踏み入れてしまった「奈落の国」。聖さんがこれまで「食い物にされてきた」過去の象徴であるその場所に、彼女は触れてしまったのです。これは、彼を救うための試練なのでしょうか。
58話ネタバレはこちら
【あらすじ】
物語は、太宰治の一節の引用から始まります。聖の心象風景である「奈落の国」で、鹿ノ子は顔を失った聖と対峙しました。彼は「誰も本当の自分を見てくれない」という絶望を告白します。それに対し鹿ノ子は、自らの醜い感情も全てさらけ出し、それでも「聖の全てを知りたい」と、本心からの愛を叫びました。その告白によって聖の心の闇は晴れ、二人は現実世界の比婆山へと帰還。悪夢から覚め、涙を流す聖の顔を、鹿ノ子は初めてはっきりと見ることができたのです。

【感想】
息を呑むほど美しく、そして感動的な回でした。顔のない聖さんの絶望と、それを溶かした鹿ノ子ちゃんの人間的で不器用な愛の告白。悪夢から覚め、初めて本当の意味で互いを見つめ合う二人の姿に、ここから彼らの本当の物語が始まるのだと確信しました。
59話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖の心の闇、「奈落の国」から生還した鹿ノ子と聖。二人が目を覚ました場所は、旅の目的地であった比婆山山頂、女神・伊邪那美の「御陵」でした。聖は昨夜の出来事を「悪い夢」としか覚えておらず、謎の少年「ゴンちゃん」も姿を消していました。聖の様子は以前とは打って変わって明るく、彼は次の目的地として宮島へ行くことを提案。死を覚悟した二人の旅は、新たな始まりを迎えようとしていました。

【感想】
悪夢のような展開から一転、希望の光が差し込むような、爽やかな読後感の回でした。二人が目覚めた場所がイザナミの御陵だったという展開は、二人の再生を象徴しているのかもしれません。そして何より、聖さんの変化。あの屈託のない笑顔は、鹿ノ子ちゃんの愛が彼の心を救ったのだと、はっきりと分かるシーンでした。
60話ネタバレはこちら
【あらすじ】
兄の思い出の地を巡る旅、次の目的地は宮島。フェリーの上で、再び謎の少年「ゴンちゃん」が現れますが、不気味な言葉を残してすぐに消え去ります。聖は、宮島が島全体が「神域」であり、霊的な存在が入り込みにくい場所だと語りました。彼は、呪いの存在を初めて自分でも認識できたことに喜びを感じ、鹿ノ子に自らの過去を語ることを決意します。鹿ノ子もまた、彼の全てを受け入れる覚悟を決めるのでした。

【感想】
いよいよ物語が最終章に突入したことを感じさせる、重要な回でした。宮島という神聖な場所を舞台に、二人が「生」と向き合おうとする構図が美しいです。そして、聖さんが自らの口で過去を語ることを決意した。ここから語られる彼の「物語」が、二人をどこへ導くのか。固唾を飲んで見守りたいと思います。
61話ネタバレはこちら
【あらすじ】
宮島の旅館の一室で、聖はついに自らの重い過去を語り始めます。物語は、彼のモノローグから始まります。ずっと死にたいと願いながら、生きる理由を探していたこと。「死ぬな」と言ってくれた騎一郎を失ったこと。水族館で井伏鱒二の『山椒魚』を引用し、自らと騎一郎の共依存的な関係をなぞらえました。そして、告白の直前、彼は過去を語る自分の「酷い顔」を鹿ノ子に見られたくないと、顔を隠すのでした。

【感想】
聖さんの告白が始まる直前の、静かな緊張感に満ちた回でした。「死ななくてもいい理由を探していた」という言葉が、あまりにも切ないです。「山椒魚」の引用も、二人の閉塞感と、憎み合いながらも離れられない関係性を見事に表現しています。これから語られる話の壮絶さを予感させる、息を呑むようなラストでした。
62話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖は、自らの壮絶な過去を語り始めます。5歳の時に両親を亡くし、母方の祖母に引き取られたこと。その後、家に来た叔父から常習的に性的虐待を受けていたこと。しかし、唯一の肉親であったはずの祖母は、その事実を見て見ぬふりをしたばかりか、「聖が誘惑した」のだと、彼を「加害者」として扱ったのです。誰にも助けを求められず、罪人の烙印を押された聖は、ゆっくりと心を壊していきました。

【感想】
息をすることすら忘れるほど、重く、苦しい回でした。聖さんの過去が、これほどまでに凄惨なものだったとは…。叔父を「蟷螂」と描く比喩表現、そして何よりも恐ろしかったのは、お祖母さんの反応です。唯一の味方に裏切られ、被害者でありながら「罪人」の烙印を押されてしまう。彼がなぜあれほどまでに歪んでしまったのか、その理由が痛いほど伝わってきました。
62.5話ネタバレはこちら
【あらすじ】
今回は、鹿ノ子の幼い頃の記憶を辿る特別編です。彼女の実母は精神的に不安定で、「馬鹿な女」だったと回想されます。ある日、鹿ノ子の父が訪れ、彼女が異母兄である騎一郎に似てきたと口にしたことが引き金となり、母は「あの子は私の子よっ」とヒステリックに叫び、鹿ノ子を突き飛ばすなど、精神的な虐待を行っていたことが明らかになります。彼女の心の傷の原風景が、この実母との関係にあったことが示唆されました。

【感想】
聖さんだけでなく、鹿ノ子ちゃんの幼少期もまた、地獄だったのですね。「騎一郎に似ている」というだけで狂ってしまう母親の姿は、読んでいて胸が痛みました。彼女が聖さんに惹かれ、兄を演じようとまでした理由の一端が、この母親との関係性にあるのではないかと感じます。誰もが被害者であり、加害者でもある。その複雑な人間模様から目が離せません。
63話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖の告白は、彼の歪んだ半生の核心へと迫ります。被害者から加害者にされた少年は、「ならばいっそ本当の加害者になってしまえ」と決意。高校時代、西迫にしたことのすべてが「ワザと」だったと明かします。彼が惹きつけ、破滅させてきた人間は皆、自分を虐待した叔父と同じ「黒髪」でした。兄・騎一郎も例外ではなかったのです。告白の翌日、聖は鹿ノ子を宮島の久久能智の聖木へと案内しますが、その帰り道、二人は派手な身なりの謎の男に声をかけられます。

【感想】
「全部ワザとだった」という聖さんの告白。これまで彼に見えていた悲劇性が、一瞬にして反転し、恐ろしい悪意として立ち現れてきました。しかし、その動機が叔父への復讐心から来ていると知ると、一概に彼を責めることもできなくなります。最後の最後で現れた胡散臭い男の登場で、穏やかだった空気が一変。嵐の前の静けさを感じさせる、不穏な引きでした。
64話ネタバレはこちら
【あらすじ】
山道で出会った謎の男・鬼頭虎次郎は、聖が作家・中眞聖であることを知っており、彼が過去のインタビューで「天涯孤独」だと語っていたことから、鹿ノ子との関係が嘘であることを見破ります。彼は聖の熱心なファンだと明かす一方、二人の間に「男女の匂いがしない」ことを指摘し、鹿ノ子の死んだ恋人の名前が「東雲騎一郎」ではないかと、核心を突く問いを投げかけるのでした。

【感想】
鬼頭虎次郎という、とんでもないトリックスターの登場で、物語が一気に加速しました。彼の言動は、一見すると軽薄ですが、その一つ一つが的確に登場人物たちの心の傷を抉り、物語の核心を突いていきます。彼が、兄のフルネームを知っていた理由とは。謎が謎を呼び、次回の展開が全く予想できません。
65話ネタバレはこちら
【あらすじ】
広島へ向かう電車の中、虎次郎は過去に聖の家を探し回るストーカーまがいの行為をしていたことを悪びれもなく語ります。彼は、鹿ノ子と騎一郎が異母兄妹であることまで見抜いた上で、「鹿ノ子クンのそれはむしろ呪いに等しい」と残酷な言葉を突きつけました。プラネタリウムに強引に同行した彼は、鹿ノ子の知らない兄の裏の顔を知っていることを匂わせ、「優しい」だけではない、「修羅」としての一面があったことを暴露するのでした。

【感想】
鬼頭虎次郎の底知れなさが存分に発揮された回でした。彼の言葉は、ある意味で真実の一端を捉えているのかもしれません。そして、最後の「騎一郎は修羅だった」という告白。これは、これまでの物語を根底から覆す、最大級の爆弾発言でした。妹の前では完璧だった兄の裏には、一体どんな顔が隠されていたというのでしょうか。
66話ネタバレはこちら
【あらすじ】
虎次郎は、初めて騎一郎と会った時のことを回想します。聖の名前を出した途端、騎一郎は「お前もあいつを奪う気か」と激昂し、虎次郎を殴りつけたのです。その時の彼は、目が血走り、尋常ではない様子でした。その時、二人の目の前に、謎の少年「ゴンちゃん」が再び姿を現します。彼は、呪いに向かって「無駄だよ」「聖にお前は見えないし聞こえない」と言い放ち、自らが聖の願いを叶える存在であることを明かします。そして、「聖が死んでくれたらそれでいい」と、残酷な宣告をするのでした。

【感想】
虎次郎の口から語られた、兄・騎一郎の暴力的な一面。聖さんが惹かれたのは、彼のこの「修羅」としての一面だったのかもしれません。そして、ゴンちゃんの正体。彼は、聖さんの願いを叶えると同時に彼の死を望む、あまりにも矛盾した恐ろしい存在です。全ての謎は、この少年の中に隠されている。そう確信させる、圧巻のラストでした。
67話ネタバレはこちら
【あらすじ】
兄との思い出の地、プラネタリウム。死を決意した二人の旅に、虎次郎が強引に同行します。二人きりになった際、虎次郎は聖が鹿ノ子の好意を利用していること、そして、この旅の目的が「心中」であることを見抜きました。「好きでもない女と心中なんて…っ」「面白い…!」「僕もそれに参加したい!」。常軌を逸した彼の提案に、聖はただ呆然とするしかありませんでした。

【感想】
鬼頭虎次郎というキャラクターの異常性が、さらに際立つ回でした。彼は、人の不幸や絶望を、最高のエンターテイメントとして楽しんでいるのでしょう。聖さんと鹿ノ子ちゃんの死出の旅が、この最悪の観客によって、どのような舞台へと変えられてしまうのか。予測不能な展開に、目が離せません。
68話ネタバレはこちら
【あらすじ】
兄の思い出の地を巡る、聖と鹿ノ子の死出の旅路。次の目的地は動物園でした。そこで聖は、井伏鱒二の小説『山椒魚』を引用し、自分が騎一郎を家に縛り付け、魂を殺してしまった「悪い山椒魚」だと告白します。彼は、騎一郎が本当に愛していたのは、妹である鹿ノ子だったと明かしました。その残酷な真実を突きつけられた鹿ノ子は、衝動的に聖を突き飛ばしてしまうのでした。

【感想】
聖さんの告白が、あまりにも痛々しく、そして美しい回でした。「騎一郎の1番は、いつだって鹿ノ子ちゃんだった」。鹿ノ子ちゃんにとって、これほど残酷な言葉はなかったでしょう。自分が焦がれた兄の愛が、ずっと自分に向けられていたと、兄を「殺した」男の口から知らされる。皮肉という言葉では片付けられない、運命の悪戯を感じます。
69話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖から突きつけられた残酷な真実。突き飛ばされた彼は、鹿ノ子に「出会ったときから大っ嫌いじゃった」と告げ、これまでの旅は「心中ごっこ」だったと切り捨てます。「汚い 触らんといて」と彼女の手を振り払い、自らが受けた性的虐待の過去を語り、鹿ノ子と自分との間にある決して埋められない断絶を突きつけました。一人残された鹿ノ子の前に謎の少年「ゴンちゃん」が現れ、彼女が「王子様にはなり得なかった!」と嘲笑うのでした。

【感想】
あまりにも残酷な回でした。聖さんの豹変ぶりと、彼が鹿ノ子ちゃんに浴びせた言葉の刃。その一つ一つが、鋭く胸に突き刺さります。彼が鹿ノ子ちゃんを拒絶したのは、本心だったのでしょうか。それとも、自分と同じ地獄に彼女を引きずり込まないための、最後の優しさだったのでしょうか。真実は、まだ闇の中です。
70話ネタバレはこちら
【あらすじ】
今回は初めて聖自身の視点から、彼の内面が語られます。彼は兄・騎一郎を苦手だと感じつつも、彼に殴られたことで初めて「愛されている」と実感したという、歪んだ過去を明かしました。その時、鹿ノ子の前に現れた「ゴンちゃん」は、聖に取り憑いていた呪いの正体が、聖自身の「死にたい」という願いが形になったものだと暴露します。一人になった聖の前には、亡き兄・騎一郎の幻影が現れるのでした。

【感想】
聖さんの視点から物語が語られたことで、彼の複雑な内面が明らかになり、非常に胸に迫る回でした。呪いの正体が、彼の自傷行為の具現化だったとは…。彼は誰よりも自分自身に殺されようとしていたのですね。川辺で騎一郎の幻と再会した聖さんの魂は、一体どこへ向かうのでしょうか。
71話ネタバレはこちら
【あらすじ】
宮島の宿で、聖はついに全ての真実を語ります。幼少期の性的虐待、それによって生まれた自己嫌悪と自殺願望。彼の無軌道な行動は全て自傷行為でした。兄・騎一郎を心から愛してしまったが故に、病気の彼を家に縛り付け、最期は彼の願いを聞き入れてその手で命を絶ったこと。そして、鹿ノ子に対しては、自分と同じ「愛に飢えた子ども」だと気づき、彼女を自分から遠ざけるために、わざと「嫌われよう」としていたこと。全ての告白を聞いた鹿ノ子は、ガラスの破片で聖に襲い掛かります。

【感想】
聖さんの口から全ての真実が語られる、あまりにも壮絶な回でした。「嫌われたかった」という告白は、あまりにも切ない、彼なりの歪んだ愛情表現でした。最後の鹿ノ子ちゃんの行動は、あまりにも重い真実を突きつけられた魂の叫びなのでしょう。二人の関係は、ついに破滅的なクライマックスを迎えてしまいました。
72話ネタバレはこちら
【あらすじ】
虎次郎の「健全な恋じゃない」という言葉を「上等よ!」と一蹴し、鹿ノ子は自らの手で聖を救うことを決意します。聖の元へ駆けつけた彼女は、「私のこと嫌いでもいい」「生きててほしい」と涙ながらに本心をぶつけました。その告白を受け、聖は井伏鱒二の『山椒魚』の初稿の結末を語ります。それは、閉じ込められた蛙が山椒魚を「怒ってはいない」と赦す、というものでした。その言葉と共に、聖の背後から巨大な山椒魚の姿をした呪いが現れ、騎一郎の魂を喰らおうとします。

【感想】
鹿ノ子ちゃんの覚悟と、聖さんの最後の告白が胸を打つ、感動的な回でした。「生きててほしい」という叫びは、彼女の魂からの祈りそのものです。そして、聖さんが語った『山椒魚』の結末。「別に怒ってはいないんだ」。それは、騎一郎に対する、聖さんなりの最大限の赦しであり、別れの言葉だったのでしょう。あまりにも美しく、そして残酷なカタルシスに、ただただ打ちのめされました。
73話ネタバレはこちら
【あらすじ】
聖は、自分に取り憑いていた呪いの正体が、兄の亡霊ではなく、自らの罪悪感が生み出した「トゥルパ」であると悟ります。呪いが騎一郎の魂(ゴンちゃん)を喰らおうとしたその瞬間、カンナ、頼豪、西迫、犬上がその場に駆けつけました。頼豪は、呪いの正体を、聖の強い感情が実体化した「トゥルパ」であると見抜き、さらに、謎の少年「ゴンちゃん」こそが、本物の東雲騎一郎の魂であるという衝撃の仮説を語るのでした。

【感想】
これまでの全ての謎が、一本の線として繋がる、圧巻の回でした。呪いの正体が、聖さん自身の罪悪感が生み出した怪物だったとは…。そして、ゴンちゃんが本物の騎一郎の魂だったというのも衝撃です。全ての役者が揃い、全ての謎が明かされた今、この物語は一体どんな結末を迎えるのか。最終回が近いことを予感させます。
74話ネタバレはこちら
【あらすじ】
宮島での死闘を終え、一行は東京へと帰還します。刺された西迫は通院生活に。聖の保護を巡り、カンナと西迫が対立しますが、結局「元恋人」の権利を主張した西迫が彼を自宅へ連れて帰りました。鹿ノ子が日常へと戻る中、彼女の元に鬼頭虎次郎から荷物が届きます。そして、その虎次郎は、西迫の職場である映像企画会社を訪れ、彼と旧知の仲であるかのように振る舞うのでした。

【感想】
嵐の後の、不気味な静けさが漂う回でした。問題は何も解決していません。そして、最後の虎次郎の再登場!彼は一体何者で、その目的は何なのか。ただの聖さんのファンではなかった。「道化師、再び」というタイトル通り、彼が再び物語をかき乱していくのは間違いないでしょう。
75話ネタバレはこちら
【あらすじ】
西迫のオフィスを訪れた鬼頭虎次郎。彼の正体は、現代アーティストでした。彼は、聖と鹿ノ子の心中旅行をテーマにした個展を開こうとしていたと語ります。さらに虎次郎は、西迫が本当に想いを寄せているのは、聖ではなく亡くなった騎一郎の方ではないか、と指摘。一方、頼豪は、聖の呪いはもはや危険ではないが、兄・騎一郎の魂がその呪いを「食べて」おり、新たな脅威となりつつあるという仮説を立てるのでした。

【感想】
虎次郎の不気味さが頂点に達した回でした。他人の不幸を芸術として昇華させる、まさに狂気の芸術家です。そして、頼豪さんの新たな仮説。聖さんの呪いは消えつつあるが、今度は騎一郎の魂が、新たな怪物になろうとしている。この展開には本当に鳥肌が立ちました。悪意が形を変えて受け継がれていく、呪いの連鎖から目が離せません。
76話ネタバレはこちら
【あらすじ】
西迫の家で一人療養していた聖の元に、非通知の電話がかかってきます。その直後、何者かが激しく玄関のドアを叩き始めました。聖は、その訪問者が人ならざる者であると直感し恐怖します。しかし、ドアを開けてしまった彼の前に、亡くなったはずの恋人・騎一郎が、生前と変わらぬ穏やかな笑顔で現れ、「ただいま」と告げるのでした。

【感想】
じわじわと精神を追い詰めてくるような、上質なジャパニーズホラーの趣がある回でした。最後の騎一郎の登場シーンは、その穏やかさが逆に不気味でなりませんでした。あれは本物の騎一郎の魂なのか、それとも聖の罪悪感が見せる幻覚か。「荒野の誘惑」というタイトル通り、一人きりで心の荒野を彷徨う聖の前に現れた甘い誘惑に、彼は抗うことができるのでしょうか。
77話ネタバレはこちら
【あらすじ】
鹿ノ子は、友人からスマホを借り、聖との連絡手段を確保しようとします。しかし、カンナからの電話で、頼豪が倒れたこと、そして聖と連絡が取れないことを知らされました。その頃、一人海辺に佇む聖の前には、亡き兄・騎一郎の幻影が現れます。生前のように優しく振る舞う兄の幻影に、聖の精神は現実との境界線を失い、甘い地獄へと堕ちていくのでした。「嬉しいなぁ!」と、彼は心の底からその幸福を噛み締めていました。

【感想】
聖さんの精神が、いよいよ限界に達していることが描かれた、非常に痛々しい回でした。彼が見ている、優しくて穏やかな騎一郎の幻影。それは、これまでの凶暴な呪いとは全く違うからこそ、余計に恐ろしい。彼の魂が、兄の幻影によって黄泉の国へと連れ去られてしまう。「プロセルピナの略奪」というタイトルが、この状況を見事に表しています。
78話ネタバレはこちら
【あらすじ】
鬼頭虎次郎からの「健全な恋じゃない」という言葉を受けながらも、鹿ノ子は自らの意志を貫き、聖を救い出すことを固く決意しました。一方その頃、聖の精神は、亡き兄・騎一郎と幼い頃の鹿ノ子と共に海辺で過ごすという、あまりにも幸福な幻覚の中にありました。しかし、現実世界では、鹿ノ子が駆けつけた西迫の部屋から聖の姿は消えており、床には指輪だけが残されていたのです。そして、聖が見ていた幻覚の真相が明らかになります。彼の隣にいたのは兄ではなく、謎の少年「ゴンちゃん」でした。ゴンちゃんは聖を「騎一郎」と呼び、聖もまた、それを受け入れたのでした。彼の魂が、兄のものと入れ替わってしまった可能性が強く示唆されます。

【感想】
聖が見ていた、あの幸せな海辺の光景。死を望んでいた彼がようやく手に入れた偽りの幸福は、美しければ美しいほど、彼の置かれた状況の悲惨さを際立たせており、読んでいて胸が張り裂けそうでした。そして、最後の衝撃的な展開。聖の隣にいたのがゴンちゃんであり、彼が聖を「騎一郎」と呼ぶ。これは一体どういうことなのでしょうか。ゴンちゃんが本物の騎一郎の魂で、聖の魂と入れ替わろうとしているのか。それとも、聖自身が現実から逃れるため、「騎一郎」になることを選んだのか。変わり果ててしまった彼を、鹿ノ子は救うことができるのでしょうか。物語の最終局面から目が離せません。
78.5話ネタバレはこちら
【あらすじ】
今回は、聖の担当編集者・犬上の視点から、彼と聖の出会いを描く特別編です。犬上は、初めて会った聖の美しさと優しさに強く惹かれ、彼を「神様のような人」だと崇拝するようになります。聖がスランプに陥った際も献身的に支え続けますが、ある日、聖の家から自分以外の男の声が聞こえてきたことに、強い不安と嫉妬を覚えるのでした。物語は、犬上の「憐れな男!」という、意味深な心の叫びで締めくくられます。

【感想】
犬上さんがなぜあれほどまでに聖さんに執着するのか、その理由が痛いほど伝わってくる回でした。彼にとって聖さんは、もはや担当作家ではなく、守るべき神であり、自らの存在意義そのものだったのでしょう。彼の純粋な崇拝が、いかにして狂気的な独占欲へと変貌していったのか。その過程を垣間見たような気がして、背筋が寒くなりました。
79話ネタバレはこちら
【あらすじ】
物語の冒頭で、登場人物たちがそれぞれに抱く、矛盾した「東雲騎一郎」像が語られます。頼豪は、聖に起きていた超常現象が、聖を殺そうとする呪い(トゥルパ)と、彼を助けようとする兄・騎一郎の魂(ゴンちゃん)の、二つの存在が干渉し合った結果であるという仮説を立てました。鹿ノ子は、聖を救うためにはまず兄の真実を知る必要があると決意。頼豪はそれを後押しし、一行は全ての謎を解き明かすため、物語の始まりの地である広島へと向かうことを宣言するのでした。

【感想】
これまでの全ての謎と伏線が、一つの大きな流れに収束していく、圧巻の構成でした。頼豪さんの仮説には、なるほどと膝を打ちます。そして、鹿ノ子ちゃんの決意と、頼豪さんの「広島へ!」という宣言には胸が熱くなりました。最終決戦の幕開けを告げる、最高の引きです。
80話ネタバレはこちら
【あらすじ】
広島へ向かう新幹線の中、鹿ノ子たちは兄・騎一郎が遺した日記を読み進めます。そこには、鹿ノ子への純粋な愛情と、聖への歪んだ支配欲、そして自らの暴力性への苦悩が綴られていました。彼は、聖に自分自身を投影し、彼を支配することで自らの孤独を埋めようとしていたのです。そして、死期を悟った彼は、「俺は化け物になろう 聖のために」「俺のために聖は人殺しになってくれるだろうか」と、聖に自分を殺させることで、永遠に彼の心に残り続けようと画策していました。

【感想】
兄・騎一郎の独白という形で、彼の苦悩と狂気が痛いほど伝わってきました。彼の死が、事故や病死ではなく、聖を共犯者にするための仕組まれた「自殺」だったとは…。この物語の全ての謎を解き明かす、最悪の答えでした。「塩の柱」というタイトル通り、過去に囚われた者は決して前に進めない。その悲劇性を改めて感じさせられます。
81話ネタバレはこちら
【あらすじ】
広島へ向かう新幹線の中で、西迫は聖への未だ消えない愛情を鹿ノ子に告白しました。一方、鹿ノ子は兄・騎一郎が自分を愛していたという言葉と、彼の過去の行動との間に矛盾を感じ、その真意に疑問を抱き始めます。広島駅に到着した一行でしたが、そこで合流したカンナの様子に異変が起こり、鹿ノ子の目には、信頼していたはずの彼女が異形の化け物のように映っていました。

【感想】
これまで暴力的だった西迫が見せた人間臭い告白に、キャラクターの深みを感じました。そして、ラストのカンナの変貌。頼れる協力者が、実は最も恐ろしい敵だったのかもしれないという展開は、最終決戦の地・広島で何が起ころうとしているのか、読者の不安を極限まで煽る、見事な引きだったと思います。
82話ネタバレはこちら
【あらすじ】
頼豪は、以前聖を霊視した際に繋がった精神的なチャンネルを使い、彼が直接的な危険には晒されていないことを確認しました。聖の家に着いた一行は手がかりを探すため、西迫が二階、鹿ノ子とカンナが一階へと二手に分かれて捜索を開始します。二階へ向かった西迫は歪んだ廊下で得体の知れない黒い影に遭遇し、一方、一階では鹿ノ子が目の前のカンナが偽物であることを見破りました。鹿ノ子から正体を問われた偽物のカンナは、動じることなく「あんた誰?」と不気味に問い返すのでした。

【感想】
静かな家の中でじわじわと恐怖が迫ってくる、王道のホラー演出が光る回でした。特に、鹿ノ子が偽カンナの正体を見破るシーンの緊張感は凄まじいです。問い詰めたはずが、逆に「あんた誰?」と問い返される。常識が通用しない相手の不気味さに、背筋が凍りました。本物のカンナはどこへ消えたのか、謎がさらに深まります。
83話ネタバレはこちら
【あらすじ】
一階で偽物のカンナと対峙した鹿ノ子は、相手の言動の矛盾を突き、その正体を暴きました。同時刻、二階にいた西迫は、亡き義姉の亡霊と遭遇し、過去のトラウマによって精神的に追い詰められてしまいます。偽物は、聖が兄・騎一郎の元へ行ったことが、彼にとっての「幸福」であり「ハッピーエンド」なのだと鹿ノ子に告げました。鹿ノ子の怒りと悲しみに対し、偽物はその姿を聖や異形の怪物へと変化させながら、愛の言葉を囁き、彼女を精神的に追い詰めるのでした。

【感想】
偽物の精神攻撃が、あまりにも陰湿で悪質でした。人の心を弄び、最もえぐられたくない傷を的確に攻撃してくる。そのやり方には、底知れない悪意を感じます。西迫の過去の悲劇と、鹿ノ子に突きつけられた残酷な「ハッピーエンド」。二つの場所で同時に進む絶望的な展開に、ただただ息を呑むばかりでした。
84話ネタバレはこちら
【あらすじ】
偽物は、鹿ノ子の行動を「愛されないことへの嫉妬」だと罵倒しますが、鹿ノ子はそれに屈しませんでした。彼女は、聖の醜さや弱さも含めた全てを愛し、「絶対に 取り返す」という強い覚悟を偽物に叩きつけます。場面は切り替わり、西迫の過去のトラウマが描かれました。そこには、義姉だけでなく、兄・騎一郎も深く関わっています。悪夢から覚めた西迫は、物置で兄・騎一郎が遺した「もう一冊の日記」を発見し、物語は新たな謎を迎えました。

【感想】
鹿ノ子の覚醒には、読んでいて鳥肌が立ちました。「醜いところも腐ったところも全部愛する」という彼女のセリフは、本作のテーマを象徴する名言だと思います。そして、最後の最後で発見された「もう一つの日記」。これは反則級の引きです。一つ目の日記で全ての謎が解けたかのように思わせておいて、さらに深い闇が隠されている。兄という人間の狂気の底が見えません。
85話ネタバレはこちら
【あらすじ】
物置で発見された日記は、兄・騎一郎が自らの罪を告白する「懺悔録」として綴られていました。西迫は日記の発見を鹿ノ子に電話で報告しますが、その通話中に、聖の幻覚を見せる強力な精神攻撃を受け、倒れてしまいます。偽物の攻撃は、西迫が持っていた聖との幸せな記憶を悪夢に変え、彼の心を苛むという残酷なものでした。日記の中で騎一郎は、この懺悔録に「相応しい読み手」がたった一人だけいると記しており、それが鹿ノ子であることを強く示唆して物語は終わります。

【感想】
希望と絶望の落差が凄まじい回でした。日記発見という一筋の光が見えた直後に、西迫が精神攻撃を受ける展開には肝が冷えました。そして、最後に明かされた、日記の「たった一人の読み手」の存在。兄は一体どんな想いで、どんな真実を、妹だけに伝えようとしていたのでしょうか。ページをめくるのが恐ろしくも、目が離せません。
86話ネタバレはこちら
【あらすじ】
回想シーンで、兄・騎一郎が聖にも隠れて、自らの内なる衝動を抑えるために日記を綴っていたことが明かされました。聖の幻影は、日記が兄の「罪の告白」であり「懺悔」であると警告しますが、鹿ノ子は真実を知るためにそれを読むことを決意します。彼女は「死んだ人は生きてる人間に干渉しちゃ駄目」と、兄の呪縛からの決別を宣言し、偽物の力を打ち破りました。ついに開かれた日記には、この物語の元凶が「嫉妬」という感情、すなわち「緑の目をした怪物」であったことが記されていました。

【感想】
鹿ノ子の精神的な成長が光る回でした。「死んだ人は生きてる人間に干渉しちゃ駄目」という彼女の言葉は、兄への決別と、自らの足で未来へ進むという力強い決意表明に感じられます。そして、最後に明かされた「緑の目をした怪物」というキーワード。嫉妬という、誰もが心の中に飼っている感情が、この物語全ての元凶だったとは。あまりにも普遍的で、だからこそ恐ろしい真実だと思いました。


