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映画【OLD(オールド)】ネタバレ結末|ラストの真相と伏線を考察

ずっちー

M・ナイト・シャマラン監督が描き出す、予測不可能なワンシチュエーション・スリラー映画『OLD(オールド)』。訪れた美しいビーチで、人々が自身の人生を一日で駆け抜けてしまうという衝撃的な設定と、謎が謎を呼ぶミステリアスな展開に、その結末や隠された真相が気になっている方も多いのではないでしょうか。

この常識を超えた不思議な現象は一体なぜ起こるのか、孤立無援の状況に置かれた登場人物たちは無事に生還できるのか、多くの疑問が渦巻く作品として公開以来、様々な議論を呼んでいます。

この記事では、物語の核心に深く触れるネタバレ情報はもちろんのこと、作中に巧妙に散りばめられた伏線の詳細な考察から、なぜ賛否が大きく分かれるのかという評価のポイントまで、映画『OLD(オールド)』に関するあなたのあらゆる疑問に、徹底的に、そして多角的に答えていきます。

この記事で分かること
  • 物語の始まりから衝撃の結末までを網羅した詳細なあらすじ
  • 美しいビーチで人々が急速に老化する現象の、驚くべき人為的な真相
  • 作中に隠された数々の伏線と、それがラストでどのように回収されるかの考察
  • 本作に対する様々な角度からの評価や、具体的なレビューのポイント

映画OLD(オールド)ネタバレ|あらすじと結末

  • ビーチに“選ばれた”登場人物たちの共通点
  • 楽園から地獄へ…悪夢の1日の始まり
  • 希望は絶たれた?生存者たちの悲劇的な結末
  • ラストで暴かれる!ビーチの恐るべき“正体”とは

ビーチに“選ばれた”登場人物たちの共通点

この物語の鍵を握るのは、偶然同じビーチに集められた複数の家族や個人です。一見、無関係に見える彼らですが、実は「何らかの病気や悩みを抱えている」という共通点があります。それぞれのキャラクターが持つ背景や個性を深く知ることが、物語の恐ろしい真相を理解する上で非常に重要な鍵となります。

家族/個人登場人物特徴・抱える問題
キャパ一家ガイ父親。将来のリスクを計算する保険数理士。妻プリスカとの関係が悪化しており、この旅行を最後に離婚することを決意している。冷静さを装うが、内心では家族の崩壊に心を痛めている。
プリスカ母親。博物館で展示の企画などを行う職員。腹部に小さな良性の腫瘍が見つかり、自身の健康と将来に大きな不安を抱えていることが、夫との溝を深める一因となっている。
マドックス11歳の長女。感受性豊かで歌が得意。両親の不和を敏感に感じ取っている。
トレント6歳の長男。天真爛漫で好奇心旺盛。初対面の人の名前と職業を覚えて暗号を作るのが得意という、後に物語の重要な鍵を握る特技を持つ。
チャールズ一家チャールズ父親。裕福でプライドの高い心臓外科医。仕事のストレスから精神疾患(統合失調症)を患っており、猜疑心が強く、極限状態でその症状が悪化していく。
クリスタル母親。若さと美貌に執着するモデル。カルシウム不足による低カルシウム血症を患っており、老化に対して人一倍の恐怖心を抱いている。
カーラ6歳の長女。マドックスやトレントと共にビーチで過ごすことになる。
アグネスチャールズの母親。心臓に持病があり、体調が万全ではない。
カーマイケル夫妻ジャリン夫。冷静で献身的な看護師。妻の病状を常に気にかけている。
パトリシア妻。著名な心理学者。てんかんの持病があり、発作をコントロールしながら生活している。
その他ミッドサイズ・セダン人気ラッパー。本名はブレンダン。鼻血を出しやすいなど、血液が固まりにくい血友病を患っている。

あらすじは?楽園から地獄へ…悪夢の1日の始まり

物語は、キャパ一家が家族の関係修復とは名ばかりの、離婚前最後の思い出作りとして、インターネットで見つけた格安のリゾートホテルを訪れるシーンから幕を開けます。母プリスカは自身の腫瘍という健康問題と将来への悲観から心を閉ざし、夫ガイとの間には修復困難なほどの深い溝が生まれていました。子供たちの前でも、その不穏な空気は隠しきれません。

ホテルに到着した一家は、支配人の巧みな口車に乗せられ、「限られた特別な客様だけに教える」という秘密のプライベートビーチへと招待されます。その特別感に引かれた一家が送迎車に乗り込むと、そこには同じくビーチへ向かう高慢な医師チャールズとその家族も同乗していました。不穏な空気の中、運転手(M・ナイト・シャマラン監督自身がカメオ出演)から大量の食料を渡され、一行は岩がそそり立つ不気味な渓谷を抜けていきます。

その先に広がっていたのは、息をのむほど美しいビーチでした。そこには人気ラッパーのミッドサイズ・セダンの姿もあり、子供たちはすぐに年齢の垣根を越えて打ち解け、無邪気に遊び始めます。しかし、その牧歌的で穏やかな時間は、トレントが女性の遺体を発見したことを皮切りに、悪夢へと一変するのです。

異変は連鎖的に起こります。ホテルへ助けを求めようにも携帯電話の電波は届かず、来た道を引き返そうと渓谷へ足を踏み入れると、まるで深海からの急浮上時のような凄まじい気圧の変化に襲われ、激しい頭痛と共に意識を失い、気づけばビーチへ戻されてしまいます。完全に外部から遮断された空間でパニックが広がる中、チャールズの母アグネスが心臓発作で突然息を引き取ります。さらに、目を離したほんの数時間の間に、6歳だったトレントとカーラ、11歳だったマドックスが、それぞれ数年分も急成長しているという信じがたい現実に直面します。

プリスカの腹部にあった小さな腫瘍はソフトボール大にまで急速に肥大化し、発見された遺体は瞬く間に腐敗し白骨化しました。博物館職員であるプリスカは、子供たちの成長速度と遺体の分解速度から、このビーチでは「現実世界の30分が、ここでは1年に相当する」という、恐るべき時間の法則が働いていることを突き止めます。出口のない閉鎖空間で、自らの人生が猛スピードで消費されていく恐怖。人々は極限状態の中で疑心暗鬼に陥り、互いを疑い、精神のバランスを崩し、破滅への道を突き進んでいくのです。

希望は絶たれた?生存者たちの悲劇的な結末

ビーチでの絶望的な状況は、時間の経過とともにさらに深刻化し、悪化の一途をたどります。肉体だけが急成長したトレントとカーラは、未熟な精神のまま本能に突き動かされるように関係を持ち、カーラは妊娠。そして、わずか数分で出産に至るという衝撃的な出来事が起こります。しかし、この異常な環境で生まれた赤ん坊は、急速な時間の流れに耐えることができず、すぐに息絶えてしまいました。

ビーチからの脱出を試みた人々の挑戦も、ことごとく悲劇的な最期を迎えます。泳ぎが得意なジャリンは、沖に向かって泳ぎ続けますが、時間の境界で意識を失い溺死。その無残な姿を目の当たりにした妻パトリシアも、てんかんの重篤な発作を起こして命を落とします。子供を失い錯乱状態に陥ったカーラは、警告を無視して崖を登り始めますが、やはり途中で意識を失い、岩場へ転落死してしまいました。

さらに、持病の精神疾患が悪化したチャールズが、猜疑心と被害妄想の末に完全に理性を失い、ミッドサイズ・セダンを「昔自分から物を盗んだ泥棒だ」と決めつけ、持っていたナイフで惨殺。その狂気は他の人々にも向けられます。プリスカは、夫ガイを狂気から守るため、ビーチで偶然見つけていた錆びたナイフでチャールズの身体を突き刺します。傷口から入った錆の毒素(破傷風)が急速に体内を巡り、チャールズは苦しみながら絶命しました。

長い夜が訪れ、ビーチに残されたのはキャパ一家の4人だけとなります。しかし、彼らにも容赦なく老いは訪れます。ガイは視力をほとんど失い、プリスカも聴力を失い、互いの姿も声もおぼろげになる中、これまでの人生で生まれたすれ違いやわだかまりを静かに許し合います。そして、二人は穏やかに寄り添いながら、老衰で静かに息を引き取りました。

一夜が明け、朝日が昇る頃には、マドックスとトレントは50代の姿になっていました。両親を看取り、全てを諦めかけたそのとき、トレントはポケットの中に残っていた、ホテルで友達になった支配人の甥イドリブから渡された暗号の手紙の存在を思い出すのです。

ラストで暴かれる!ビーチの恐るべき“正体”とは

トレントが最後の望みをかけて解読した暗号。そこに記されていたメッセージは、「伯父さんはサンゴが嫌い」という、一見意味不明なものでした。しかし、このメッセージこそが、脱出への唯一の道筋を示す最大のヒントだったのです。二人は、ビーチの沖合に広がるサンゴ礁が、老化を促進させる磁場から唯一逃れられる場所、つまり脱出口だと直感します。そして、残りわずかな体力を振り絞り、海中のサンゴが作り出すトンネルを必死に泳ぎ抜けていきました。

その頃、場面はリゾートホテルへと移ります。そこはリゾート施設を装った、大手製薬会社「ウォーレン」の極秘研究施設であることが衝撃的に明かされます。彼らは、ビーチを取り囲む岩壁に含まれる未知の特殊な鉱物が、細胞の成長と老化を異常な速度で促進させることを発見し、この場所を新薬の治験場として利用していたのです。

その手口は極めて非人道的でした。まず、様々な持病を持つ人々を被験者としてリストアップし、格安旅行に当選したと偽ってホテルに誘導します。そして、ホテル到着時に振る舞われるウェルカムドリンクに、それぞれの病気に対応した開発中の治験薬を混入。何も知らない被験者たちをビーチに送り込み、通常であれば何十年もかかる薬の効果や副作用のデータを、たった一日で得るという恐ろしい人体実験を繰り返していたのです。ビーチの様子は、崖の上から運転手に扮した研究員によって常に監視されていました。

研究員たちは、監視カメラからトレントとマドックスの姿が見えなくなったことから、彼らも溺死したものと判断。「73回目の治験は成功だ」と、新たな治療薬の開発が進んだことを喜び合っていました。しかし、二人は生きていました。サンゴのトンネルを奇跡的に通り抜けて生還したトレントとマドックスは、ホテルに偶然居合わせていた警察官に、ビーチで発見した他の犠牲者たちが残したノートを手渡します。

トレントの特技であった「人の名前と職業を覚える」能力がここで活かされ、彼は警察官の名前を覚えていたのです。ノートに記されていた名前が、警察のデータベース上で全員行方不明者として登録されていたことから、製薬会社の長年にわたる凶悪な犯罪が遂に発覚。支配人をはじめとする関係者は全員逮捕されます。

救助のヘリコプターに乗り込んだ二人は、失われた若さと時間を取り戻すことはできないものの、悪事を暴き、これ以上の犠牲者を出すことを防ぎました。50代の姿のまま、複雑な表情で故郷へと向かう彼らの姿で、物語は幕を閉じます。

映画OLD(オールド)ネタバレ後の感想と考察

  • 全ては序盤に仕込まれていた!巧妙な伏線回収
  • 天才か駄作か?評価が真っ二つに割れる理由
  • アイデアは最高?物語の評価を分けた致命的な点
  • シャマラン監督ファンは楽しめる?レビューの傾向
  • サンゴの意味は?作中に残された謎を徹底考察

全ては序盤に仕込まれていた!巧妙な伏線回収

M・ナイト・シャマラン監督の作品らしく、この映画は物語の序盤から、ラストのどんでん返しに繋がる巧妙な伏線がいくつも周到に張られています。一見何気ないシーンや会話が、後になって重要な意味を持ってくるのです。

招待客は全員が持病持ち

物語の核心に繋がる最大の伏線は、ビーチに招待された人々が、偶然その場に居合わせたわけではないという点です。プリスカの良性腫瘍、パトリシアのてんかん、クリスタルの低カルシウム血症、ミッドサイズ・セダンの血友病、そしてチャールズの統合失調症。描写されている主要な登場人物のほぼ全員が、何らかの特異な病気や疾患を抱えています。この共通点こそが、彼らが単なる観光客ではなく、製薬会社によって意図的に選ばれた「治験対象者(モルモット)」であることを、物語の早い段階から静かに示唆しているのです。

特製のウェルカムドリンク

ホテル到着時に、支配人の秘書から「お客様それぞれの好みに合わせてお作りしました」という言葉と共に振る舞われた、色とりどりのウェルカムドリンク。これは、単なる歓迎のもてなしではありませんでした。このドリンクこそが、それぞれの持病に合わせた開発中の治験薬を投与するための巧妙な手段だったのです。「あなただけの特別な一杯」という演出は、被験者に薬を飲んでいると気づかせず、また断らせにくくするための狡猾な罠でした。この一杯が、彼らの運命をビーチへと誘い、決定づけたのです。

イドリブの暗号

トレントがホテルで親しくなった支配人の甥、イドリブから渡された暗号の手紙。最初は子供同士の他愛のない遊びのように描かれていますが、これが後に生存の鍵を握る最重要アイテムとなります。トレントが最後に解読した「伯父さんはサンゴが嫌い」というメッセージは、脱出への唯一の活路を示していました。イドリブは、大人たちの世界で何やら怪しいことが行われていることを子供心に感じ取り、新しくできた友達であるトレントを何とかして助けようと、自分だけが知る情報を暗号にして託したと考えられます。純粋な友情が、巨大な陰謀を打ち破るきっかけとなったのです。

崖の上の監視者

ビーチでトレントがふと崖の上を見上げた際に、何かがキラリと光るのを目撃するシーンがあります。これは単なる光の反射ではなく、監視カメラのレンズが太陽光を反射したものでした。運転手に扮した研究員が、崖の上から被験者たちの様子を逐一観察し、データを記録していたのです。この伏線は、ビーチで起きていることがコントロール不能な自然現象ではなく、何者かによって管理・観察されている人為的な状況であることを、観客に早期から意識させる効果を持っています。

これらの伏線がラストで一気に線として繋がり、回収されることで、物語の全ての謎が解き明かされ、観客に大きな衝撃とカタルシスを与える巧みな構成になっています。

天才か駄作か?評価が真っ二つに割れる理由

映画『OLD(オールド)』は、その唯一無二の斬新な設定と観る者の倫理観を揺さぶる衝撃的な展開から、公開以来、観客や批評家の間で評価が大きく分かれる、まさに賛否両論の作品となっています。

肯定的な感想としては、「自分の人生が一日で終わるという設定が根源的な恐怖を煽り、最後までスクリーンから目が離せなかった」「美しいビーチというロケーションと、そこで繰り広げられる惨劇のコントラストが強烈」「ワンシチュエーションスリラーとしての閉塞感と緊張感が素晴らしい」「単なるホラーではなく、時間の尊さ、家族の絆、そして人生の儚さについて深く考えさせられた」といった声が多く見られます。特に、人生の縮図を凝縮して体験させるというアイデアの独創性や、哲学的テーマを内包している点を高く評価する意見が目立ちます。

その一方で、物語の細部に対する否定的な感想も少なくありません。「ツッコミどころが多すぎて、物語に集中できなかった」「キャラクターたちの行動原理に不自然な点が多く、感情移入しにくい」「設定に無理があり、ご都合主義的に感じられる展開がいくつかあった」といった、脚本のアラを指摘する声が挙がっています。具体的には、急速に成長した子供がなぜ大人の言語能力や性的な知識まで瞬時に獲得するのか、都合よく傷が治る一方で病気は進行するルールの曖昧さ、出産シーンの非現実性などが、しばしば議論の的となります。

このように、『OLD(オールド)』は、その大胆で独創的なアイデアを熱狂的に称賛する声と、物語の整合性やリアリティラインの欠如を批判する声とが混在しており、観る人の価値観や映画に求めるものによって、その評価が180度変わる可能性を秘めた、M・ナイト・シャマラン監督らしい挑戦的な作品であると言えるでしょう。

アイデアは最高?物語の評価を分けた致命的な点

本作の評価は、批評家や観客の間で、主に以下の点で論じられています。これらのポイントを理解することで、なぜ本作が賛否両論を巻き起こすのかがより明確になります。

評価されている点

  • 独創的で秀逸なコンセプト: 「時間が異常な速度で進むビーチ」という、誰もが根源的な恐怖と好奇心を感じるであろうアイデアそのものが、本作最大の魅力として高く評価されています。観客に「もし自分がこの絶望的な状況に陥ったらどうするだろうか」と強く考えさせる力があり、スリラーとしての設定が非常に優れています。
  • 観客の不安を煽る巧みなカメラワーク: 人物の不安や恐怖、混乱を効果的に描き出す独特のカメラワークは、シャマラン監督の卓越した手腕が光る部分です。カメラがゆっくりと回転し続けたり、意図的に重要な場面を映さなかったり、登場人物の表情や視点に極端にフォーカスすることで、観客は登場人物と同じ閉塞感と先の見えない緊張感を共有することになります。
  • 現代社会への痛烈な社会風刺: 物語のラストで明かされる大手製薬会社の非人道的な人体実験は、多くの人々の命を救うという大義名分のもとであれば、少数の犠牲は許されるのかという重い問いを投げかけます。これは、利益や効率を優先するあまり、倫理観が麻痺していく現代社会への痛烈な風刺と捉えることができます。単なるエンターテイメントとしてのホラーではなく、深い社会的なメッセージ性を含んでいる点も、本作が批評的に評価される一因です。

批判されがちな点

  • 設定の矛盾と説明不足: 物語の根幹をなす「老化」のルールに、一貫性が見られない点が最も多く指摘される部分です。例えば、生物の死体は急速に白骨化するにもかかわらず、同じ有機物であるはずの持ってきた食料は腐らない、髪や爪は「死んだ細胞だから」伸びないと説明される一方で死体は腐る、といった描写に論理的な矛盾を感じるという意見です。
  • 登場人物の行動原理の不可解さ: 極限状態に置かれていることを考慮しても、登場人物たちの行動が突飛であったり、理解しがたかったりする場面が散見されます。特に、精神科医でありながら誰よりも早く理性を失うチャールズの急激な凶暴化や、我が子を失った直後のカーラが唐突に危険な崖登りを始める行動などには、物語の都合を優先した不自然さを感じるという声があります。

これらのポイントを踏まえると、『OLD(オールド)』は、観客を惹きつける強烈なアイデアと独特の雰囲気作りには成功しているものの、物語の細部の整合性やリアリティを重視する観客からは、厳しい評価を受けやすい傾向にある作品だと言えるでしょう。

シャマラン監督ファンは楽しめる?レビューの傾向

様々な映画レビューサイトや個人のブログ、SNSなどでは、『OLD(オールド)』に対して実に多様な意見が寄せられており、その評価の幅広さが本作の特徴を物語っています。

多くのレビューで共通して言及されるのは、「強烈なアイデア一発勝負の映画」という点です。その核となるアイデアが非常に魅力的で恐ろしいため、物語の序盤から中盤にかけての「一体何が起きているんだ?」という謎とスリルに満ちた展開は、観客を強く引き込む力があると絶賛されています。しかし、その謎が解き明かされ、物語が収束していく後半の展開や結末の描き方については、意見が大きく分かれる傾向にあります。

「これぞシャマラン監督、という独特の世界観とどんでん返しが好きなファンなら間違いなく楽しめる」「どこか懐かしいB級映画の雰囲気がたまらない」といった、特定の映画ファンや監督の作風を理解している層からの好意的なレビューも散見されます。その一方で、「『シックス・センス』のような完璧な伏線回収と衝撃を期待すると、やや肩透かしを食うかもしれない」というように、監督の過去の金字塔的な代表作と比較して、脚本の練り込み不足や物足りなさを指摘する声も少なくありません。

また、ジャンルに関しても、「これは単なるホラー映画というよりは、人生の有限性や家族と過ごす時間の大切さをテーマにした、一種の哲学的ヒューマンドラマの側面が強い」といった深い解釈を示すレビューもあり、観る人が物語のどの要素に重きを置くかによって、作品の印象や満足度が大きく変わることが、数々のレビューからも伺えます。

サンゴの意味は?作中に残された謎を徹底考察

劇中ではっきりと説明されずに観客の解釈に委ねられている、いくつかの謎めいた点について、ここではさらに深く考察を掘り下げていきます。

なぜサンゴが脱出の鍵だったのか?

劇中では、ビーチを取り囲む岩に含まれる未知の特殊な鉱物が、強力な磁場のようなものを発生させ、生物の細胞分裂を異常な速度で促進させている、と説明されていました。そして、イドリブが残した暗号「伯父さんはサンゴが嫌い」が脱出の鍵となりました。ここから推測できるのは、サンゴという特定の生物、あるいはそれが形成する炭酸カルシウムの構造体が、その特殊な磁場の影響を中和、あるいは遮断する特異な性質を持っていたということです。製薬会社側も、このサンゴ礁が唯一の「穴」であることを発見・認識していたため、支配人は甥のイドリブが決してサンゴに近づかないように、日頃から「サンゴは危険だ」などと偽りの情報を言い聞かせていたのでしょう。結果として、巨大な企業の科学的支配から逃れる唯一の道が、自然界の生み出したささやかな物質であったという構図は、非常に皮肉的で示唆に富んでいます。

精神も肉体に合わせて成長するのか?

本作で最も議論を呼ぶ点の一つが、6歳だったトレントやカーラが、肉体が青年に成長すると、ごく自然に恋愛感情を抱き、性行為に至るという描写です。これについて、劇中でカーラ自身が「心も変化している」と語る象徴的な場面がありました。これは、ビーチの異常な時間の流れが、単に肉体の細胞を老化させるだけでなく、脳の発達、つまり精神的な成熟にも強制的に影響を及ぼしていることを示唆しています。本来であれば、長い年月をかけて経験や学習を通じて培われるはずの思考や感情、性的衝動などが、経験の伴わないまま、ホルモンバランスの急激な変化によって強制的に引き起こされてしまう。これは、ある意味で肉体が老いていくこと以上に恐ろしい現象であり、アイデンティティの崩壊そのものと言えるかもしれません。

なぜ食べ物は腐らなかったのか?

生物の死体がわずか数時間で白骨化するという強烈な描写がある一方で、一行がバスケットに入れて持参したサンドイッチなどの食べ物が腐る描写は一切ありませんでした。これについては明確な答えは示されていませんが、いくつかの考察が可能です。一つは、作中でトレントが推測したように、金属が磁場の影響を遮断するという仮説です。食品がアルミホイルや金属製の留め具がある容器に包まれていたため、老化の進行が遅れたのかもしれません。もう一つの可能性として、このビーチの法則が「生命活動を行っている有機物」にのみ作用するという独自のルールが存在したとも考えられます。つまり、すでに生命活動を終えている食材などは、老化の対象外だったという解釈です。しかし、最も現実的には、物語の展開をスムーズに進めるための、ある種のご都合主義的な設定(プロット・ホール)と捉えるのが妥当かもしれません。

まとめ:映画OLD(オールド)ネタバレ

この記事で詳細に解説してきた、映画『OLD(オールド)』の物語の核心と重要なポイントを、最後に改めて以下にまとめます。

  • キャパ一家は離婚前の最後の家族旅行で、あるリゾートホテルを訪れる
  • ホテルの支配人から「特別な客」として、秘密のプライベートビーチへ招待される
  • そのビーチは30分が現実世界の1年に相当する、異常な速度で時間が流れる場所だった
  • ビーチに集められた招待客は、偶然ではなく、全員が何らかの持病を持っていた
  • 子供たちはわずか数時間のうちに、心身ともに青年の姿へと急成長してしまう
  • ビーチから脱出しようとすると、謎の力によって意識を失い、必ず浜辺へ戻されてしまう
  • 極限状態の中で人々はパニックに陥り、事故や争いの末に次々と命を落としていく
  • 精神に異常をきたした医師のチャールズが凶暴化し、他の生存者を襲い始める
  • ガイとプリスカの夫妻は、人生の最期に互いを許し合い、穏やかに老衰で亡くなる
  • 最終的に生き残ったのは、50代の姿になったトレントとマドックスの姉弟だけだった
  • ホテルの少年が残した「伯父さんはサンゴが嫌い」という暗号を頼りに、サンゴ礁のトンネルから脱出に成功する
  • ビーチの恐ろしい真相は、大手製薬会社による非人道的な新薬の治験場だった
  • ホテル到着時に飲んだウェルカムドリンクに、それぞれの病気に合わせた治験薬が混ぜられていたことが判明する
  • 生還した二人の決死の告発により、製薬会社の長年にわたる悪事がすべて暴かれる
  • 失われた若さと時間は戻らないものの、二人はこれ以上の犠牲者を防ぎ、ヘリコプターで救助される
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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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