人の給与明細【朝霧みくり】の辿る結末は？ネタバレ徹底解説

第四境界が提供するARG（代替現実ゲーム）、『人の給与明細』。現実のウェブサイトやSNSを駆使して物語の謎を解き明かすこのユニークなゲームは、一枚の給与明細から始まる衝撃的な物語で、面白いと同時に怖いという評判も多く、多くのプレイヤーを引き込んでいます。

この記事では、物語の主人公である朝霧みくりの視点から、彼女のたどる運命のあらすじと、その結末に隠された衝撃的な真相について、ゲーム内の情報を基に詳細な考察を交えながら徹底的に解説します。トゥルーエンドにたどり着けずに失敗や後悔の念を抱いている方や、物語に登場する各人物の正体が気になっている方も、この記事を読めば全ての謎が解けるはずです。

人の給与明細【朝霧みくり】ネタバレ｜物語の始まり

株式会社ギビングリリーフという会社の正体

物語のすべての発端となる舞台、株式会社ギビングリリーフ。この会社は、公式サイトを見る限りでは「あなたに支援を」という崇高な企業理念を掲げ、人々のあらゆる悩みに寄り添う善良な企業のように見えます。事業内容も、買い物代行といった日常生活のサポートから、企業の経営課題を解決するビジネスコンサルティング、さらにはストーカー対策や人探しといった個人的なトラブル解決まで、極めて広範囲にわたります。

しかし、そのクリーンなイメージの裏には、深い闇が隠されています。公式サイトの「利用者の声」には、「深夜の夜逃げを手伝ってもらった」「特別なアルカリ溶液を使い、粗大ゴミを匂いまで完璧に処理してもらえた」など、明らかに尋常ではない依頼内容を示唆するレビューが紛れ込んでいます。これらの断片的な情報から、ギビングリリーフが実際には、社会の裏側で処理される非合法な依頼を専門に請け負う組織であることが浮かび上がってきます。言ってしまえば、証拠隠滅や死体の処理、そして物語の核心となる戸籍の売買まで、法に触れる行為をビジネスとして行う、極めて危険な企業なのです。

主人公の朝霧みくりは、ごく普通の高校新卒者として、このような会社の恐ろしい実態を知る由もなく入社してしまいます。そのため、彼女は自身の人生を根底から覆すほどの、悪意に満ちた事件へと巻き込まれていくことになるのです。

朝霧みくりのブログに隠された日常と異変

この物語の謎を解き明かす上で、プレイヤーにとって最も重要な情報源となるのが、主人公の朝霧みくりが日々の出来事を綴る個人のブログ「朝霧みくりの日常」です。高校を卒業し、姉の元を離れて一人暮らしを始めた彼女は、新しい環境への期待と社会人になることへの不安を、このブログに正直に記録していました。

ブログの初期、2023年4月の投稿では、「引っ越し終わりました」「初出勤！」といったタイトルと共に、同期の友人ができた喜びや、新しい仕事への意気込みが語られており、読者は彼女の純粋な人柄に触れることになります。しかし、物語が進むにつれて、記事の内容には徐々に不穏な影が差し始めます。会社の教育係である先輩社員「タミー」への不満、山梨への急な転勤、そしてテレワークを強制され外部との接触を絶たれていく様子が描かれます。

そして、最終的には「会社に殺されるかもしれない」という、彼女の身に差し迫る危機を直接的に吐露する投稿がなされます。このように、プレイヤーは彼女のブログを時系列で注意深く追っていくことで、一人の女性の日常が少しずつ、しかし確実に蝕まれていく恐怖をリアルタイムで体感し、事件の真相へと近づいていくのです。

ブログの限定記事を閲覧するためのパスワード

前述の通り、みくりのブログには、物語の核心に迫る重要な情報が隠された限定公開の記事がいくつか存在します。会社での出来事や彼女の率直な感情が記されたこれらの記事は、通常の訪問者では閲覧できず、彼女が設定したパスワードを知る者だけがアクセス可能です。

パスワードのヒントは、2023年4月16日の「パスワード設定します」と題された記事に記されています。そこには、「パスワードは『私の小さい頃のあだ名』です。私と昔から仲良い人ならわかるはず！」と書かれており、プレイヤーはこのヒントを手がかりに、彼女の過去や人間関係、そして彼女自身の発言を注意深く探る必要が出てきます。

みくりがなぜ一部の記事を限定公開にしたのか、その心理を考えると、会社の監視を恐れつつも、誰か、特にお姉ちゃんにだけは真実を知ってほしいという切実な願いがあったのかもしれません。このパスワード解除は、プレイヤーが傍観者から物語の当事者へと足を踏み入れるための最初の関門であり、この謎を解くことで、事件のより深い闇へと導かれていくのです。

パスワードの答えは幼い頃のあだ名きなこ

ブログの限定記事を解錠するためのパスワード、それは朝霧みくりの幼い頃のあだ名であった「きなこ」です。この非常に重要な情報は、皮肉にも、ギビングリリーフが自社のPR用に作成した採用説明動画の中で、みくり本人の口から明かされます。

動画の中で彼女は、過去に担当した業務の一例として「脱走した飼い猫を探す」という案件を紹介します。その際、猫の飼い主との心温まるエピソードに触れ、「実はその猫ちゃんの名前が私の昔のあだ名と一緒で勝手に親近感を感じてしまいまして」と語ります。そして、捜索中に彼女が「きなこちゃーんと」と猫に呼びかけるシーンがあることから、パスワードが「きなこ」であることが確定します。

この情報を基にブログの限定公開ページへアクセスすると、これまで隠されていたみくりの名刺の画像（メールアドレスが記載）や、教育係タミーへの具体的な不満などが明らかになります。これらの新たな情報が、次の調査ステップへの重要な足がかりとなっていくのです。

妹を救うため奔走するお姉ちゃんの正体

物語が深刻さを増す中、プレイヤーにとって最大の協力者となるのが、みくりの実の姉である「星月美香（ほしづき みか）」です。彼女は新聞記者という職業に就いており、その調査能力と行動力を駆使して、連絡が途絶えた妹の行方を独自に追っていました。

みくりとは苗字が異なりますが、これは二人の両親が亡くなった後、それぞれ別の親戚に引き取られたといった複雑な家庭の事情があったためと考えられます。彼女は妹のブログや周辺への聞き込みから、ギビングリリーフという会社の危険性をいち早く察知し、妹の給与明細を手に入れたプレイヤーに接触してきます。ゲーム内では、LINEを通じてプレイヤーとリアルタイムで情報交換を行い、的確な指示やヒントを与えてくれる、非常に頼もしい存在です。

ちなみに、みくりがブログで心の支えにしていると語った「諦めないで」という言葉は、元々、彼女が音楽家の夢を諦めて自分を大学に行かせようとしてくれた姉を励ますために使っていた言葉でした。かつて姉を支えたこの言葉が、今度は姉が絶望的な状況の中で妹を救い出すための強い原動力となる、という姉妹の深い絆が描かれています。

人の給与明細【朝霧みくり】ネタバレ｜事件の真相

物語の転換点となったアパートでの火災事故

物語の様相が一変し、単なる失踪事件ではないことが明らかになるのが、山梨県のアパート「キトノス木川」で発生した火災事故です。報道によれば、この火災で築30年を超える古い木造アパートは全焼し、焼け跡からは身元を特定できない一人の遺体が発見されたとされています。

警察の初期捜査では、タバコの不始末による失火が原因と見なされていました。このアパートには、神奈川本社から転勤を命じられた朝霧みくりが一人で暮らしており、火災発生後、彼女と一切の連絡が取れなくなったことから、当初は彼女が事故の犠牲者になったものと思われていました。

しかし、姉の星月美香やプレイヤーの調査が進むにつれて、この火災が単なる事故ではないことが判明します。ネットの掲示板には「被害者はタバコを嫌っていた」という知人の証言が書き込まれ、ギビングリリーフが反社会的勢力との繋がりを噂される企業であることも指摘されます。これらの情報から、この火災はある人物の死を社会的に偽装するため、ギビングリリーフによって巧妙に仕組まれた殺人事件であったという真相が浮かび上がってくるのです。

事件の鍵を握る指名手配犯の大朝かな子

アパート火災の真相を解明する上で、絶対に欠かせない人物が、強盗殺人事件で全国に指名手配されていた「大朝かな子」という女性です。彼女は警察の厳しい追跡から完全に逃れるため、多額の金銭と引き換えにギビングリリーフに接触し、全くの別人として生きるための戸籍を求めていました。

ギビングリリーフは彼女の依頼を受け、社会経験の浅い新入社員の朝霧みくりをターゲットに選びます。会社は業務命令としてみくりに戸籍の売却を強制し、彼女の戸籍、保険証といった個人情報をすべて大朝かな子に譲渡させました。つまり、山梨のアパートで焼死体として発見されたのは、朝霧みくり本人ではなく、彼女になりすまして生活していた大朝かな子だったのです。

さらに、この偽装工作を完璧なものにするため、大朝かな子はみくりの戸籍を手に入れた後、彼女の歯の治療記録に合わせて自身の歯を治療していました。この極めて計画的な偽装により、遺体の歯型鑑定では「朝霧みくり本人に相違ない」という結果が出てしまい、警察をも欺くことに成功したのです。

みくりを監視する教育係タミーの存在

朝霧みくりが会社で直接的な恐怖とプレッシャーを感じる最大の原因となったのが、彼女の教育係を任されていた先輩社員、「タミー」こと田廻啓介（た廻 けいすけ）です。彼は、入社したばかりのみくりに対し、「昨日頼んだ資料はまだか」などと常に高圧的な態度で接し、精神的に追い詰めていくパワハラ上司として描かれています。

しかし、彼の真の役割は、単なる教育係ではありませんでした。会社が計画している戸籍売買という重大な犯罪を円滑に進めるため、みくりが計画に気づいて逃げ出したり、外部に助けを求めたりしないように一挙手一投足を監視する「監視役」だったのです。戸籍が大朝かな子に譲渡され、みくりが社会的に「存在しない人間」となった後、彼女を会社の管理する第7東湾倉庫へ連行し監禁したのも、このタミーでした。

プレイヤーは、姉の美香から得られるヒントを基に、このタミーの社員専用ページにハッキングを試みることになります。彼のページにログインすることではじめて、みくりの監禁場所や会社の次なる計画を知ることができるのです。

タミーの座右の銘である弱肉強食の意味

タミーという人物の歪んだ人格、そしてギビングリリーフという会社の非情な体質を最も象徴するのが、「所詮この世は弱肉強食」という彼の座右の銘です。この言葉は、彼の社員専用ページにログインする際の「秘密の質問」の答えにも設定されており、彼の行動原理そのものであることが分かります。

彼にとって、会社の利益や命令は絶対的なものであり、そのためには手段を選びません。会社の計画に異を唱えたり、逆らったりする者は、容赦なく切り捨てられます。社会に出たばかりで何の力も持たない新入社員のみくりは、彼から見ればまさに捕食対象である「弱者」であり、支配し、利用し、最終的には処分する駒としてしか見なされていなかったのです。

この「弱肉強食」という言葉は、単なる一個人の思想に留まりません。力を持つ者が力のない者を徹底的に搾取し、それを是とするギビングリリーフの企業文化そのものを端的に示しています。この物語は、そうした現代社会の闇を鋭く風刺しているとも考えられます。

姉妹の絆の象徴であるギターの行方

この物語には、プレイヤーの選択と謎解きの技量によって結末が変化するマルチエンディングが採用されています。その運命の分岐点となるのが、一本のアコースティックギターの存在です。このギターは、かつて音楽家の夢を追いかけていた姉の美香が、両親の死後、妹のみくりを育てるためにその夢を諦め、生活費のために手放した、彼女の青春そのものと言える大切な品でした。

みくりは、姉が自分のために大きな犠牲を払ったことをずっと心に秘めており、危険な会社だと薄々感じながらもギビングリリーフで働き続けた最大の理由が、このギターをいつか買い戻し、姉に返すことだったのです。物語の最終局面、倉庫から救出される際、みくりは危険を顧みず「あれだけは置いていけない」と、タミーが保管していたギターを取りに戻ろうとします。

ここでプレイヤーが、火の手が迫る制限時間内にギターケースの4桁のロックナンバー（タミーのセキュリティコード）を特定できるかで結末が変わります。見事コードを突き止めることができれば、姉妹の絆の象徴であるギターを取り戻し、二人が過去を乗り越えて未来へと歩み出す、感動的なトゥルーエンドを迎えることができるのです。

人の給与明細【朝霧みくり】ネタバレまとめ

• 物語はARG『人の給与明細』の主人公、朝霧みくりの物語
• 舞台は非合法な依頼を請け負う株式会社ギビングリリーフ
• みくりのブログ「朝霧みくりの日常」が重要な手がかりとなる
• ブログの限定記事を見るにはパスワードが必要
• パスワードのヒントは「小さい頃のあだ名」
• 答えは採用動画で判明する「きなこ」
• 妹の失踪を追う姉の新聞記者「星月美香」が協力者
• 物語の転換点は山梨のアパートで起きた火災事故
• 火災の犠牲者はみくりになりすました指名手配犯「大朝かな子」
• ギビングリリーフは戸籍売買を行っていた
• 教育係の「タミー（田廻啓介）」がみくりを監視・監禁
• タミーの座右の銘は「所詮この世は弱肉強食」
• 姉妹の絆の象徴として「ギター」が登場する
• 最終局面の謎解き成功でギターを取り戻すトゥルーエンドを迎えられる
• 姉妹は無事に再会を果たし、事件は解決に向かう

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コマさん（koma）

野生のライトノベル作家

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社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》