【傷ついた心に帰る場所はない】12話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 発明品を破壊し部屋に閉じこもったベラを、ヘンリーとドミニクは最後まで理解しようとせず、その場を去りました。
  • ベラは最低限の荷物をまとめ、かつてドミニクから贈られた思い出の品を、過去と共に捨てる決意をします。
  • ジェミー軍曹が約束通り迎えに現れ、ベラの新たな門出を祝福しました。
  • その瞬間、家族からパールへの輸血を強制する脅迫めいたメッセージが立て続けに届きます。
  • ベラは一切の迷いなく全てのメッセージを削除し、ジェミー軍曹と共に、自分のための新しい人生へと力強く旅立ちました。

【傷ついた心に帰る場所はない】第12話をネタバレありでわかりやすく解説する

残された決別の証

物語は、ベラが去った後のブラウン家の邸宅から始まります。ベラの部屋を掃除していた家政婦のメアリーが、そこで見つけたものを、まるで重い罪の証拠であるかのように、神妙な面持ちで家族のもとへ運びました。彼女の手の中にあったのは、かつてドミニクがベラに愛を誓って贈った、ネックレス。そして、一枚の、あまりにも冷たい書類でした。

「それは…俺が彼女にやったネックレスだ…」。ドミニクは、それが何を意味するのかわからず、呆然と呟きます。それは、ベラからの、個人的で、感情的な繋がりを完全に断ち切るという、明確で、そして取り返しのつかない意思表示でした。

そして、父親がその書類に目を通した瞬間、彼の整えられた紳士的な仮面は剥がれ落ち、顔は屈辱と怒りで真っ赤に染まります。そこにタイプされていたのは「親子関係の解消」を求める、法的な決別の言葉。

ベラは、感情だけでなく、戸籍という社会的な繋がりさえも、完全に断ち切る覚悟だったのです。しかし、絶対的な支配者であった父親は、その反旗を「…小賢しいガキだ!我々と本気で縁が切れるとでも思っているのか!」と、侮辱と怒りの言葉で吐き捨てることしかできませんでした。

愚者の傲慢

ベラの、人生を懸けた決死の覚悟を前にしても、残された家族の態度は、あまりにも傲慢で、救いようのないほどに愚かしいものでした。

ヘンリーは、ベラの行動の全てを「またいつもの癇癪だよ。姿を消すだの、縁を切るだの…ただの手口だ」と、冷ややかに分析し、いつものことだと切り捨てます。「数日もすれば、どうせ泣きついて戻ってくるさ」。彼らは、自分たちの支配が絶対的なものであると信じて疑わず、ベラが本当に、自らの意志で、彼らのいない世界へと旅立ってしまったという現実を、全く理解できていませんでした。

母親もまた、「あの恩知らず…!戻ってきたら、今度こそ二度と逆らえないよう、徹底的に躾け直してやるわ」と、歪んだ復讐心を静かに、しかし激しく燃やします。彼らは、ベラの安否を気遣うどころか、彼女が必ず戻ってくることを前提に、次なる罰と支配の計画を練っているのです。そして父親は、「準備しよう。可愛いパールが待っている病院へ行こう」と、全ての関心を、彼らの世界の中心である、愛するパールへと戻すのでした。

聖女の仮面の下で

場面は、パールが入院している病院の一室へと移ります。そこには、病に苦しむか弱い少女の姿はありませんでした。いたのは、ベッドの上でリラックスし、誰かと電話をしながら、退屈そうに、そして心の底から忌々しそうに、長年隠し続けてきた本音を漏らす、一人の悪魔でした。

「正直、もう騙し続けるのも疲れるわ。何年もよ?気絶するふり、階段から落ちるふり…。あのクソ女(ベラ)に、まだ献血できる血が残ってたなんて驚きだけどね。あの子、見かけによらず頑丈なのよ」

その言葉は、彼女のこれまでの人生が、全ては家族の愛情と関心を独占するための、嘘と演技で塗り固められていたことを、自ら暴露するものでした。そして、彼女の口から、聞く者全てを凍りつかせる、戦慄の告白が続きます。

「だからまあ、当然の成り行きとして、車で轢いてやったってわけ。ええ、さすがにアレは効いたみたいね。これが、あの子をここから完全に追い出すための、最後の一押しになるはずよ」

白昼堂々と行われた、計画的な殺人未遂。それを、彼女はまるでゲームの最終ステージをクレバーにクリアしたかのように、楽しげに、そして誇らしげに語ります。そして、「あの子さえいなくなれば、もう、うんざりする病人のふりもしなくて済むんだから」と、その先の、偽りの仮面を脱ぎ捨てた、解放された未来を夢想するのでした。

聞かれてしまった悪魔の独白

しかし、その悪魔の独白を、一言も聞き漏らさずに聞いている人物たちがいました。可愛いパールのため、お見舞いにやってきた、父親、母親、ヘンリー、そして、ドミニク。病室のドアの前で、まさに中に入ろうと足を止めた彼らの耳に、愛する娘であり、恋人であるパールの、信じがたい、そしてあまりにもおぞましい本音が、一言一句、はっきりと届いてしまっていたのです。

か弱く、誰よりも優しく、家族全員で守るべき、ガラス細工のような存在だったパール。その聖女のような完璧な仮面の下に隠されていた、あまりにも醜悪で、残忍な、本物の化け物の素顔。ベラという一人の人間の犠牲の上に、かろうじて成り立っていた彼らの歪んだ世界が、その土台から、ガラガラと大きな音を立てて崩れ落ちていく。

自分たちが「化け物」と罵り、追い出した少女は、ただ真実を語っていただけだった。そして、自分たちが「天使」だと信じ、全てを捧げてきた少女こそが、本物の「化け物」だった。家族は、この恐ろしい真実を、どう受け止めるのか。物語は、読者の予想を遥かに超えた、最大級のクリフハンガーと共に、ここで一旦の幕を閉じるのでした。

【傷ついた心に帰る場所はない】12話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回の第12話は、まさに衝撃という言葉以外見つからない、物語の全てをひっくり返す、とんでもない回でした。無料で見れる範囲はここまでなので、今後の展開が気になり、思わず声を上げてしまった読者も多いのではないでしょうか。それほどまでに、完璧で、悪魔的なクリフハンガーでした。

前半の、ベラが去った後の家族の、滑稽なほどに傲慢な姿には、相変わらず怒りを覚えましたが、今となっては、それがこの衝撃的なラストを最大限に引き立てるための、壮大な前フリだったのだと分かります。「数日もすれば泣きついて戻ってくる」。その愚かで、哀れな確信が、次の瞬間に木っ端微塵に打ち砕かれる。その構成の見事さには、もはや拍手を送りたくなります。

そして、パールの独白シーン。これは、漫画史に残るレベルの、悪女の告白シーンだったのではないでしょうか。これまで彼女が流してきた美しい涙も、苦しそうな表情も、その全てが、家族を支配するための、計算され尽くした嘘だった。それどころか、ベラを殺すことすら厭わない、冷酷な怪物だった。その真実が、当人の口から、最も聞かれたくない相手である家族に、生放送で聞かれてしまう。これ以上の皮肉で、これ以上に痛快で、そしてこれ以上に恐ろしい展開があるでしょうか。

彼らは、自分たちが作り上げ、崇拝してきた「聖女パール」という偶像が、実は悪魔だったという、身も蓋もない事実に、どう向き合うのか。それでもなお、彼らはパールを守り、嘘を重ねるのか。それとも、ようやく自分たちの罪を悟り、人としての道を取り戻すのか。ベラの新たな人生が始まった一方で、地獄の真実に取り残された家族の物語が、これからどうなっていくのか、気になって仕方がありません。

【傷ついた心に帰る場所はない】12話のネタバレまとめ

  • ベラが残した、ドミニクとの決別の証であるネックレスと、両親との親子関係解消の書類を、家族は発見する。
  • しかし、彼らはベラの決死の覚悟を「いつもの癇癪」だと完全に見下し、数日もすれば泣きついて戻ってくると、傲慢にも高を括る。
  • 場面は病院に移り、パールが電話で、これまでの病気や怪我は全て、家族の関心を引くための嘘の演技だったと話している。
  • さらに、ベラを家から完全に追い出すために、意図的に車ではねたと、殺人未遂の事実まで、楽しげに告白する。
  • その悪魔のような独白の全てを、お見舞いにやってきた家族全員が、病室のドアの外で聞いてしまうという、最悪の形で、物語は幕を閉じる。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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