【傷ついた心に帰る場所はない】17話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • パールはメアリーを買収されたと罵倒するが、メアリーは「パールは月5万ドル、ベラは月100ドル」という衝撃的な小遣いの格差を暴露し、その嘘を論破しました。
  • さらにメアリーは、ベラが輸血後に食事も与えられず、使用人の残り物で命を繋いでいたという、壮絶な虐待の事実を告発します。
  • その言葉に、ヘンリーは、これまでベラのみすぼらしい服装を嘲笑してきた自分の愚かさを悟り、後悔の念に苛まれました。
  • 過去に、晩餐会でベラの服装を理由に、彼女を激しく殴りつけたという、最も許されざる罪の記憶が蘇り、彼は自らの行いに愕然としました。
  • メアリーの証言によって、ベラが叫んだ虐待の告白が、全て真実であったことを、家族は今さらながらに理解しました。

【傷ついた心に帰る場所はない】第17話をネタバレありでわかりやすく解説する

遅すぎた親の後悔

物語は、メアリーの涙の告発によって、全ての嘘が白日の下に晒された、重苦しい沈黙が支配する病室から始まります。これまで、自分たちこそが完璧な家族だと信じて疑わなかった彼らの心に、今、初めて「ベラ」という存在の、あまりにも大きく、そしてあまりにも痛ましい重力が、ずしりとのしかかっていました。

最初にその沈黙を破ったのは、母親でした。

「あの子がお金に困っているなんて…考えたこともなかった。私たちはあの子をずっと家の中に閉じ込めて…普通の子供らしい時間さえ、何一つ与えてやれなかった…」

彼女の言葉は、自らの怠慢と、見て見ぬふりをしてきた無関心が、実の娘からどれだけ多くのものを、根こそぎ奪ってきたかという、今さらながらの、しかし否定しようのない気づきに満ちていました。そして、夫であるジョナサンに向き直り、震える声で、親としての完全で、そして取り返しのつかない敗北を認めます。

「ああ、ジョナサン…私たちは、あの子に、親として最低なことばかりしてきてしまったわ…」。

愛を盾にした最後の脅迫

しかし、自らが丹精込めて作り上げた偽りの王国が、目の前で崩壊していくのを、女王パールが黙って見ているはずがありませんでした。彼女は、家族が後悔という名の”裏切り”を見せるや否や、最後の、そして最も得意とする、最強の武器を手に取ります。それは、「愛」という名の、あまりにも醜い脅迫でした。

「ママ、パパ、二人は私のことを、世界で一番愛してるわよね?」

彼女は、その美しい瞳に涙を浮かべながら、しかしその奥では冷徹に、両親の心を見透かすように問いかけます。そして、その矛先を、最も御しやすいはずの駒、ドミニクにも向けました。「ねえ、ドミニクも、あなたもそうでしょう?」。

彼女は、もはや事実や真実という土俵で争うことを、完全に放棄しました。これは、真実と嘘の戦いではない。自分への、揺るぎないはずの愛と、しがないメイドの言葉、どちらを信じるのかという、究極の忠誠心のテストなのだと、問題を巧みにすり替えたのです。

「まさか、この私の言葉より、ただのメイドの戯言を信じるなんてこと、ありませんわよね?」

その言葉は、地位と身分で人の価値を測る、彼女の傲慢な本質を、最後の最後で露呈させていました。

正義のための探求

パールの、愛を人質にした最後の揺さぶり。しかし、その甘く、毒に満ちた言葉は、もはや一人の男の心には、全く響きませんでした。ドミニクです。彼の心は、美しくも残酷な偽りの愛の記憶から完全に解き放たれ、これまで目を背け、無視し続けてきた、あまりにも重い罪悪感によって、焼き尽くされようとしていました。彼は、パールの問いには一切答えず、静かに、しかし鋼のような揺るぎない決意を、その口にします。

「いや…俺が、俺自身の手で、この件の真相を突き止める」

そして、彼は、この物語の潮目を、そして彼ら自身の運命を、大きく変えることになるであろう、決定的な一言を、はっきりと放ちました。

「ベラには、正義がもたらされるべきだ」

これまで、常にパールの幸福と安寧だけが追求され、そのためにベラの全てが犠牲にされてきたこの歪んだ世界で、初めて、ベラのための「正義」という言葉が、はっきりと、そして力強く口にされた瞬間でした。

彼は、その場ですぐに電話をかけると、ある人物に、簡潔に、しかし有無を言わせぬ口調で指示を出します。「俺だ。街で一番腕の立つ私立探偵だ。…ベラ・ブラウンについて、徹底的な調査報告書を。…ああ、できるだけ早急に頼む」

彼は、もはや誰の言葉も、そして自分自身の甘い記憶さえも信じない。自らの目で、自らの責任で、これまで見てこなかった全ての真実と、その罪の重さと、正面から向き合うことを決意したのです。

【傷ついた心に帰る場所はない】17話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回の第17話は、これまで溜まりに溜まってきた物語の澱が、ついに動き出し、浄化へと向かう、非常に重要な転換点となる回でした。前半の、母親の後悔の言葉には、正直、非常に複雑な気持ちにさせられます。ようやく自分たちの、親としての、そして人間としての、致命的な過ちに気づいたのかという安堵と、しかし、あまりにも遅すぎるだろうという、やり場のない怒り。彼女の涙は、果たして本当に、傷つけ続けたベラのためのものなのか、それとも、完璧な母親であるという、自らのプライドが傷ついたことに対する、自己憐憫の涙なのか。その曖昧さが、この家族の根深い病理を、鋭く物語っているように感じました。

そして、パールの最後の悪あがき。「私を愛しているなら、私の嘘を信じなさい」。これは、全ての感情的なマニピュレーターが使う、最終兵器です。愛を、真実よりも上に置けと要求する、究極の脅迫。しかし、それが、ついにドミニクに通用しなかった。この瞬間には、本当に溜飲が下がる思いでした。

ドミニクが、自らの意志で「ベラのための正義」を追求し始めたこと。これは、この物語における、最大級のカタルシスの一つではないでしょうか。もちろん、彼がこれまでベラを傷つけ、利用し、その苦しみに目を背けてきた罪が、これで許されるわけではありません。しかし、彼は、ただ後悔して打ちひしがれるのではなく、真実と向き合い、自らの手で、おそらくは償いの道を探そうと、初めて能動的に動き出したのです。彼がこれから手にするであろう「報告書」には、一体どれほどの地獄が、そしてどれほどの悲しみが記されているのか。そして、その全ての真実を知った時、彼は一体どのような行動をとるのか。物語は、新たなサスペンスの幕開けを予感させ、次回の展開が待ちきれません。

【傷ついた心に帰る場所はない】17話のネタバレまとめ

  • メアリーの告発を受け、母親のカレンは、自分たちがベラの子供時代を奪い、親としての責任を全く果たしてこなかったことを、夫ジョナサンに告白し、深い後悔の念に苛まれる。
  • 追い詰められたパールは、最後の手段として「自分を愛しているなら、メイドではなく自分を信じるべきだ」と、愛を盾にして家族を脅迫し、忠誠を試す。
  • しかし、その言葉はもはやドミニクには通じず、彼は、偽りの愛から完全に目覚め、「ベラには正義が必要だ」と、はっきりと宣言する。
  • 物語は、ドミニクが、自らの手で全ての真相を突き止めるため、街で一番腕の立つ私立探偵に、ベラに関する徹底的な調査を依頼する場面で終わる。

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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