【傷ついた心に帰る場所はない】20話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

- ついに仮面を脱ぎ捨てたパールは、ベラを永遠に消し去りたかったという、そのおぞましい本音と動機を、悪びれる様子もなく告白しました。
- さらに、一切の反省を見せることなく、その罪の根源は、自分を一番だと約束したのにベラを産んだ両親にあると、その責任を転嫁し始めます。
- その言葉に激昂した父親は、ついに「ベラはお前のためだけに産んだんだ!」という、自らの罪を絶叫し、初めてパールに手を上げました。
- そして、これまで一度も守ることのなかった娘ベラの尊厳を、今さらながらに守ろうとするかのように、「二度と彼女のことを口にするな」とパールに言い放ちました。
【傷ついた心に帰る場所はない】第20話をネタバレありでわかりやすく解説する
怪物が見る世界
物語は、父親に殴られ、床に崩れ落ちたパールが、それでもなお、その歪みに満ちた思想を、まるで揺るぎない世界の真理であるかのように語り続ける、おぞましい場面から始まります。彼女の美しい瞳には、もはや一片の後悔の色も、罪の意識のかけらもありません。
「そうよ、ベラは、ただ生きて呼吸しているだけの血液バンクに過ぎないわ。自分にはふさわしくもない、身分不相応な愛を、乞うべきではなかったのよ」
彼女は、ベラが家族のために行ってきた全ての善行…母親のために設計したマッサージチェアも、ヘンリーを救った命懸けの救出劇も、全てを「ただのアクセサリー」と、何の価値もないものとして断じます。彼女の世界の中では、ベラの全ての行動は、自分という絶対的な太陽をより一層輝かせるための、取るに足らない装飾品でしかないのです。
「どうしてあの子は、その事実に気づいて、黙って分相応に生きることができなかったのかしら?なぜいつも、私の真似をして、私の上に立とうとするの?」
その言葉は、彼女の自己愛がいかに強大で、他者の感情や人生を、全く別の次元の、理解不能なものとしてしか認識できないかという、彼女の根本的な異常性を、何よりも雄弁に物語っていました。
最後の呪縛
その常人には理解しがたい、狂気に満ちた独白を、ドミニクは、もはや何の感情も浮かんでいない、まるで冬の湖面のように静かで、冷え切った瞳で見つめていました。
「パール、君は、本気で頭がおかしい」
その静かな、しかし完全な拒絶を込めた一言は、彼が、長年にわたって彼の心を支配し続けてきた、パールの甘い呪縛から、完全に解き放たれたことを意味していました。
しかし、パールは、最後の望みを懸けて、その呪縛を再びかけようと、ドミニクに必死にすがりつきます。
「ドミニク、私たちは、一緒に育った仲じゃないの…。私は、何年も、病気で、無力なまま、あなただけを愛してきた。それなのに…ベラが、私から全てを奪ったのよ。だから、あの子が死ぬことを望んだだけだわ」
彼女は、自らが巧妙に作り上げてきた嘘の病を、悲劇の恋の言い訳に利用し、全ての罪を、この場にはいないベラに押し付けます。彼女の世界では、いつだって、自分が可哀想で、か弱く、そして誰もが同情すべき被害者なのです。
償いの旅路へ
しかし、その悲劇のヒロインの、あまりにも見え透いた最後の演技は、もはやドミニクの心には全く響きませんでした。彼は、静かに、しかし二度と揺らぐことのない、最終的な裁きの言葉を、冷たく彼女に口にします。
「パール・ブラウン。君は、自分が犯した罪の代償を、これから嫌というほど支払うことになる」。
彼は、パールにきっぱりと背を向け、この嘘と欺瞞に満ちた部屋から、永遠に去ることを決意します。パールは、最後の蜘蛛の糸にすがるように、彼の背中に、まるで子供のように抱きつき、「行かないで、ドミニク、お願いだから!」と、甲高い声で泣き叫びました。しかし、ドミニクは、その腕を、もはや何の感情も見せずに、力強く、そして容赦なく引き剥がします。
そして、彼は、自らの新たな、そして唯一の、人生を懸けた目的を、はっきりと宣言しました。
「俺は、ベラを追いかける」
それは、愛を求める旅ではありません。許しを請う、あまりにも長く、そしてあまりにも困難な、たった一人での贖罪の旅路の始まりを告げる、静かで、しかし何よりも力強い宣誓でした。
敗者の絶叫
父親にも、ヘンリーにも、そして、最も愛していたはずのドミニクにも、完全に見捨てられる。自分が作り上げ、君臨してきた偽りの王国の玉座から、無様に引きずり下ろされ、全てを失ったパール。彼女に残されたのは、もはや、耳を劈くような、醜い絶叫だけでした。
「お前たちが彼女に与えた傷は、もう二度と元には戻らない!あの子は、もう絶対に帰ってこないんだから!」。
その言葉は、一見すると、ベラの未来を憂いているかのようにも聞こえます。しかし、その真意は、全く逆でした。それは、自分を捨て、新たな希望(ベラ)へと向かおうとする者たちに向けられた、最後の、そして最も強力な呪いの言葉でした。
「お前たちも、この私と同じように、全てを失ったんだ。お前たちが、今さらあの子を求めても、もう手遅れなんだよ」。それは、自らの完全な敗北を認めた、哀れな女王の、最後の、そして最も醜い、断末魔の叫びでした。
【傷ついた心に帰る場所はない】20話を読んだ感想(ネタバレあり)
今回の第20話は、ブラウン家という、歪みきった家族の物語の、一つの終着点を、これ以上ないほど見事に描き切った回だったと思います。特に、パールが最後まで一切の反省を見せず、自らの歪んだ論理を、まるで世界の真理であるかのように叫び続ける姿は、彼女がもはや救いようのない、完全な怪物であることを、全ての読者に強く、そして決定的に印象付けました。
そして、ドミニクの変貌。これまでの彼は、優柔不断で、自己保身的な、決して好感の持てるキャラクターではありませんでした。しかし、この回で、彼は初めて、自らの罪と、その罪が生み出した悲劇と正面から向き合い、他者(ベラ)のための「正義」と「贖罪」を求めて、能動的に動き始めます。「俺は、ベラを追いかける」。このセリフには、彼の、これから始まるであろう、決して許されることのない、困難な旅への、悲壮な覚悟が込められており、非常に心を打たれました。
最後のパールの絶叫は、この物語の根底に流れる、深い皮肉を象徴しているかのようです。彼女が、ベラを追い出し、その全てを奪うために行ってきた全ての悪行が、結果的に、自分自身を、誰からも愛されない、孤独な地獄へと突き落としたのです。まさに、自業自得、因果応報。ブラウン家の物語はここで一つの区切りを迎え、物語の舞台は、ついに、ベラ自身の、本当の人生の始まりへと移っていくのでしょう。その新たな始まりを、心から期待させてくれる、素晴らしい最終回(第一部の)でした。
【傷ついた心に帰る場所はない】20話のネタバレまとめ
- 全てを失ったパールは、それでもなお反省の色を一切見せず、「ベラはアクセサリーであり、身の程を知るべきだった」と、その常人には理解しがたい、歪んだ思想を叫び続ける。
- 彼女は、自らが作り上げた嘘の病を盾に、ベラに全ての罪をなすりつけ、ドミニクに最後の同情を請う。
- しかし、完全に彼女への幻想から覚めたドミニクは、「君は自分が犯した罪の代償を支払うことになる」と、パールに最後の、そして完全な別れを告げる。
- パールは泣きながらすがりつくが、ドミニクはそれを容赦なく振り払い、「俺は、ベラを追いかける」と、自らの新たな、贖罪のための目的を宣言して去っていく。
- 全てを失ったパールは、「彼女はもう二度と帰ってこない」と、自分を捨てた者たちへの、最後の呪いの言葉を絶叫する。
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