スリラー

【記憶の夜】ネタバレ解説!ラストの結末と伏線を徹底考察

ずっちー

2017年に公開され、Netflixで配信中の韓国映画『記憶の夜』。一部では人気がないとの声もありますが、先の読めないサスペンスフルな展開と、観る者を翻弄する大どんでん返しで、多くの視聴者に衝撃を与えました。幸せな家族に隠された秘密や、誘拐された兄の謎を追いかけるうち、物語は全く予想しない方向へと進んでいきます。

この記事では、そんな『記憶の夜』の結末まで、全ての謎や伏線を徹底的にネタバレ解説します。

この記事を読むと以下のことが理解できます
  • 物語を根底から覆す「家族」の正体
  • 主人公ジンソクが抱える衝撃の過去と殺人事件の真相
  • 劇中に散りばめられた伏線とその見事な回収
  • 物語の背景にある韓国の社会情勢と悲劇的な結末

【記憶の夜】ネタバレあらすじを徹底解説

  • 誘拐された兄の帰宅と家族の秘密
  • 20年前の事件の犯人はジンソクだった
  • 幸せな家族は全てが偽物だったという真相
  • 兄の手術費のために殺人を犯した動機
  • 張り巡めぐらされた伏線と巧みな回収劇

誘拐された兄の帰宅と家族の秘密

物語は、主人公ジンソクが新しい家に引っ越してくるところから始まります。尊敬する兄ユソク、そして優しい両親との4人家族。しかし、引っ越して早々、兄のユソクが何者かに誘拐されてしまいます。19日後にユソクは無事に帰宅しますが、誘拐されていた間の記憶を全て失っていました。

ここから物語は一気に不穏な空気に包まれます。ジンソクは、記憶を失くした兄の様子が以前とどこか違うことに気づき始めます。夜中にこっそり家を抜け出したり、過去の怪我で引きずるはずの足が逆だったりと、些細ながらも決定的な違和感が積み重なっていくのです。ジンソクが兄の不審な行動を母親に相談すると、今度は母親までもが誰かと電話で「ジンソクが気づき始めた」と話しているのを聞いてしまいます。

信じていた家族が、実は自分を監視しているのではないか。この疑念が確信に変わった時、ジンソクは家から逃げ出し、物語は最初の大きな転換点を迎えることになります。

20年前の事件の犯人はジンソクだった

結論から言うと、この物語の核心にある20年前の一家惨殺事件の犯人は、主人公のジンソク自身でした。ジンソクは事件の精神的ショックから「解離性健忘」に陥り、事件に関する記憶の一切を失っていたのです。

物語の中でジンソクが見ていた幸せな家族との生活や、兄を心配する心優しい青年という自己認識は、全て失われた記憶を埋めるために彼自身が無意識に作り上げた虚像でした。自分が善良な人間であると信じ込んでいたジンソクにとって、自分が残虐な殺人事件の犯人であるという事実は、受け入れがたい衝撃をもたらします。

しかし、物語が進むにつれて断片的に蘇る記憶と、偽の家族たちが仕組んだ状況証拠によって、彼は自分が犯した罪と向き合わざるを得なくなります。この「信頼できない語り手」である主人公の視点を通して、視聴者は彼と共に混乱し、やがて明かされる真実に驚愕することになるのです。

幸せな家族は全てが偽物だったという真相

ジンソクが信じていた父、母、そして兄のユソクは、全員が偽物の家族でした。彼らの正体は、20年前にジンソクが殺害した一家の遺族(偽の兄)が、事件の真相を突き止めるために雇った探偵や役者たちだったのです。

偽の兄の目的は、記憶を失ったジンソクに事件当時と全く同じ状況を再現して体験させ、忘れてしまった殺人の動機を思い出させることでした。そのために、彼らはジンソクに催眠術をかけ、今は2017年であるにもかかわらず1997年だと思い込ませ、21歳の青年として振る舞わせていたのです。

ジンソクが引っ越し先に見覚えを感じたのも、その家がまさに20年前の事件現場だったからでした。父親に「絶対に開けてはいけない」と言われた開かずの部屋では、事件現場を再現するための準備が進められていたのです。ジンソクが感じていた全ての違和感は、この壮大な復讐劇のための仕掛けだったというわけです。

兄の手術費のために殺人を犯した動機

ジンソクが殺人を犯すに至った動機は、非常に悲しいものでした。1997年、ジンソクの本当の家族は交通事故に遭い、両親は死亡、兄は意識不明の重体で緊急手術が必要な状態となります。しかし、当時韓国を襲ったアジア通貨危機の影響で、高卒のジンソクは仕事を見つけることも、手術費を工面することもできませんでした。

追い詰められたジンソクは、インターネットの掲示板で高額な報酬が約束された殺人の依頼を見つけ、兄を救いたい一心で引き受けてしまいます。依頼内容は、ある家庭の母親一人を殺すというものでした。しかし、いざ犯行に及ぶと娘に目撃されてしまい、パニックになったジンソクは娘も殺害してしまいます。

この時、唯一生き残ったのが、当時まだ幼かった息子でした。ジンソクは彼を殺すことができず、その場から逃走します。この悲劇的な出来事が、ジンソクの記憶を封じ込め、そして20年後の復讐劇へと繋がっていくのです。

張り巡めぐらされた伏線と巧みな回収劇

『記憶の夜』の巧みさは、物語の序盤から数多くの伏線が張り巡めぐらされている点にあります。一見すると何気ないシーンやセリフが、後半の怒涛の展開で見事に回収されていくのです。

例えば、以下のようなものが挙げられます。

  • 1997年のカレンダー: 物語の時代設定を誤認させるための重要な小道具です。
  • 引っ越し業者の視線: 41歳のジンソクが、自分より若い偽の兄を「兄さん」と呼ぶことに、引っ越し業者が不思議そうな顔をするシーンがあります。
  • 開かずの部屋: 前述の通り、事件現場を再現している部屋であり、ジンソクの記憶を呼び覚ますための鍵となる場所でした。
  • 偽の警察官: 兄が誘拐された際にジンソクが通報しますが、警察はまともに取り合ってくれません。これは、彼らが偽の兄に雇われた協力者だったためです。

これらの伏線は、初見では気づきにくいかもしれませんが、全ての真相が明かされた後にもう一度見返すと、その計算され尽くした脚本に改めて驚かされることでしょう。

【記憶の夜】ネタバレと衝撃の結末

  • ジンソクがついた嘘に隠された理由
  • 主治医が仕組んだ保険金殺人の依頼
  • 偽ユソクの正体と悲劇的な兄弟の結末
  • 1997年のアジア通貨危機という時代背景
  • 記憶の夜のネタバレでわかる物語の全て

ジンソクがついた嘘に隠された理由

物語のクライマックス、全ての記憶を取り戻したジンソクは、偽の兄(被害者遺族のソンウク)から殺人の黒幕について問い詰められます。ソンウクは、事件直前に母親に多額の保険金がかけられていたことから、自身の父親が殺人を依頼したのではないかと疑っていました。

しかし、ジンソクは「全て自分が一人でやったことだ」と嘘をつきます。これは、ジンソクなりの最後の贖罪でした。自分の父親が母親殺しの依頼主だったという残酷な真実をソンウクに告げることは、彼をさらに深く傷つけることになると考えたのです。

家族を奪われ、20年間復讐心だけを支えに生きてきたソンウクに対して、これ以上の絶望を与えたくないという思いが、ジンソクに嘘をつかせました。この嘘は、自分が犯した罪の重さを自覚しているからこそ生まれた、あまりにも悲しい優しさだったのかもしれません。

主治医が仕組んだ保険金殺人の依頼

ジンソクに母親の殺害を依頼した黒幕は、ソンウクの推測通り、彼の実の父親であり、ジンソクの兄の主治医でもあった人物でした。彼はアジア通貨危機による経済的困窮から抜け出すため、妻にかけた保険金を手に入れようと、同じく金に困っていたジンソクを利用したのでした。

しかし、ジンソクが誤って娘まで殺してしまったことを知り、計画が狂った主治医はジンソクを殺害しようとします。その揉み合いの末、主治医は建物の屋上から転落して死亡してしまいました。

結局、事件の真相を知る人物はジンソクただ一人となります。主治医の身勝手な欲望が、結果的に二つの家族を崩壊させ、誰も救われない悲劇を生み出してしまったのです。

偽ユソクの正体と悲劇的な兄弟の結末

前述の通り、ジンソクの兄ユソクとして振る舞っていた人物の正体は、20年前にジンソクが殺害した一家の生き残りである息子、チェ・ソンウクでした。彼は事件後、施設で育ち、犯人への復讐だけを胸に生きてきました。

全ての記憶を取り戻したジンソクと病院で対峙したソンウクは、ジンソクの最後の嘘を聞き、その意図を悟ります。憎むべき仇であるジンソクが、自分を庇うために嘘をついているという事実。そして、その嘘の裏にある父親の裏切り。全ての真実を察したソンウクは絶望し、病院の窓から飛び降りて自らの命を絶ってしまいます。

そして、ソンウクが持ってきた毒の入った注射器を手に取ったジンソクもまた、後を追うように自ら命を絶ちました。加害者と被害者という形で出会ってしまった二人の男の運命は、あまりにも悲劇的な結末を迎えることになります。

1997年のアジア通貨危機という時代背景

この物語の根底には、1997年に韓国を襲ったアジア通貨危機(IMF危機)という深刻な社会問題が存在します。この経済危機は「建国以来の国難」とも呼ばれ、多くの企業が倒産し、失業者が街にあふれました。

劇中で、医者というエリートであったはずの主治医が保険金殺人を計画し、真面目な青年だったジンソクが殺人の依頼を引き受けてしまったのも、この極限的な経済状況が背景にあります。つまり、この物語における真の悪役は特定の個人ではなく、人々を追い詰めた「時代」そのものだったと捉えることも可能です。

ただのサイコスリラーに留まらず、韓国社会が経験した歴史的な苦難を背景に描くことで、物語に深い奥行きと説得力を与えています。

記憶の夜のネタバレでわかる物語の全て

この記事で解説した『記憶の夜』の結末に関する重要なポイントを、以下に箇条書きでまとめます。

  • ジンソクの家族は全て偽物で、遺族による復讐劇だった
  • 物語の舞台は1997年ではなく、20年後の2017年
  • ジンソクは21歳ではなく、41歳の中年男性だった
  • 20年前の一家惨殺事件の犯人はジンソク自身
  • 事件のショックで記憶を失い、自分を別人だと思い込んでいた
  • 殺人の動機は、交通事故で重体となった兄の手術費を稼ぐため
  • 殺人を依頼した黒幕は、被害者の夫であり兄の主治医だった
  • 主治医の目的は、妻にかけた保険金だった
  • 偽の兄の正体は、事件の生き残りである被害者の息子ソンウク
  • ソンウクの目的は、ジンソクに殺人の動機を思い出させること
  • クライマックスでジンソクはソンウクを庇うため嘘をつく
  • 全ての真相を悟ったソンウクは絶望し、自殺を選ぶ
  • ジンソクもまた、罪を償うために後を追い自らの命を絶つ
  • 物語の背景には1997年のアジア通貨危機がある
  • 登場人物全員が時代の波に翻弄された悲劇の物語である
ABOUT ME
コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
記事URLをコピーしました