悪役令嬢

【ある継母のメルヘン】12話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • シュリーは、叔父叔母(ルクレツィアとヴァレンティノ)の屋敷乗っ取り計画を暴露し、真っ向から対決した
  • 逆上したルクレツィアに平手打ちされるが、シュリーは毅然と平手打ちをやり返して反撃した
  • 子供たちがシュリーの味方につき、特に長男ジェレミーが初めて彼女を「母上」と呼んで支持したことが決定打となる
  • 家族の絆を力に、シュリーは叔父叔母を屋敷から完全に追放することに成功した

【ある継母のメルヘン】第12話をネタバレありでわかりやすく解説する

叔父叔母を追放し、子供たちとの絆を取り戻したシュリー。しかし、物語はここで少し時間を遡り、1度目の人生で彼女が経験した、ある決定的な出来事を描きます。それは、まだ無力で世間知らずだった16歳のシュリーが、貴族社会の残酷な洗礼を受け、いかにして「鉄血の女」へと変わっていったのか、その原点となる悲しい記憶でした。

回想:1度目の追悼招宴と無邪気なシュリー

舞台は、1度目の人生における亡き夫ヨハンの「追悼招宴」。この宴は、夫の親友であったニュルンベル公爵が主催してくれたもので、当時のシュリーはまだ家の実権を完全に掌握しておらず、ただ招待された客の一人という立場でした。

会場で、シュリーは他の貴族婦人たちと談笑しています。

「わたくし、ブレッテンから参りましたの」

故郷の話を尋ねられ、シュリーは目を輝かせながら、羊と走り回ったことや、夕日を見ながら乾いたパンを食べた思い出を無邪気に語ります。その姿は、後の「鉄血の女」の姿からは想像もつかないほど、純粋で世間知らずな田舎の少女そのものでした。

その後、シュリーは宴の主催者であるニュルンベル公爵に挨拶に向かいます。彼は、シュリーが聴聞会で窮地に立たされた際に助けてくれた恩人です。公爵は、皇帝陛下がシュリーを助けたのは、亡き夫ヨハンの皇室への多大な貢献を知っていたからだと明かし、**「ゆっくりと学んでいけばいい」**と優しい言葉をかけてくれるのでした。

婦人たちの陰口、貴族社会の残酷な洗礼

ニュルンベル公爵の温かい言葉に、シュリーの心には一筋の希望が差し込みます。(周りには親切な人も多いから、きっと大丈夫…)しかし、その淡い期待は、次の瞬間、無残にも打ち砕かれることになりました。

婦人たちの輪に戻ろうとしたシュリーの耳に、信じられない言葉が飛び込んできたのです。

「本当に田舎者ですこと。羊と遊んでいただなんて…」

「ヨハン様も耄碌なさったのかしら。あんな世間知らずの子供を…」

先ほどまでこやかに談笑していた婦人たちが、手のひらを返したようにシュリーを嘲笑し、見下していたのです。

話はさらにエスカレートします。彼女たちは、ノイヴァンシュタイン家の莫大な財産を誰が手に入れるかという、生々しい話題で盛り上がっていました。

「これは戦いですわ。誰があの小娘を失脚させ、富を手に入れるか」

「どのくらいかしら?3ヶ月?いいえ、2年は持つかしら?」

まるでゲームのように、シュリーの不幸を賭けの対象にしていたのです。貴族社会の煌びやかな仮面の裏に隠された、底知れない悪意と欲望。シュリーは、その場に立ち尽くすことしかできませんでした。

偉大な前婦人と、無力な自分

傷心のまま屋敷に帰り着いたシュリーを待っていたのは、前ノイヴァンシュタイン婦人の遺品整理でした。エリアスに「ここは本当の母親の部屋だ!」と泣き叫ばれた記憶が、シュリーの胸を締め付けます。

部屋には、前婦人の肖像画が残されていました。

「奥様は、どのようなお方でしたの?」

シュリーの問いに、侍女長のグウェンは答えます。

「気品があり、寡黙な方でございました。お子様たちには厳しく接しておられましたが…侯爵様を心から愛しておいででした」

その言葉は、シュリーに自分との圧倒的な違いを突きつけました。偉大で、誰からも敬愛されていた前婦人。それに比べて、自分は田舎者で、世間知らずで、陰で笑われている無力な存在…。

母の教え「ずる賢く、卑怯に」生きる決意

その夜、シュリーは一人、膝を抱えて恐怖に震えていました。逃げ出したい。でも、どこにも逃げる場所はない。

(冷静なだけでは、厳格なだけでは足りない…)

(このままの私では、あの人たちに喰われてしまう…)

絶望の淵で、シュリーの脳裏に蘇ったのは、意外にも自分の母親の姿でした。

彼女の母親は、決して品行方正な人物ではありませんでした。他人を陥れて利益を得ることも厭わず、それを「生き抜くための手段」だとシュリーに教えていたのです。

「ずる賢くて、卑怯でいることよ」

かつては嫌悪していたはずの母の言葉が、今だけは唯一の道しるべのように思えました。「少しずつ学べばいい」と言ってくれたニュルンベル公爵の優しさを思い出し、シュリーは夜空を見上げて静かに呟きます。

(そうできれば、よかった…)

純粋な少女の心は、この夜、完全に死にました。そして、生き抜くために、家と子供たちを守るために、心を鋼鉄の鎧で覆った「鉄血の女」が誕生したのです。


【ある継母のメルヘン】第12話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回は全編が1度目の人生の回想シーンで、読んでいて本当に胸が締め付けられました。純粋で無邪気だった16歳のシュリーが、貴族社会の陰湿で残酷な現実に直面し、心を殺して「鉄血の女」にならざるを得なかった経緯が描かれていて、ただただ切なかったです。

特に、婦人たちの陰口のシーンは、人間の嫌な部分が凝縮されていて、読んでいて気分が悪くなるほどでした。笑顔の裏で人を嘲笑し、他人の不幸を娯楽にする。こんな世界で、たった一人で戦わなければならなかったシュリーの孤独を思うと、涙が出そうになります。

彼女の悪名は、決して彼女が望んだものではなく、弱い自分を守り、家を守るために必死で身につけた鎧だったのですね。この辛い過去を知った上で2度目の人生の彼女を見ると、その強さが一層際立って見えます。今のシュリーなら、きっとこの意地悪な婦人たちを笑顔でやり込めてくれるはず。2度目の追悼招宴で、彼女がどんな華麗なリベンジを見せてくれるのか、今から楽しみでなりません!

【ある継母のメルヘン】第12話のネタバレまとめ

  • 今回は、シュリーが「鉄血の女」になった経緯を描く、1度目の人生の回想編だった
  • 亡き夫の「追悼招宴」で、当時のシュリーはまだ世間知らずで純粋な少女だった
  • しかし、笑顔の裏で自分を嘲笑し、家の財産を狙う貴族婦人たちの陰口を耳にしてしまい、深く傷つく
  • 偉大な前婦人と自分を比べて絶望する中、生き抜くために他人を陥れることも厭わなかった母の教えを思い出す
  • シュリーは純粋な心に蓋をし、家と子供たちを守るため、「ずる賢く、卑怯になる」ことを固く決意した

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コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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