【兄だったモノ】18話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • カンナは、兄ではなく聖自身が呪いの根源であるという恐るべき仮説を立てた。
  • 大学時代、聖に近づいた7人もの男子学生が、彼に執着し次々とおかしくなっていった過去が判明した。
  • 一方、広島の鹿ノ子はアルバムの中から、頼豪の霊視で浮かび上がった「サイサコ」という名前の少年が、聖と一緒に写っている写真を発見した。

【兄だったモノ】第18話をネタバレありでわかりやすく解説する

広島の聖の家で、ついに呪いの謎を解く手がかりを見つけた鹿ノ子。しかし、買い物から帰宅した聖との穏やかな夕食の時間は、彼女に兄に関する新たな、そしてあまりにも悲しい真実を突きつけることになります。

食卓で解ける謎

三つの異なる証言

鹿ノ子がアルバムを隠した直後、買い物から帰ってきた聖。鹿ノ子は彼のためにオムライスを振る舞います。美味しいと喜ぶ聖の姿に安堵しつつ、鹿ノ子はずっと疑問だったことを切り出しました。 それは、兄・騎一郎の好き嫌いに関する、三人の異なる証言についてです。

  • 聖は「好き嫌いが多かった」と言う
  • 母は「なんでも食べた」と言う
  • カンナは「食べること自体が苦手だった」と言う

一つの事柄に対して、なぜこれほど証言が食い違うのか。

『藪の中』の真実

鹿ノ子の疑問に対し、聖は「面白いなあと想って」と、意外な感想を口にします。彼は、その状況を芥川龍之介の小説『藪の中』のようだと例えました。 『藪の中』は、一つの事件に対して、複数の関係者がそれぞれ全く異なる証言をし、真相が誰にも分からなくなる物語です。 聖は、「多分それが本当なんよ」と語ります。人は他人の一部分しか見ておらず、好き嫌いも食卓の雰囲気によって左右される、と。 彼は、騎一郎の好き嫌いを克服させようと、細かく刻んだピーマンやニンジンを料理に混ぜていた思い出を、懐かしそうに話すのでした。

兄が抱えていた憎しみ

蘇るトラウマ

聖の言葉は、鹿ノ子の心の奥底に封印されていた、おぞましい記憶の蓋を開けてしまいます。 それは、幼い頃に目の当たりにした、両親の激しい夫婦喧嘩の光景でした。怒号が飛び交い、皿が割れる食卓。 鹿ノ子はその瞬間にすべてを理解します。

兄が母の前で黙って料理を食べていたのは、家庭内の不和を少しでも避けるため。 カンナに「食べるのが苦手」と打ち明けたのは、心を許した相手だったから。 そして、聖にだけ我儘を言えたのは、彼が唯一の安息の地だったからです。

愛情と憎悪

兄はいつも、両親の不和から自分を庇ってくれる味方でした。可愛がってくれた。 けれど、それと同じくらい、両親が争う原因であった自分のことを、心の底では憎んでいたに違いない。 「私のことが 憎かったはずだ」 兄が抱えていた、愛情と憎悪。その矛盾した感情の存在に、鹿ノ子は気づいてしまったのです。

食事を終え、温かい幸福感に包まれながらも、「帰りたくないなあ…」と感じる鹿ノ子。西迫さんのことをカンナに報告するため、公衆電話へ向かおうと席を立った、その時でした。 「ね 泊まってって 駄目?」 聖が、静かな、しかし有無を言わせぬ響きで、彼女を引き止めるのでした。

【兄だったモノ】18話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回は、静かながらもあまりにも衝撃的な回でした。『藪の中』を引用して、一つの事実がいかに多角的に見えるかを語る聖さんのシーンは、この物語のテーマそのものを表しているようで、非常に知性的で深みがありました。

そして、鹿ノ子ちゃんのトラウマのシーン。これまで断片的にしか描かれなかった家庭環境の劣悪さが、はっきりと示されましたね。兄・騎一郎が抱えていた苦悩の根源がそこにあったのだと、胸が締め付けられました。 「私のことが憎かったはずだ」という鹿ノ子ちゃんの結論は、本当に辛かったです。自分を守ってくれた唯一の味方が、同時に自分を憎んでいたかもしれないという事実。これほど残酷な真実はありません。 最後の、聖さんの「泊まってって」という一言も、様々な意味に取れて恐ろしい。これは、聖さん自身の純粋な願いなのか、それとも兄の呪いが彼女を捕らえようとしているのか。穏やかな食卓の風景からの、あまりにも不穏な引きに、心臓が掴まれる思いでした。

【兄だったモノ】18話のネタバレまとめ

  • 鹿ノ子が作ったオムライスを、聖は「美味しい」と喜んで食べる。
  • 兄の食の好みに関する三者三様の証言について、聖は芥川龍之介の『藪の中』を例に出し、どれも真実の一面だろうと語る。
  • その言葉をきっかけに、鹿ノ子は両親の激しい不仲がトラウマだったことを思い出し、兄が自分を庇っていたこと、そして同時に憎んでいたであろうことを悟る。
  • 鹿ノ子がホテルへ帰ろうとした矢先、聖から「泊まっていかないか」と引き止められる。

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ABOUT ME
コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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