【兄だったモノ】29話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 頼豪からの警告を受けたカンナだったが、騎一郎が聖と幸せそうにしていた記憶を守るため、事件に関わり続けることを決意した。
  • 翌朝、頼豪がカンナの元を訪れ、昨夜を境に呪いの気配が完全に消え失せたことを報告した。
  • 頼豪は、呪いが成仏したのではなく、「存在理由を失って消滅した」と推測し、むしろ「嵐の予感」がすると警告した。
  • 物語の最後、聖の家で何者かの血が滴り落ちている不気味なシーンで幕を閉じた。

【兄だったモノ】第29話をネタバレありでわかりやすく解説する

呪いの気配が消え、事態が収束に向かうかと思いきや、頼豪が口にした「嵐の予感」。その言葉通り、物語は鹿ノ子の家庭環境という、これまで隠されてきた領域に深く切り込んでいきます。呪いの根源は、思わぬ場所にあったのかもしれません。

兄が家に縛られていた理由

不自然な家族関係

物語は、カンナと頼豪の会話から始まります。カンナは、鹿ノ子が聖に取り入るために兄になろうとしている、という自らの考えを語ります。 しかし、頼豪もカンナも、一つの不自然さに気づいていました。それは、年頃の娘である鹿ノ子が何度も広島へ家を空けているにも関わらず、家族が全く無関心であることです。頼豪は、鹿ノ子の家からは兄以外の家族の影が「異常に薄い」と指摘します。 その言葉に、カンナは生前の騎一郎との会話を思い出していました。彼は家族のことを全く話さず、唯一口を開くのは、妹の鹿ノ子のことだけだった、と。

「あいつに鹿ノ子が殺されちまう」

そして、カンナは騎一郎から聞いた、最も衝撃的な言葉を思い出します。 学生時代、なぜ実家から通える距離なのに一人暮らしをしないのか、と尋ねたカンナに対し、騎一郎はこう答えたのです。 「俺が家を出たら 『あの人』に鹿ノ子が殺されちまう」。 兄が実家を離れなかったのは、家に潜む「あの人」という脅威から、妹である鹿ノ子を守るためだったのです。

鹿ノ子の地獄

場面は、広島へ向かう新幹線の時間まで、一旦自宅へ戻った鹿ノ子の視点へと移ります。 彼女が玄関のドアを開けると、家の中から聞こえてきたのは、母の金切り声でした。 「あの親不孝者 死んだんだ!」。 食卓に置かれた兄の遺影を前に、母は亡くなった息子を罵倒し続けていたのです。父もまた、「いつまでも食卓に置くな!気分が悪い!」と、その遺影を邪険に扱います。 兄の死を悼むどころか、その存在自体を汚すかのような両親の姿。そして、父は帰宅した鹿ノ子に気づくと、まるで次の標的を見つけたかのように、無言で手を振り上げるのでした。

【兄だったモノ】29話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回は、息が詰まるほど重苦しく、そしてあまりにも悲しい回でした。 これまで鹿ノ子ちゃんの家庭については、断片的な情報しかありませんでしたが、今回その内情がはっきりと描かれ、想像を絶する地獄だったことがわかりました。亡くなった息子を「親不孝者」と罵る母親、その遺影を「気分が悪い」と払いのけようとする父親。これはもう、機能不全家族という言葉では生ぬるいほどの、異常な環境です。

そして、兄・騎一郎が家を出なかった理由。「鹿ノ子が殺されるから」。この一言に、彼の人生のすべてが詰まっているようで、涙が出そうになりました。彼は、両親という名の怪物から、たった一人で妹を守り続けていたのですね。前回、鹿ノ子ちゃんが「兄は私のことを憎んでいたはずだ」と結論付けていましたが、それすらも兄の優しさだったのかもしれません。 最後の、お父さんが鹿ノ子ちゃんに手を上げるシーンは、恐怖で鳥肌が立ちました。兄という防波堤を失った今、両親の歪んだ愛情(あるいは憎しみ)は、すべて鹿ノ子ちゃんに向かうのでしょう。聖さんの元へ向かっている西迫も恐ろしいですが、鹿ノ子ちゃんの家もまた、嵐の中心地だったのです。

【兄だったモノ】29話のネタバレまとめ

  • カンナと頼豪は、鹿ノ子の両親が彼女の行動に無関心であることが不自然だと気づく。
  • カンナは、生前の騎一郎が「家を出たら『あの人』に鹿ノ子が殺される」と語っていたことを思い出す。
  • 広島へ発つ前に自宅へ戻った鹿ノ子は、両親が兄の遺影を前に、彼を罵倒している場面を目撃する。
  • 物語は、父が鹿ノ子に暴力を振るおうとする不穏な場面で幕を閉じる。

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ABOUT ME
コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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