【兄だったモノ】52話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 鹿ノ子は、自らの過去を聖に語り始めた。それは、父の不倫相手の子供として、東雲家に引き取られた日々のことだった。
  • 彼女は、自分に暴力を振るった義母もまた、無責任な父の「被害者」であると捉えていた。
  • 義母の暴力からいつも守ってくれた完璧な兄・騎一郎のことを、彼女は大好きであると同時に、吐き気がするほど大嫌いだったと告白した。
  • その憎しみの根源は、兄が聖に見せた、全てを投げ打つほどの激しい愛への「羨望」であったと、彼女は自覚した。

【兄だったモノ】第52話をネタバレありでわかりやすく解説する

自らの壮絶な過去と、兄への羨望を告白した鹿ノ子。その惨めな本音は、聖の心の奥底に眠っていた、ある感情を呼び覚まします。二人の逃避行は、兄の思い出を辿る、悲しい巡礼の旅へと姿を変えていきました。

兄の思い出を巡る旅

広島への逃避行

物語は、鹿ノ子と聖が広島に到着した場面から始まります。 あの地獄のような家から、抜け殻のようになった母を置き去りにして飛び出してきた二人。冷静に考えれば、これは未成年誘拐にあたるのかもしれない。しかし、そんなことは、もはやどうでも良いことでした。 広島に着いた聖は、まず学校に休みの連絡を入れるよう鹿ノ子に促します。そして、彼がおもむろに切り出したのは、亡き兄・騎一郎の話でした。 「騎一郎がね 生前鹿ノ子ちゃんと来たかったって言っとった場所があるんよ」。

「俺と一緒なんよ」

聖は、破れた鹿ノ子の服を見て、昨夜の彼女の告白を思い出します。 「誰かに愛されたかったって」。 その言葉を聞いて、自分も同じだったと、だから嬉しくなってしまったのだ、と聖は語ります。同じ電車に乗り、同じ景色を見て、同じものを食べる。その全てが、自分と鹿ノ子が「一緒」であることの証明のようでした。 彼は、騎一郎の代わりに、自分が鹿ノ子をその場所へ連れて行くと提案します。「俺と回らん?」。

聖からの残酷な提案

「それで 全部終わったら」。 聖は、優しく鹿ノ子の頬に手を添え、キスをします。その瞳は、どこまでも穏やかで、そして深く澄み切っていました。 そして、彼は、この旅の終着点を示すかのように、こう囁くのでした。 「鹿ノ子ちゃん 俺と一緒に死んでくれない?」。 それは、あまりにも甘く、そして絶望的な、愛の言葉でした。

【兄だったモノ】52話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回は、息を呑むほど美しく、そしてあまりにも悲しい回でした。 地獄のような家から二人で逃げ出すシーンは、束の間の解放感があって、少しだけ希望を感じました。しかし、その行き先が「兄の思い出の場所を巡る旅」だと知った時、この逃避行が、決して明るいものではないことを悟りました。

そして、聖さんの「俺と一緒なんよ」という言葉。これは、彼の本質を表す、非常に重要なセリフだと思いました。彼は、自分と同じ「孤独」や「渇き」を持つ人間にしか、心を開けないのかもしれません。鹿ノ子ちゃんの不幸が、彼にとっての救いになってしまっている。その共依存の関係性が、痛々しいほど伝わってきました。 最後の「一緒に死んでくれない?」というプロポーズ。これは、これまでの全ての出来事を経た二人にとって、ある意味で最高のハッピーエンドなのかもしれない、とすら思ってしまいました。生きることに絶望した二人が、寄り添いながら死を選ぶ。その美しさと、残酷さに、ただただ言葉を失いました。

【兄だったモノ】52話のネタバレまとめ

  • 鹿ノ子は、聖と共に地獄のような実家から逃げ出し、広島へと向かった。
  • 聖は、亡き兄・騎一郎が生前鹿ノ子と来たがっていた場所を、代わりに自分が案内すると提案する。
  • 聖は、鹿ノ子の「誰かに愛されたかった」という告白を聞き、自分と同じ痛みを抱えていることに喜びを感じていたことを明かす。
  • 最後に聖は、この旅が全部終わったら、「一緒に死んでほしい」と鹿ノ子に心中を提案した。

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ABOUT ME
コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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