【兄だったモノ】58話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

- 鹿ノ子は、謎の少年「ゴンちゃん」に正体を問い詰めるが、はぐらかされた。
- ゴンちゃんは、鹿ノ子が聖の過去を何も知らないことを指摘し、彼女の愛の覚悟を試すような言動を繰り返した。
- 鹿ノ子が「聖のことをしっかり知るべきだ」と答えた瞬間、ゴンちゃんは彼女を奈落へと突き落とした。
- 鹿ノ子が落ちた先は、かつて彼女が悪夢で見た『不思議の国のアリス』のような異空間であり、そこで呆然と佇む聖の姿を発見した。
【兄だったモノ】第58話をネタバレありでわかりやすく解説する
「死のうと思っていた」――。物語は、太宰治の『走れメロス』の一節を引用するかのように、静かに幕を開けます。夏の着物をもらったから、夏まで生きようと思った。聖の心象風景である「奈落の国」で、鹿ノ子は、彼が生きるための、たった一つの理由になれるのでしょうか。
奈落の国での対話
顔のない聖
鹿ノ子が迷い込んだ異空間。そこにいた聖の顔は、のっぺらぼうのように、何もありませんでした。蛆虫が這い出るその顔に、鹿ノ子は悲鳴を上げます。 「だぁれ?」。顔のない聖は、鹿ノ子のことすら認識できていません。 鹿ノ子は、この変な世界も、あの少年「アレ」の仕業だと確信します。アレは私に何をさせたいの?その問いの答えは、聖の口から語られました。 「みんなそう 俺んこと好きじゃあ言うて 好き勝手愛を囁いて そんで誰一人俺のことを見もせん」。 誰も、本当の自分を見てはくれない。その絶望が、彼の顔を奪っていたのです。
嘘じゃない
「俺は自分の顔が大嫌い」。そう言って泣き崩れる聖に、鹿ノ子は叫びます。 「私は聖さんの顔 好きです」「顔だけじゃない」。 初めて会った時から、素敵な人だと思っていた。話し方や立ち振る舞い、寂しそうな雰囲気、全部、全部。 「嘘じゃない…っ」。 鹿ノ子は、自分の気持ちが、兄への羨望や嫉妬とないまぜになった、醜い感情だと認めます。お兄ちゃんのことを忘れることのできない貴方が、憎くて憎くて大好きだ、と。 「私は貴方のことを知らない」。 それでも、貴方のことを全部知りたい。キスで魔法を解くつもりなんてない。ただ、貴方のことを知りたい。その痛切な叫びが、聖の心を打ちました。
悪夢の終わり
「やめて…っ」。聖は、蛆に食われるかのように、その場に崩れ落ちます。 しかし、鹿ノ子の告白は、確かに彼に届いていました。 悪夢が、終わります。 気がつくと、鹿ノ子は比婆山の山道で、聖の腕の中にいました。 「やっと顔が見えた!」。悪夢の中で見えなかった聖の顔が、そこにはありました。 「馬鹿…っ」。 涙を流しながらそう呟く聖の顔を見て、鹿ノ子はただ呆然とするしかありませんでした。
【兄だったモノ】58話を読んだ感想(ネタバレあり)
今回は、息を呑むほど美しく、そして感動的な回でした。太宰治の引用から始まる冒頭、そしてアリスの世界になぞらえられた聖さんの心象風景。文学的で、非常にセンスのある演出に引き込まれました。
顔のない聖さんの絶望は、読んでいて本当に胸が苦しくなりました。誰からも愛されているように見えて、その実、誰にも本当の自分を見てもらえていない。その孤独が、彼を怪物に変えてしまっていたのかもしれません。 そんな彼の心を溶かしたのが、鹿ノ子ちゃんの、あまりにも人間的で、不器用な愛の告白だったというのが、本当に素晴らしいです。「嘘じゃない」と、自らの醜い感情もすべてさらけ出して、それでも「貴方を知りたい」と叫ぶ彼女の姿に、涙が出そうになりました。 最後の、現実世界に戻ってきた二人のシーンは、まるで映画のようでした。悪夢から覚め、初めて本当の意味で互いを見つめ合う二人。ここから、彼らの本当の物語が始まるのだと、そう確信させてくれる、最高のラストでした。
【兄だったモノ】58話のネタバレまとめ
- 鹿ノ子は、聖の心象風景である「奈落の国」で、顔を失った聖と対峙する。
- 聖は、「誰も本当の自分を見てくれない」という絶望を告白する。
- 鹿ノ子は、自らの醜い感情も認めつつ、それでも「聖の全てを知りたい」と、本心からの愛を叫ぶ。
- 鹿ノ子の告白によって、聖の心の闇は晴れ、二人は現実世界の比婆山へと帰還した。
- 涙を流す聖の顔を、鹿ノ子は初めてはっきりと見ることができた。
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