【兄だったモノ】68話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

- 聖と鹿ノ子は、兄・騎一郎との思い出の場所であるプラネタリウムを訪れるが、そこにも鬼頭虎次郎がついてきていた。
- 虎次郎は、聖が鹿ノ子の好意を利用していること、そして、この旅の目的が**「心中」**であることを見抜く。
- 虎次郎は、「好きでもない女との心中」という状況を「面白い」と評し、自分もその旅に参加したいと、常軌を逸した提案をした。
【兄だったモノ】第68話をネタバレありでわかりやすく解説する
兄の思い出の地を巡る、聖と鹿ノ子の死出の旅路。プラネタリウムの次は、動物園。そこは、兄との他愛ない記憶が眠る場所であると同時に、聖が自らの罪と向き合う、告白の舞台でもありました。
動物園での記憶
兄が好きだった場所
物語は、動物園の象の前で、無邪気にはしゃぐ鹿ノ子の姿から始まります。しかし、聖の様子はどこか上の空。「昨日のプラネタリウムから変ですよ…?」と、鹿ノ子は彼の異変に気づいていました。 聖は、動物園が、兄・騎一郎と一緒に行きたいと思っていた場所の一つだと明かします。そして、彼は鹿ノ子を、ある動物の檻の前へと誘いました。 「鹿ノ子ちゃんに見せたいんはあの子」。 彼が見せたかったのは、オオサンショウウオでした。宮島の水族館にもいた、あの生き物です。
井伏鱒二の『山椒魚』
聖は、再び井伏鱒二の小説『山椒魚』の話を切り出します。巣穴から出られなくなった山椒魚が、同じように巣穴に迷い込んできた蛙を道連れに、閉じ込めてしまう、身勝手な物語。 「どうじゃった?」「今回 騎一郎との思い出の場所 回ってみて」。 聖の問いかけに、鹿ノ子は「楽しかったです」と、素直な気持ちを伝えます。初めて行く場所ばかりで、家族と来たこともなかったから、と。
囚人3号
その答えを聞き、聖は静かに、しかしはっきりと、自らの罪を告白するのでした。 「やっぱりそうなんよ」「…じゃけえ俺は」。 「騎一郎を閉じ込めた悪い悪い山椒魚」。 「あいつは俺なんてついぞ愛しちゃおらんかった」。
聖は、兄・騎一郎がいつでも鹿ノ子のことを想っていた、と語ります。自分は、ただの「愛の代用品」でしかなかった。それなのに、自分は兄を家に縛り付け、その魂を殺してしまった。 彼は、自らを『山椒魚』の物語になぞらえ、騎一郎という蛙を閉じ込めた、罪深い存在だと断罪します。 そして、彼は最後に、衝撃的な真実を明かすのでした。 「いつだってあいつの1番はね」「君だったんよ 鹿ノ子ちゃん」。 その言葉と共に、鹿ノ子は聖を突き飛ばします。あまりにも残酷な真実に、彼女の心は、ついに限界を超えてしまったのでした。
【兄だったモノ】68話を読んだ感想(ネタバレあり)
今回は、聖さんの告白が、あまりにも痛々しく、そして美しい回でした。『山椒魚』のモチーフが、これほどまでに効果的に使われるとは思いませんでした。自分を「悪い山椒魚」だと語る聖さんの姿は、罪悪感に苛まれながらも、どこかその状況を受け入れてしまっているようで、見ていて本当に苦しかったです。
そして、最後の「騎一郎の1番は、いつだって鹿ノ子ちゃんだった」という告白。これは、鹿ノ子ちゃんにとって、どれだけ残酷な言葉だったでしょうか。自分が焦がれてやまなかった兄の愛が、ずっと自分に向けられていたと知らされる。しかし、その愛を受け取ることができたのは、兄が死んだ後、そして、その兄を「殺した」と語る男の口からだった。
皮肉、という言葉では片付けられないほどの、運命の悪戯を感じます。 聖さんを突き飛ばした鹿ノ子ちゃんの行動は、彼の言葉を信じたくないという拒絶の表れなのでしょう。あるいは、自分こそが兄を独占していた聖さんへの、嫉妬だったのかもしれません。二人の関係が、ついに最終局面を迎えたことを感じさせる、圧巻のラストでした。
【兄だったモノ】68話のネタバレまとめ
- 聖と鹿ノ子は、兄・騎一郎との思い出の場所である動物園を訪れる。
- 聖は、井伏鱒二の小説『山椒魚』を引用し、自分が騎一郎を家に縛り付け、その魂を殺してしまった「悪い山椒魚」だと告白する。
- 彼は、騎一郎にとって自分は鹿ノ子の「代用品」でしかなく、騎一郎が本当に愛していたのは、妹である鹿ノ子だったと明かす。
- その残酷な真実を突きつけられた鹿ノ子は、衝動的に聖を突き飛ばしてしまう。
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