【兄だったモノ】83話あらすじから結末まで全てネタバレ解説

ずっちー
前話のおさらい
  • 霊能力者である頼豪は、自らの能力を使い、聖が直接的な危険には晒されていないことを一行に伝えました 。
  • 聖の家で手がかりを探すため、一行は二手に分かれます 。西迫が二階を 、鹿ノ子とカンナが一階を捜索することになりました 。
  • 二階へ向かった西迫は、不自然に歪んだ廊下で得体の知れない黒い影と遭遇します 。
  • その頃一階では、鹿ノ子が目の前にいるカンナが偽物であることを見破り 、その正体を問い詰めていました 。

【兄だったモノ】第83話をネタバレありでわかりやすく解説する

聖の家の中で、鹿ノ子は目の前に立つカンナが偽物であるという衝撃的な事実にたどり着きました。一方、二階で単独行動をしていた西迫にも、得体の知れない恐怖が忍び寄ります。物語は、二つの場所で同時に起こる怪異を映し出していきます。

二つの場所で起こる怪異

一階で偽物のカンナと対峙する鹿ノ子は、怒りを込めて問い詰めます。「あんた 誰?」「南さんを何処にやったの…!」 。彼女の問いかけに、偽物のカンナは不気味な笑みを浮かべるだけです。

その頃、二階の廊下で立ち往生していた西迫は、背後に明らかな人の気配を感じ取っていました 。気味の悪さに耐えかね振り返ると、そこにいたのは、亡くなったはずの義理の姉の姿でした 。彼の心の最も柔らかな部分に根差す、トラウマそのものが目の前に現れたのです。

偽物の正体、明かされる矛盾

場面は一階に戻ります。偽物のカンナは、悪びれる様子もなく「やあねぇ 何言ってるの 鹿ノ子ちゃん」と返します 。しかし、鹿ノ子は冷静に相手の矛盾を指摘し始めました。

まず、頼豪は聖のいる場所を「あの空間」とは言いましたが、「思い出の海」とは一言も言っていません 。その言葉は、前話で偽物のカンナが口走った、決定的な失言でした。さらに、本物のカンナであれば、異変に気づいた時点ですぐに頼豪へ連絡を入れるはずだと、その行動の不自然さも突きつけます

「『南カンナ』として違和感があるわ」 。鹿ノ子の鋭い指摘に、偽物のカンナは「…ふっ」と笑い、「生前なんでもソツなくこなしてそうだったけど」「演技力はなかったみたいね」と、ついに自らが偽物であることを認めるのでした

西迫を苛む過去の亡霊

再び、二階の西迫の場面。彼は義姉の亡霊に「待って」「置いていかないで」と懇願します 。彼の心は完全に過去に囚われていました。「どうして帰ってこなかったの?」「どうしてあんな男なんかに」と、彼を捨てて別の男の元へ去った義姉への、愛と憎しみが入り混じった言葉をぶつけます

その苦しみは、やがて自分自身への憎悪へと変わり、「死ね」という言葉を何度も繰り返しながら、彼はその場に崩れ落ちてしまいました 。義姉の亡霊は、そんな彼に「かわいい 正義」とささやきかけます 。あまりにも残酷な光景でした。

突きつけられた残酷な「ハッピーエンド」

一階では、正体を現した偽物が、鹿ノ子に恐ろしい真実を告げていました。「もういいじゃない」 。「だって 中眞聖は東雲騎一郎の元へ行けたのよ?」と

その言葉と共に、鹿ノ子の脳裏には、聖が呪い(騎一郎)に優しく抱きしめられる光景が浮かびます。偽物は、それが「彼の望みで幸福だった」のだと語り 、「ハッピーエンドでめでたしめでたし」と、おとぎ話の終わりを告げるかのように言い放ちました

このあまりにも理不尽な結末に、鹿ノ子の怒りが爆発します。「ふざけるなっ」 。彼女は「南さんは何処!?」「聖さんを返してよ!」と、涙ながらに叫ぶしかありませんでした

絶望の中で愛を囁く者

鹿ノ子の悲痛な叫びに対し、偽物はその顔を聖のそれに変化させます。そして、恍惚とした表情で涙を流しながら、「俺は幸せなのに」とつぶやきました

さらに、その顔は不気味な仮面をつけた異形の姿へと変わり、鹿ノ子に向かって手を伸ばします。「だいすきよ 鹿ノ子ちゃん」「あいしていたのに」と、愛の言葉を囁くのでした

最も聞きたかったはずの愛の言葉が、最も残酷な形で突きつけられる。鹿ノ子はただ恐怖に震えながら、「なんでそんなひどいことをするの?」と問い返すことしかできませんでした

【兄だったモノ】83話を読んだ感想(ネタバレあり)

今回は、物語の恐怖が新たな段階に突入した回でした。カンナに成り代わっていた偽物の正体はまだ不明ですが、その能力は計り知れません。人の心に深く入り込み、最もえぐられたくない傷を的確に攻撃してくる。その手口は、物理的な恐怖よりもはるかに陰湿で、読んでいて胸が苦しくなりました。

特に、西迫が過去のトラウマと対峙するシーンは圧巻でした。彼の暴力性の根源にあったのが、義姉への報われない愛と喪失感だったことが明かされ、彼のキャラクターに一層の深みと悲劇性が加わったように感じます。彼もまた、この物語における一人の哀れな被害者だったのかもしれません。

そして、鹿ノ子に突きつけられた残酷な「ハッピーエンド」。聖の幸せを願う彼女の気持ちを利用し、それを最悪の形で見せつける偽物のやり方には、底知れない悪意を感じます。最後の、聖の顔や異形の姿に変化しながら愛を囁くシーンは、まさに悪夢そのものでした。この絶望的な状況から、鹿ノ子たちはどうやって反撃するのでしょうか。一筋の光も見えない展開に、ただただ息を呑むばかりです。

【兄だったモノ】83話のネタバレまとめ

  • 一階で偽物のカンナと対峙した鹿ノ子は、相手の言動の矛盾を突き、その正体を暴きました 。
  • 同時刻、二階にいた西迫は、亡き義姉の亡霊と遭遇し、過去のトラウマによって精神的に追い詰められてしまいます 。
  • 偽物は、聖が兄・騎一郎の元へ行ったことが、彼にとっての「幸福」であり「ハッピーエンド」なのだと鹿ノ子に告げました 。
  • 鹿ノ子の怒りと悲しみに対し、偽物はその姿を聖や異形の怪物へと変化させながら、愛の言葉を囁き、彼女を精神的に追い詰めるのでした 。

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ABOUT ME
コマさん(koma)
コマさん(koma)
野生のライトノベル作家
社畜として飼われながらも週休三日制を実現した上流社畜。中学生の頃に《BAKUMAN。》に出会って「物語」に触れていないと死ぬ呪いにかかった。思春期にモバゲーにどっぷりハマり、暗黒の携帯小説時代を生きる。主に小説家になろうやカクヨムに生息。好きな作品は《BAKUMAN。》《ヒカルの碁》《STEINS;GATE》《無職転生》
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